一般社団法人 地域創造

平成17年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業 「イッセー尾形のつくり方」

 演出家の森田雄三と俳優のイッセー尾形が全国8都市に1週間ずつ滞在し、地元の人たちと芝居をつくる「イッセー尾形のつくり方」(6月28日~10月30日)がいよいよスタートした。これは地域創造が平成17年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業(以下、演劇ネット)として取り組んでいるもの。昨年3月に全国の公立ホールから公募した企画のプレゼンテーションを行い、つくば都市振興財団の提案が8館の共同製作として実現することになった。
 「イッセー尾形のつくり方」は、フツーの人々(生活者)の機微を演劇としているイッセー・森田コンビが、各地で募集した市民と4、5日間の短期集中ワークショップで即興芝居をつくり、最後にイッセー尾形と共演するという演劇ネット初の滞在創作型プロジェクト。たった数日で果たしてフツーの人々からどのようなイッセー尾形が生まれるのだろうか──。

  6月28日、プロジェクトの皮切りとなるつくばカピオホールでワークショップが始まった。昼夜・老若男女合わせて165名が参加者に登録していると聞いていたので、森田さん一人でどうなるのだろうと正直ハラハラしていた。ちなみに他の地域にはここ以上の参加人数が予定されているところもある。

◎フツーの人々の表現を求めて

 

それからは、参加者が発する言葉や反応に合わせて、即興で芝居をつくるための心得が矢継ぎ早に伝授されていった。

0501.jpg
初日のワークショップ

  曰く、「見えているものからどうやって離れるかその方法を探して。できるだけ根拠がないほうがいい」「準備したことをぱっとやれるのがいいとされてきたけど、そうじゃなくて、準備しない、この場で考えればいいだけ」「何もしないほうが色々なことが想像できる。それを使っていかないと芝居はできない」「人がアガったり、緊張したりするのを止めようとするのは間違っている。この緊張感さえあれば芝居ができる。舞台の上で“困った状態”でいれば必ず表現はできる」「言葉は自分の気持ちや正解を言うためのものではなく、相手の反応を見るために使うもの」などなど。
 こうして1日目が終わる頃には、「毎日毎日続く日常の中では些細なことが大事になる。そういう日常の生活を思い出すことが表現だ」というイッセー尾形の境地を、身体で理解できるようになっていた。

0502.jpg
4日目には本番に近い芝居が立ち上がっていた

  翌日からは参加者が自分でパートナーを選んで疑似家族をつくり、即興でのネタづくりが始まった。森田演出の特徴は、その場で起こっていることに対する鋭い観察眼に裏打ちされた人物批評。演出家が的確なコメントを加える度に、フツーの人々の人間讃歌とも言えるような18組35名の家族の日常がデッサンされていった。
 「宙ぶらりんが一番伸びることのできる面白い状態なのに、子どもの頃からどっちかに決めなさいと言われて、積極的か引っ込み思案かに分けられてしまう。中途半端にしておくことで能力が出てくるということをこの4日間でまざまざと見た。そういう状態でいられることが人にとってしあわせなんだと思う」と森田さん。
 つくばカピオホールの担当者として演劇ネットに企画提案をした今尾博之さんは、「5年前からイッセーさんのひとり芝居を公演してきた。森田さんの指導の面白さに惹かれてもっと広く森田さんを紹介できる企画がやりたかった。その目的は十分達成できたと思う。来年以降も他の公立ホールと連携して事業を続けたい。8月以降も公演があるのでぜひ見てください」と呼びかけていた。

(坪池栄子)

平成17年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業「イッセー尾形のつくり方」
(ワークショップ:イッセー尾形ができるまで/公演:『イッセー尾形とフツーの人々』)
[会場・日程]つくばカピオホール(6月28日~7月3日)/神奈川県立青少年センター(7月18日~24日)/宮崎県立芸術劇場(8月2日~7日)/そぴあしんぐう(9月6日~11日)/北九州芸術劇場(9月13日~19日)/三重県文化会館(9月27日~10月2日)/栗東芸術文化会館さきら(10月4日~9日)/りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(10月25日~30日)
※ワークショップと公演を含む日程

 

 

地域創造レター 今月のレポート
     2005.8月号--No.124

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告等地域創造レター地域創造レターバックナンバー2005年度地域創造レター8月号-No.124平成17年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業 「イッセー尾形のつくり方」