一般社団法人 地域創造

福岡市 NPO法人FPAPが運営するぽんプラザホール

 福岡市には、「パピオビールーム」「ぽんプラザホール」「ゆめアール大橋」の3つの市立音楽・演劇練習場があり、ぽんプラザホールを福岡市文化芸術振興財団(以下、財団)が、残り2施設を市直営で管理運営を行ってきた。しかし、公募選考を経て今年4月から市直営施設の管理運営を行う指定管理者として、NPO法人福岡パフォーミングアーツプロジェクト(FPAP)が選定され、新たな取り組みがスタートした。NPO法人が設立された経緯を含め、現場の様子を取材すべく、5月28日にぽんプラザホールに出掛けた。

 

  ぽんプラザは、博多駅から徒歩で15分、中心繁華街の天神駅からは地下鉄で1駅目の中洲川端駅から5分ほど歩いたキャナルシティの隣にある(*)。下水道局が所管する市街地のポンプ場の上部空間を活用する目的で、2000年に下水道事業のPRコーナーとロールバック式の客席(108席)をもつ練習場を併設したぽんプラザが開場。演劇関係の公演に多数利用されてきた。取材当日も福岡市と財団が後援したイスラエルのダンスデュオと東京・福岡のダンサーがコラボレートした作品の公演が行われていた。
 (ちなみにこの公演は、福岡市がNPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワークと連携して実施していたダンサー育成事業「ダンスジェネレイト福岡」にも参加していたスウェイン佳子さんが中心となって実現したもの。彼女は福岡で長年モダンダンスの教室を開き、公演やワークショップも主催するなど地元ダンス界の担い手のひとり。何気ないが、こういうところに福岡市の蓄積の一端が垣間見える)
 すべての発端は、それまでビルの管理会社が行っていた練習場の受付業務を、“市民と文化をつなぐ活動の支援”を打ち出して2004年に文化NPO等活動支援担当を設けた財団が、実際に地域で演劇活動を行っている練習場利用者に受付を任せられないかと働きかけたこと。その後、2003年10月に誕生したNPO法人FPAP(エフパップ)が公募選考の結果、翌4月から受付業務を受託し、今年4月からは公募で選ばれ指定管理者として管理運営を行うまでになる。2施設で指定管理料の総額は約5,200万円(舞台管理・清掃等の外注費、水道・光熱費・修繕費含む)。常勤4人、非常勤5人でゆめアール大橋(他のNPOとの共同受託)も含めた管理運営を行っている。
 「FPAPは福岡の地域演劇を牽引する演出家の安永史明(前理事長)を中心に設立しました。演劇関係者を組織化するというより、事務局を中心にしてゆるやかに劇団やスタッフ団体がまとまっている感じで、現在、54団体に賛助団体として関わってもらっています。受付業務だけの時は舞台管理との連絡が不十分な面もありましたが、今は一体化しているし、指定管理者として総合的な判断ができるように、舞台管理や清掃業務も職員が関わってやっています」と演劇制作者でFPAP事務局長の高崎大志さん。
 当時の担当者だった財団の高橋栄幸さんは、「受付を委託してから、月1回、専務理事、課長、係長、担当まで出席してFPAPと協議をして利用規則等を話し合ってきました。財団には若い演劇人たちをサポートする役割もありますが、なかなか気軽に相談に来られない。FPAPのような文化NPOがそういう役割を担ってくれれば」と期待する。
 実際、その活動を見ると、隔月で若い劇団の制作者が集まる勉強会や九州演劇人サミットの開催など、ネットワークの要としての機能を果たしつつある。特にウェブサイトを見ると、公演スケジュールだけでなく、制作者向け情報を提供するなど、福岡・九州の地域舞台芸術を支援するサービスオーガニゼーションとしての自覚がうかがえる。文化NPOがホールという拠点を得たことと管理運営業務という仕事を果たすことで、波紋のようにボランタリーに事務が拡充していく……。行政と文化NPOの連携の相乗効果の一例がそこにはあった。利用のない日を実験的な創造の場として無料で貸す「火曜劇場」など、文化振興役としての取り組みもスタートしていると言い、好きこそものの上手なれではないが、高崎さんのような若いNPO世代の登場に大きな時代の変化を感じた。

 

(坪池栄子)

 

*中洲川端地区は、駅を中心にして半径600メートル、徒歩10分圏内に博多座、福岡アジア美術館、アクロス福岡、福岡シティ劇場(キャナルシティの中にある劇団四季の拠点)がある文化エリア。

 

●ぽんプラザホール
〒812-0038 福岡市博多区園町8-3
Tel. 092-262-5027

 

●NPO法人福岡パフォーミングアーツプロジェクト(FPAP)
http://www.fpap.jp/

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