一般社団法人 地域創造

福岡県福岡市・北九州市 福岡市美術館 北九州市立美術館 「福・北 美術往来」

  福岡市と北九州市。九州で1、2を争うこの2大都市の両市立美術館で、「福・北 美術往来」と題する交流展が開かれている。例えばこれが東京と福岡だったら、距離が遠すぎるうえ規模も違いすぎるので成立しにくいが、福岡と北九州なら車でも電車でも約1時間という適度な距離のため、交流展を行うにはちょうどいいのかもしれない。
 作品は比較的穏健な絵画もあるが、北九州市立美術館の前にズラリと花輪を並べたり(鈴木淳)、福岡市美術館の前に玄関ブースをもうひとつ置いてみたり(徳永昭夫)、大胆なインスタレーションも目立つ。

 この交流展、もともと市長同士のトップ会談で始められた芸術文化交流事業の一環で、2001年の第1回展に続き2回目。第1回展では、両市立美術館のコレクションから1点ずつを市民投票で互選し(福岡のコレクションは北九州市民が、北九州のコレクションは福岡市民が選ぶ方式)、ダリの「ポルト・リガトの聖母」とルノワールの「麦わら帽子を被った女」が交換展示された。
 この交換展は、美術館のコレクションに対する市民の関心を喚起させる目的を持っていたが、交流という意味ではいまひとつ。そこで第2回展は、福岡市美術館の山口洋三氏と北九州市立美術館の花田伸一氏というふたりの若手学芸員が担当し、「本当の交流を起こそう」(山口氏)と、若い美術家たちに焦点を当てた。ふたりは、90年代以降に福岡と北九州およびその周辺で活躍し始めた美術家から、福岡側21人、北九州側12人の計33人を選択。
 この人数の違いは、そのまま両市の経済的な勢いの差を反映しているようだ。北九州は製鉄を中心とする産業都市として、1963年に八幡、小倉、門司などが合併して誕生。九州初の政令指定都市となったが、製鉄の不振とともに人口は微減し、現在ちょうど100万人。一方、福岡は商業都市として順調に発展を続け、1972年に政令指定都市となり、現在137万人の人口を数える。
 美術に関しても、市立美術館の設立は北九州のほうが5年早い(1974年)が、規模では福岡のほうが上回る。また、福岡には市美術館のあと県立美術館、アジア美術館などが開館し、民間のギャラリーも福岡のほうが圧倒的に多い。さらに福岡では「アジア美術展」や「ミュージアム・シティ・天神」などの現代美術展が定期的に開かれ、地元の美術家たちを刺激してきた。今回の出品作家である藤浩志やナウィン・ラワンチャイクンは、「アジア美術展」を機に福岡に移住した組だ。
 ただし北九州もここ5~6年のあいだに、現代美術の研究機関であるCCA北九州が開設され、美術家の自主運営するギャラリーsoapがオープンするなど、めざましい展開を見せている。こうして90年代以降、両市とも美術状況が活性化してきたものの、意外にも彼ら美術家同士の交流は少なく、まさに「近くて遠い」関係にあった。しかも両美術館とも地元の若手作家を取り上げる機会はあまりなく、その意味でこの交流展は、まずなによりも美術家たちに大きなメリットをもたらしたといえるだろう。
 もちろん同展の目的は美術家同士の「交歓」だけでなく、美術家と観客との「交歓」、さらに両館のあいだでの観客の「交換」を目指すものだ。美術家と観客との「交歓」でいえば、毎週末にワークショップや美術家自身によるギャラリートーク、シンポジウムなどの交流プログラムが組まれている。また観客の「交換」は、週末に両館から1往復ずつ直通バスを出すことで促進を図っている。入場券さえあれば両館を無料で往復できる。
 ちなみに、山口氏いわく「これはデフレの展覧会」。もしこれを単独開催でやれば2館の入場料と往復の交通費で計4000円かかるところを、両館共通チケット700円のみでどちらも見られるのだから。

(美術ジャーナリスト・村田真)

「福・北 美術往来」
[会場/日程]北九州市立美術館/1月2日~2月2日、福岡市美術館/1月5日~2月2日
[出品作家]阿部幸子、坂崎隆一、鈴木淳、世良京子、河口彩、徳永昭夫、藤浩志、ナウィン・ラワンチャイクンほか計33人

 

地域創造レター 今月のレポート
     2003.2月号--No.94

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