一般社団法人 地域創造

制作基礎知識シリーズVol.23 演劇予算の立て方② パッケージ事業(買い公演)の場合(2)

 講師 津村 卓(地域創造プロデューサー)
 業界の慣習を踏まえた予算組みが必要

 

 前回も説明したように、買い公演のプロダクションに係る予算には、「公演費」「移動トラック費(トランポ代)」「交通費」「宿泊費」「食費(パーディアム・日当)」の5つがあります。今回は、公演費以外の予算について説明するとともに、現地で係る予算について整理します。

 

●プロダクションに係る予算─公演費以外

◎移動トラック費用

  移動トラック費用は、何トントラックが何台必要かによって金額が異なってくるため、舞台装置が確定するまで決まらないことが多い(ちなみに運転手の宿泊代、有料駐車場代は現地経費で計上する)。また、公演費に含まれることもあるので確認が必要である。
 Aホール・Bホール・Cホールを巡演する場合、Bホールが負担する費用は、一般的にはAホール~Bホールまでの半額とBホール~Cホールまでの半額というのが目安になる(この目安は交通費を巡演先のホールで分担する場合にも当てはまることが多い)。ただしカンパニーやホールの考え方、地域がどこかによって話し合いで負担割合が変わることも多い。また、移動に係る経費を合算して巡演先のホールが平等に負担しようという考え方もでてきている(九州地域の公立ホールが加盟しているC-WAVEや地域創造が行ってる公共ホール演劇製作ネットワーク事業はこの方式)。いずれにしても地方公演を円滑に行うための新しい費用負担のルールづくりが望まれるところだ。

◎交通費・宿泊費

  交通費については、まず、カンパニーとホールのどちら側がチケット手配を行うかという問題がある。いずれにしても旅行代理店を通すことが多い。ただし、団体チケットとして手配できる人とできない人がいること、格安の航空券の場合は変更ができないためキャンセルになると多額の負担が発生すること、また閑散期と繁忙期ではチケット価格が何割も変わることに留意する必要がある(人気劇団などには専属の代理店が付いているケースもある)。また、現金で支給する場合には源泉徴収が係るので注意しよう。なお、宿泊については、地元のホテルを使用するためホール側が融通のきくところを手配するほうが合理的である。
 交通費・宿泊費の見積もりをつくるには、例えば、宿泊代1人7,000~8,000円、交通費1人東京~大阪往復3万円、市内交通費1人3,000円というような大枠をつくって積算する。宿泊場所等の条件を提示して了解をもらったら、そこからホテル等との交渉に入る。また、市内移動についてもタクシー、バス、公用車等どのように対応するかカンパニーと相談して決める。
 宿泊場所の条件についてはカンパニーとの相談になるが、基本はシングルユースで、スタッフとキャストは別のホテルにするのが望ましい。また、場合によってはスイートルームの使用など特別な条件を求められることがあるが、その場合は、理由をきちんと確認して話し合うことが重要。喫煙、禁煙についても注意が必要となる。

◎パーディアム(食費・日当)

  業界の慣習として、人件費が「ギャラ」と「パーディアム(食費・日当)」の2本立てとなっているため、パーディアムを支払う必要がある。パーディアムを払っている場合は弁当を用意する必要はない。カンパニーから弁当を用意してほしいと言われたら弁当代を徴収してもよい。ボランティアなどが善意で炊き出しを行う場合でも、通常はパーディアムが必要となる。ただし、カンパニーから炊き出しの要望があった場合は実費を徴収しても差し支えない場合が多い。
 金額の目安は、1日4,000円見当。基本的に同額をスタッフ、キャスト、演出家、プランナーなどカンパニーメンバー全員に支払う。海外招聘の場合、契約書でパーディアムについての取り決めを行うが、平均1万円~1万5千円(ヨーロッパ、アメリカ)程度となっている。
 支払い方法については、原則は現金で一人ずつ渡す(源泉徴収が係るので、金額を決める時に注意すること)。領収書が必要になるため、全員の名前を記入した受取表を作成し、受取印をもらうのが通常となっている。場合によっては制作会社に一括して支払い、個人の領収書をもらうこともある。移動日については地域に入る時間、出る時間によって金額を変えることも考えられるので、ホールとしての目安をつくってカンパニーと相談しよう。なお、やむを得ず作業が深夜に及んだ場合、深夜食が必要になることもある。

◎支払い

  昔の興行的な慣習では、カンパニー側への支払いは、契約時点で3分の1、初日に3分の1、楽日に3分の1となっており、契約書が結ばれることもなかった。しかし、現在公立ホールでは、パーディアム以外は、交通費・宿泊費などの経費を含め、公演終了後に代理店やカンパニーから請求書をもらって後日精算するのが通常となっている。

 

●現地で係る予算

 主催者としてパッケージ事業を行う場合、公演する現地経費として計上しなければならないのが、「現地スタッフ費」「広報・宣伝費」「機材費」「舞台費」「著作権料」「通信費・制作費」である。

◎現地スタッフ費(増員費)

  交通費・宿泊費等の経費を抑えるためカンパニースタッフはできるだけ少人数にするのが原則となっている。そのため、公演本体に必要なスタッフ(舞台、照明、音響)や、仕込み(搬入、搬出)に必要なスタッフを現地で増員することが多い。こうした増員費は主催者負担が原則となっており、必要な人数についてカンパニーから要求がある。人材がいない、技量が足りないなどで他の地域から手配する場合は、別途交通費・宿泊費を計上しなければならない。
 こうした人件費は、地域によって相場が異なり、また、組合経由で手配する契約のところもあるため、日頃から状況を把握して、増員に対応できるような手立てを考えておく必要がある。

◎広報・宣伝費

  チラシ・ポスターについては、カンパニー側から出来上がったものを必要枚数だけ買い取ることが多い。各地の情報が印刷された現物を買い取るケースと、データを受け取り各地で情報を追加して地元で必要枚数を印刷するケースがある。データを受け取る場合、デザイン料を各地が分担する場合があるので確認すること。また、パンフレットについては、必要部数を買い取るケースと販売手数料(通常10%)を取るケースがある。ただし、公立ホールの中には設置条例で有料販売が禁止されているところもある。
 テレビやラジオ出演など、出演者や演出家に宣伝協力を依頼する場合、原則としてギャラは発生しないが、現地までの交通費・宿泊費は必要となる。こうしたスケジュールの調整は、公演の制作を行っているカンパニーを窓口にして行うのが一般的。
 広報・宣伝費については、ホールによっていろいろな考え方がとられており、有料宣伝ができるところもあれば、事業ごとの予算をもっていないところもあるため、各地の実状に応じた予算組みが必要となる。

◎機材費・舞台費

  前号でもふれたが、現地で手配する機材費は現地経費という慣習があるので、機材費を予算化する必要がある。また、張り出し舞台をつくったり、イントレを組んだり、急にパンチカーペットが必要になることなどもあり、「舞台費」を計上しておかないと困ることが多い。

◎著作権料(上演料、音楽著作権料)

  著作権料は必ず主催者費用として弁償することになっている。音楽著作権料についてはJASRAC(日本音楽著作権協会)の規定に応じて支払う。上演料は固定の一定金額+チケット価格(チケット手数料等を引いたもの)×入場者数×一定率で計算するのが通常となっている(率は契約で定める)。

◎通信費・制作費(劇場側で係ってくる制作費)

  その他、主催者として公演を行うためには、現地の制作スタッフが活動するための諸々の経費が必要となる。実際に公演を見たり、打ち合せをするための旅費をはじめ、広報宣伝のための通信費等は必須。また、公演期間中に現金での支出が発生しそうなものをリストアップし、数十万円程度の現金を留保しておくことも必要となる(決済を回していたのでは間に合わない)。

 

 業界の慣習が多い世界でもあり、また、幕を開けるためには即決即断しなければならないことも多いため、日頃からこうした費用項目の性質や予算の流れについて制作担当者や管理職がよく理解し、柔軟かつ適切に対応することが求められる。

 

* ここで取り上げている「パッケージ事業」とは、既存の作品(プロダクション)を地域に招聘して公演する事業の総称。ただし、「現地で係る予算」以外のすべての経費(移動トラック費・交通費・宿泊費等)を含めて「公演費」として請求が行われるものは「完全パッケージ事業(完パケ)」と呼び、区別するのが通常。

 

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