一般社団法人 地域創造

制作基礎知識シリーズVol.20 アートNPOの基礎知識(1) NPOとは?

 講師 吉本光宏(ニッセイ基礎研究所主任研究員)
 求められる公益性と経営力

 

 アートNPOの設立が各地で相次いでいる。1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)施行当時、第1号認証NPOこそ「ふらの演劇工房」であったが、芸術文化の関係者の間では、NPO化の目的や利点が曖昧なことなどから、NPOを設立する動きは限られていた。
 しかし、2003年12月末現在、全国の認証NPO(総数:1万4,657件)のうち、30.6%、4,485団体が定款の中に「学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動」を掲げている。

 

図1 増加するアートNPO

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図2 NPOの活動分野

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注) 内閣府HPのデータより作成(図2の「情報社会の発展」から「消費者の保護」までの5分野は、2002年のNPO法の改正で新たに設けられたため、認証数が他分野より少なくなっている)

 

 しかも、3年前にはその割合は25.4%であったが、以後、一貫して増え続けている。定款には複数の活動目的を掲げるケースが多いこと、この目的には学術やスポーツも含まれていること(※1)を考慮したとしても、芸術文化の領域で活動するNPOの数が増加しているのは間違いない。ちなみに、昨年(2003年)10月に神戸アートビレッジセンターで開催された「第1回全国アートNPOフォーラム」には全国からアートNPO関係者約300人が集まった。それに合わせて事務局が調べたところでは、芸術や文化を主な活動目的とするNPO法人の数は535団体にのぼった(※2)。

 

※1 「学術」は2002年12月の改正で追加された分野であるため、現時点の認証NPOに含まれている割合はきわめて低いと思われる。

 

※2 NPO法人アートネットワーク・ジャパン調べ。(1) 日本NPOセンター全国NPOデータベース「NPO広場」、(2) 各都道府県の公表する各知事認証NPO一覧、の2つのデータソースから抽出。団体の名称と、定款に記載された目的を判断材料に、当該団体が自らの主な活動分野を芸術と位置づけていると判断されるものを抽出した結果。調査期間は2003年4月15日~7月31日(都道府県のデータについては順次検索したため、掲載リストは7月31日の全数を反映したものではない)。

 

●NPOはプロフェッショナルな経営体

 アートNPOの種類や活動内容は次号で紹介することにし、その前に、今一度NPOの概念を簡単に再確認しておきたい。現在最も一般的に用いられるNPOの定義は次の5つである(※3)。
・利潤を分配しないこと(使命のために再投資すること)
・非政府であること(政府からの資金援助はOK)
・フォーマルであること(組織としての体裁を備えていること)
・自己統治されていること(他の組織に支配されず独立して運営されていること)
・自発性(voluntary)の要素があること

 

 これらは、運営や組織形態からNPOを規定しているものであるが、このうち1番目と5番目に関連して、我が国では、NPOの基本的な性格が誤解されることが多い。それは、「NPO=ボランティア=無償で働いている」というもので、NPOで働く人は、ほかに職を持っていてNPO活動は本業ではない、という誤解である。
 確かに、前記の定義におけるボランタリーの要素には、ボランティアに運営が支えられている、ということも含まれているが、それよりも「自発的」に組織された、という点が重要である。つまり、誰かから指示を受けて行うのではなく、自らの問題意識に基づいて自発的に取り組むというのが、NPOの基本である。また、利潤を分配しないとは、株式会社が株主に利潤を分配するのと違い、役員や社員に利潤を分配しない(NPO法で「社員」といった場合、いわゆる企業の社員とは全く異なる概念で、NPOの総会の議決権を有する者を指す)、ということであって、職員に報酬を支払わない、ということではない。

 

 すなわち、NPOといえども、その事業やサービスに対して正当な対価を求め、それによって職員に適正な報酬を支払うというのが本来の姿であり、そうした面だけをとらえれば、企業経営と何ら変わるところがない。つまり、アートNPOはアートの分野のプロフェッショナルな集団であり、その専門的なノウハウや実績に基づいた事業展開を行う経営体である、という認識が必要である。
 もっとも国内の約1万4,600件のNPOのうち、実際にそうした経営を行い、有給の常勤職員を雇用しているNPOは非常に限られているというのが実情であろう。しかし、そうした現状と、本来のNPOのあるべき姿とは分けて考えなければならない。

 

※3 アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学のレスター・サラモンが中心になって行ってきた非営利セクター国際比較プロジェクトに基づく定義。

 

●NPOの「公益性」

 NPOのもうひとつの条件が「公益性(NPO法では『不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与すること』と記載されている)」である。しかし、「公益性」の定義は非常にやっかいな代物だ。個々の活動が、公の利益にかなうかどうか、を判断するのは非常に難しいからである。ましてや芸術文化そのものの評価は個人によってまちまちであり、福祉や環境などの分野のNPOと比較して、性格が曖昧になりがちなのも、それが一因だと考えられる。
 しかし、芸術活動や文化事業を行うことが、何らかの社会的な問題意識に基づいたものであるかどうか、を考えれば、もう少しとらえやすくなるかもしれない。例えば、趣味やサークルの延長線上で劇団を結成し、演劇公演を行うだけでは、本来的なNPOとはいえないが、演劇活動を通して、何らかの形で社会にコミットしようという姿勢があれば、NPOの資質を満たしているといえるだろう。
 政府や自治体から公的な助成金を得られたり、民間企業や個人から寄付や支援を受けられたりするのは、公益性があるからで、それがなければ、助成や寄付の裏付けは得られない。同様に、一般市民から活動の意義や社会的な役割について賛同を得られなければ、NPOの経営は行き詰まり、早晩、解散の憂き目にあう、ということも起こるだろう。

 

●税制上の課題

 NPOの経営を考える時、課題となっているのが公益的な団体に対して行われる税制優遇措置の問題である。NPOに寄付をした場合、寄付者が税制上の恩恵を受けるためには、NPO法人資格とは別に、「認定NPO」の認定を受けていなければならない。その要件を簡単に説明すると、経営がどれだけ多くの市民や団体から支援されているか、ということに基づいて、公益性の度合いを判断する仕組みになっている。この制度は当初、基準があまりにも厳しかったため、政府が一度基準を緩和したが、それでも現在この認定を受けているのは全分野でわずか17団体にすぎない(詳しくは国税庁のHPを参照=http://www.nta.go.jp/category/npo/npo.htm)。
 NPOの税制については、この寄付税制だけが話題になりがちだが、NPOが自らの経営努力によって市場から経営資金を獲得するためには、収益事業の税制についても検討する必要がある。現在、認定NPOになれば、収益事業で得られた所得の20%を寄付とみなして、非収益事業に繰り入れることができる制度はあるが、米国では、NPOがその設立目的に合致した収益事業を行った場合(美術館NPOが美術図書を販売する場合など)、その利益は非課税扱いになっている。ただでさえ少ない寄付金や助成金だけに頼っていたのでは、NPOの自助努力による事業の拡大は望めない。いずれにしても、我が国のNPOをさらに活発なものにするためには、税制の改正は避けて通れない問題だろう。

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