一般社団法人 地域創造

新潟県 中越大震災復興祈念プログラム 「中越大震災復興祈念コンサート」

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興珊寺でのコンサートの模様
©相田憲克

  高さ6メートルはあろうかという130年の歴史を誇る興珊寺の天井に、中川賢一が弾くピアノと大森智子のソプラノの美しい歌声、そして住職・佐藤貞雄が叩く木魚と鈴(りん)の音が静かに吸い込まれていく。5秒、10秒、15秒──。クラシック音楽と仏具のコラボレーションが生み出した不思議な余韻の中で、約50畳の本堂を埋めた聴衆の胸に浮かんだのは、約1年半前に起こった中越大地震の被災者への深い深い鎮魂の思いだった。

 死者51人、全半壊家屋16,900棟、仮設住宅への避難を余儀なくされた被災者数約1万人という大災害は、今も新潟県中越地区の人々の生活に深く暗い影を落としている。山間部にはいまだに耕作ができない田畑がたくさん残っているし、この10月に仮設住宅入居期限がきても引っ越しの目処がつかない世帯も少なくない。精神的なダメージも深まり、時間がたつにつれて気の立ってくる老人等もいると聞く。5月8日夜、桜と雪とカエルの鳴き声が同居するこの日の会場となった魚沼市金ヶ沢の興珊寺本堂も、2本の真新しい柱が補強されていた。被災直後は震度6を超える揺れで大きな観音様が倒れ、数カ月手が付けられなかった。住職の佐藤が言う。

 「檀家の中には被害の大きかった山古志村の方もいます。一昨日、その山古志に出掛け、ある被災者の1周忌をあげました。ご家族は、壊れた自宅を建て直してから、そこで供養したかったんです」

 そんな多くの被災者の方たちに励ましの思いを込めて音楽のプレゼントをしたい──この日のコンサートは、小出郷文化会館が企画し、周辺の自治体が初めて広域で連携して実現したものだった。誕生して10年になる文化会館は、これまでにもクラシック・アーティストのアウトリーチ活動に重層的に取り組んできた。村の議事堂、トンネルの中、小学校、寺の本堂等々、さまざまな場所が演奏会場となった。

 今回はそのノウハウを生かして、東京23区の3倍強の面積にも広がる川口町、小千谷市、長岡市、見附市、そして魚沼市が対象となった。5月から11月まで、10人と1組のアーティストが12のサロンコンサートと24回の学校訪問コンサートを行う。その悼尾は全アーティストが出演するガラコンサートと、小学校5年生を招待したコンサート。実に豊穣な取り組みだ。

 この事業のスタートを飾ったのが、5月1日に行われた小千谷市の極楽寺でのサロンコンサートと、2日の小学校2校での訪問コンサートだった。震災直後は町内の避難所だったという極楽寺の住職、麻田秀潤が言う。

 「サロンコンサートでは、クラシックの演奏家があんなに本格的な演奏を目の前でしてくれてみんな驚いてました。被災直後から1年ぐらいは本堂でボランティアの演奏家のコンサートがいろいろあって、涙を流している方も多かったです。演奏家が泊まったり、震災でいろんな人と出会い、若い人も地元のよさに気づいたところがあります。新しいグループが出来たり、地震をきっかけに町に新しい動きも出始めています」

 企画を担当した小千谷市教育委員会、和田顕雄はこう振り返る。
 「アウトリーチ先になった東山小学校は児童が3人亡くなっていますし、職員も含めて精神的なダメージが強い学校です。身近に大森さんの美しい歌声が聴けて、校長先生もクラシックのよさを再認識されていましたし、職員も子どもたちもとても喜んでいました」

 小出郷文化会館らしいのは、サロンコンサートの入場料を無料ではなく1,500円と有料にした点と、会場を仮設住宅ではなく、演奏に相応しい場に設定したことだ。文化の力を信じるがゆえに、文化を大切にしたい。できるだけいい環境で本物の音楽を届けたい。そんな思いの現れと理解できる。

 実は興珊寺住職の佐藤は、文化会館の開館直後から行われているリコーダーアンサンブルの参加者であり、町の有志でつくるフォークジャンボリーの実行委員長でもある。

 文化会館を中心にした人々の熱く厚い確かな輪がこの地には出来ている。その輪が今回のコンサート企画で地域に広がり、大きなハーモニーとなった。この力があれば復興も必ず成せる。そう確信できる一夜だった。

(ノンフィクション作家・神山典士)

中越大震災復興祈念プログラム「中越大震災復興祈念コンサート」

[主催]新潟県長岡市、見附市、小千谷市、川口町、魚沼市、(財)長岡市芸術文化振興財団、魚沼文化自由大楽実行委員会
[共催](財)地域創造、(社)日本クラシック音楽事業協会
[出演]安藤裕子、大森潤子、大森智子、白石光隆、中川賢一、中路友恵、長谷部一郎、BUZZ FIVE、宮本妥子、村越麻希子、山崎祐介(五十音順)

6月以降の開催会場・日程(5月以前のデータはレター5月号参照)

見附市立上北谷小学校・田井小学校(6/13)、見附市文化ホール(6/14)、魚沼市湯之谷庁舎(6/15)、魚沼市立東湯之谷小学校・井口小学校(6/16)、川口町川口小学校・泉水小学校(田麦山小学校と合同:6/21)、川口町生涯学習センター(6/22)、魚沼市立広神東小学校・広神西小学校(6/23)、魚沼市役所守門庁舎(6/24)、堀之内商工会館(7/5)、長岡市立越路小学校・越路西小学校(7/6)、魚沼市立上条小学校・宇賀地小学校(7/20)、小出子育て支援センターぱぴぷ(7/24)、長岡市立中島小学校・桂小学校(9/15)、長岡リリックホール(9/26)、魚沼市小出郷文化会館(ガラコンサート:11/19、20)

 

地域創造レター 今月のレポート
2006.6月号--No.134

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