一般社団法人 地域創造

福岡県太宰府市 だざいふ☆スタードームフェスティバル2005

9月17日と18日に「だざいふ☆スタードームフェスティバル2005」が開催され、2日間で3,000人以上が訪れる大盛況となった。開催場所となった大宰府政庁跡は、約1,300年前に九州を治める役所の大宰府が置かれていた場所。現在は広い野原に当時をしのばせる大きな礎石が並ぶ、国の特別史跡地である。
 そこに竹のフレームでつくった半球状の屋根をシーツで覆った「スタードーム」20基が出現。大人30人ほどが入れるこのドームの中で、アーティストや地域住民が、作品の展示・発表、ワークショップなどを行った。夜になるとライトアップされたドームが、政庁跡の広大な暗がりに美しく浮かび上がり、太宰府の歴史と現在が交差する一瞬を感じた。

  このイベントは、10月16日の九州国立博物館の開館を機に、太宰府をより盛り上げる市民イベントとして企画されたもの。太宰府市職員の江藤応樹さんが、仕事とは別に市民の立場でも何かできないかと市役所内の若手職員約40名に呼びかけ、まちづくりグループ「CAT」(Community Activate Team)を結成。仕事が終わった後に集まってミーティングを重ねていった。
 「太宰府をもっと楽しくて面白いまちにするためのきっかけづくりをしたい」──やりたいことのイメージはあるが、具体的な方法が見えない。そこでとりあえず、全国各地で行われているさまざまなイベントを見て回り、昨年福岡で開催された国民文化祭(とびうめ国文祭)でスタードームに出合った。また、水戸芸術館の「カフェイン水戸」では、購入したパンフレットで福岡県在住のアーティスト藤浩志さんの存在を知り、彼が主催するテーブルセッション「PLANTS!」に参加した。
 そこは、福岡市内で何か表現したい人が集まり、イメージを出しあう場だった。参加者と交流を深め、太宰府市内を共に歩いたりするなかで、自分たちのイベントのイメージがだんだん見えてくるようになる。また、主催者の藤さんは的確なアドバイスと温かな人柄で、イベントの精神的な支柱となった。参加メンバーの何人かは、このイベントのために「ACHA実行委員会」をつくり、お茶をテーマとした企画を提案。地元アーティストと連携して多数の作品を発表するなど、イベントの中心的役割を担った。
 こうして生まれてきた企画で試しに「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)」に応募。AAF事務局長の加藤種男さんが、「市役所職員が横断的な組織をつくり、職務を越えて楽しい提案をしてくれた。アートにあまり詳しくない彼らが、アートフェスティバルを企画するというのが面白いと思った」と言うように見事審査をパスし、フェスティバルへの参加が決定した。

  ドームのフレームに使われた竹100本は、ボランティア100人の手を借りて、史跡地でもある竹林から切り出した。ドームを覆う中古シーツ500枚は、医療機関の協力を得て格安で譲ってもらい、CATのメンバーがボランティアと共に縫い合わせた。
 ドーム出展者は、太宰府市内を中心にさまざまな分野で活躍する人々を訪ね、直接交渉。若手5人のイラストレーターがライブペインティングをする「おえかきドーム」を企画した、福岡市のデザイン会社アポロ計画の生野朋子さんは、「政庁跡という場所やスタードームがアーティストの創作意欲を刺激した。普段ギャラリーに来ない方々にも作品を見てもらい、色々な出会いがあった」と言う。
 このイベントは、地元新聞にも大きく掲載され、市長が会場を訪れるなど、太宰府市の新しい盛り上がりの「きっかけ」になることを感じさせた。「行動するとそれに伴って何かがついてきて、糸口が見つかることを実感した。太宰府の人たちが、何か楽しいことをしたいと思ったときに、今度は私たちが手助けできたら」と話す江藤さんの笑顔が印象的だった。

(有本晃子)

アサヒ・アートフェスティバル(AAF)
全国のアートNPOや市民グループがゆるやかに繋がりあい、ジャンルを越えたさまざまなプロジェクトを行うアートの祭典。今年から公募により参加プログラムを決定、35団体が参加。

だざいふ☆スタードームフェスティバル2005
[会場]大宰府政庁跡
[会期]9月17日、18日
[主催]「だざいふ☆スタードームフェスティバル2005」プロジェクトチーム
[事務局]CAT http://dazaifucat.client.jp/

 

 

地域創造レター 今月のレポート
     2005.11月号--No.127

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