一般社団法人 地域創造

熊本県・6市町村 公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業

 6月26日から7月11日までの約2週間、熊本県内で「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」が行われた。県内6市町村に3組のクラシックの演奏家が滞在し、学校や福祉施設などへのアウトリーチと、各地の公立ホールでのコンサートを開催するというもので、熊本県立劇場の主催、財団法人地域創造の共催により実施された。
 今回の事業の経緯について、県立劇場の本田恵介さんはこう説明する。「熊本県立劇場は、以前から県下のホールと連携し、鑑賞型の公演と事業実施のノウハウを提供してきました。しかし、財政的にも行政が取り組む事業に対して選別が厳しくなる中、これからは教育普及的な事業とそのノウハウも併せて提供すべきではないか?と考えていた時に、地域創造が県を軸としてアウトリーチを普及する事業の支援を考えていると知り、これはやらねば、と企画しました」。
 その県立劇場の呼びかけに対して手を上げたのが、小国町、本渡市、あさぎり町、長洲町、芦北町、砥用町の6市町村。各担当者は4月下旬、県立劇場での研修会に参加した後、各市町村に戻りアウトリーチ先の選定、調整を進めた。一方、派遣される3組のアーティストは、実際に現地入りする約1週間前に熊本県立劇場に集合し、実際のアウトリーチ先を想定しながら、プログラムを練り上げた。
 7月1日、いよいよ各地での事業がスタート。あさぎり町には、ピアノの中島由紀さん、ヴァイオリンの甲斐摩耶さん、チェロの傳田正則さんの3人が派遣され、町内全小学校の3・4年生および老人ホームへのアウトリーチとコンサートが行われた。

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 その中の一つ、須恵小学校でのアウトリーチでは、「ヴァイオリンとチェロ、どっちかな?」という甲斐さんの質問に子どもたちがぎゅっと目をつぶって楽器の音色を聴き比べ──。そのほか、紙コップと糸を使って楽器の響く仕組みを実験したり、ピアノの中に大声で叫んで共鳴する音を聴いたり、子どもたちが自然に“音”や“響き”に興味をもつ仕掛けを織り交ぜた45分間のミニライブが行われた。アーティストの演奏中は、各楽器のソロはもちろん、チャイコフスキーのピアノトリオでも、最後の一音が消えるまで微動だにしないほど、子どもたちが音楽に集中していたのが印象的だった。
 「クラシックというと、大人は先入観があって難しいと思ってしまうが、子どもは本当に素直に楽しんで聴いていたのが発見でした」と、事業を担当した町役場の蓑毛哲さん。
 今回の事業の特徴は、アーティストが町への理解を深めるための地域交流プログラムが企画されたこと。あさぎり町の酒蔵見学、小国町の乳搾り、芦北町の和紙づくりなど、土地の文化に触れたアーティストたちは「地域産業のプロと出会えたのが成果」と口を揃える。
 7月11日には、事業全体を締めくくるフィナーレとなる活動報告会とコンサートが熊本県立劇場で催され、予想を上回る500人以上の観客が集まり大きな盛り上がりをみせた。
 市町村ホールのコーディネーター役として走り回った本田さんは、「今回、どの市町村でもスタッフが熱心に動いてくれて、“アウトリーチを普及する”狙いは成功したと思います。その最大の原動力は、アーティストが、2週間アウトリーチと演奏会に集中して取り組んだ結果、非常に中身の濃いプログラムが実現できたこと。これから、県立劇場がこうした事業を継続していく上で、クオリティを高めることの重要性を実感しました」。
 熊本県立劇場が、この経験を機に県下の市町村ホールとの新たな関係をどう構築していくか、今後の展開に注目したい。

(宮地俊江)

 

公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業
[主催](財)熊本県立劇場
[共催](財)地域創造
[参加団体](財)学びやの里(小国町)、本渡市教育委員会、あさぎり町須恵文化ホール、ながす未来館(長洲町)、芦北町教育委員会、砥用町文化交流センター
[派遣アーティスト]
○小国町、本渡市/木管ピアノ四重奏
 吉岡次郎(フルート)、関水萌子(オーボエ)、池田愛(ファゴット)、布施亜紀子(ピアノ)
○あさぎり町、長洲町/ピアノトリオ
 甲斐摩耶(ヴァイオリン)、傳田正則(チェロ)、中島由紀(ピアノ)
○芦北町、砥用町/弦楽四重奏
 緒方愛子(ヴァイオリン)、菊本恭子(ヴァイオリン)、石橋直子(ヴィオラ)、山口真由美(チェロ)

 

 

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