一般社団法人 地域創造

第7回地域伝統芸能まつり

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左上・八丈太鼓(東京都八丈島八丈町)
右上・先帝祭(山口県下関市)
左下・木ノ本の獅子舞(和歌山県和歌山市)
右下・仁尾の竜まつり(香川県三豊市)

 日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介している「地域伝統芸能まつり」。今年は、2月24日、25日の両日、東京・渋谷のNHKホールで開催され、全国12地域の芸能等が延べ5,600人の観客を魅了しました。
  財団法人地域創造では、「地域伝統芸能まつり」の他にも、こうした芸能の映像記録を財政的に支援し、またその映像をウェブサイト「地域文化資産ポータル」(http://bunkashisan.ne.jp/)で発信するなど、ふるさとの誇りである地域伝統芸術の振興に力を入れてきました。
  今年で7回目を迎える「地域伝統芸能まつり」も全国の芸能継承者の方々の発表の場としてすっかり定着し、日本の芸能の豊かさを広く皆様に知っていただける貴重な機会となっています。

 

●古の人の心(もののあはれ)に迫る

 「怨霊」「恋(こひ)」「天地(あめつち)」「変化(へんげ)」「福」「遊び」とこれまでテーマとして取り上げてきた言葉を並べると、日本の精神文化を理解するキーワードのオンパレードといった感じがします。今年のテーマである「もののあはれ」は、本居宣長が平安文学の美を通して思い至った日本人の感受性の原点を表した概念として知られ、人があらゆる物・事にふれて喜びや哀しみを「ああ」と心に深く感じることを意味しています。今回のプログラムは、そうした「もののあはれ」の観点から伝統芸能や古典芸能が次々に紹介されました。
  1日目のオープニングを飾ったのが八丈太鼓です。「太鼓たたいて人様よせてよな わしも逢いたい方があるよな」─哀調をたたえた太鼓節と共に、2人の打ち手が太鼓の両面を力強く打ち鳴らします。「八丈島の文化は流人を切り離しては考えられません。八丈風土記、仏像、建築物など。2本の刀を2本のバチに持ちかえて流人の哀れを叩いた八丈太鼓もその一つだと言われています」という解説に、観客も古の流人の気持ちを追体験していました。
 「もののあはれ」という意味で最も心を打ったのは琵琶の名手、須田誠舟さんによる平曲(平家物語の弾き語り)でした。NHKホールの大空間にたった一人で登場し、複雑な節回しで時に語りかけるように、時に歌い上げるように何種類もの声を使い分けて語る声の豊かさには圧倒されました。
  地域伝統芸能まつり実行委員会委員長の梅原猛さんは、「今、能に夢中なんです」と自ら登場して狂言『節分』と半能『鵺 白頭』を紹介。入り込んだ家の女房に惚れた鬼が、女に宝物をくれたらと言われて、隠れ蓑、隠れ笠、打ち出の小槌をとられてしまう『節分』、源頼政に退治された化け物の鵺(ぬえ)が“心の闇”を弔ってほしいと僧に依頼する『鵺』。「頭は猿、尾は蛇、手足は虎、鳴き声は鳥の鵺という化け物の立場で描かれたこの能は、世阿弥の作品の中で一番面白い。鵺は世阿弥そのものではないか」と、鬼や鵺という化け物に託した人の心に思いを馳せていました。
  能では霊を呼び出し、魂を沈める音として能管の甲高い叫びのような「ひしぎ」という音が使われますが、その源流といわれる珍しい石笛(いわぶえ)の演奏も行われました。自然に空いた石の穴に強く息を吹き込むと、凛とした音が会場を貫き、一瞬にして太古の時間にタイムトリップ。日本の精神文化と自然との深い関係を目の当たりにし、感慨深いものがありました。
  また、和歌山県から登場した木ノ本の獅子舞は、地上5メートルの高さに渡した2本の青竹の上で2人遣いの獅子が舞うという珍しいものでした。成長を願って我が子を谷底に蹴落とした獅子が子どもを気遣うという舞で、獅子に親心を託した先人たちの思いが伝わってきました。
  初日のハイライトは、高さ約7メートル、1台約500個の提燈で飾った山車を威勢よく引き回す久喜の提燈祭りです。浅間山の噴火による厄災を取り除くための祈願が始まりとの説明に、赤い提燈が噴火の火柱に思え、火柱を自由に引き回す人々の心のデジャヴにふれ、自然を畏怖し、自然の恵みに感謝し、自然を楽しむ日本人の精神文化の真髄を見たような気がしました。

 

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 2日目もさまざまな芸能が披露されるとともに、ロビーには出場地域の物販ブースがずらりと並び、観客は文化だけでなく、特産品やご当地グルメでも地域の豊かさを実感していました。

 

●平成19年度「地域伝統芸術等保存事業」助成内定事業一覧

 

[映像記録保存事業]

◎岩手県花巻市「供養絵額と遺影による供養習俗」
◎秋田県大仙市「黒土神楽」
◎福島県郡山市「多田野の鍬柄舞田植踊り」
◎福島県須賀川市「古寺山自奉楽」
◎栃木県さくら市「①野洲田植唄・野洲苗取唄 ②代々岩戸神楽」
◎埼玉県戸田市「戸田の伝統漁撈」
◎埼玉県行田市「行田市の獅子舞」
◎埼玉県上尾市「藤波のささら獅子舞」
◎愛知県豊田市「河上瀬の左義長(ドント焼き)」
◎和歌山県田辺市「上野の獅子舞」
◎岡山県瀬戸内市「備前焼大窯の再現」

 

[都道府県イベント事業]

◎静岡県「ふじのくに伝統文化フェスティバル」
◎愛知県「ふるさと芸能祭(仮称)」
◎兵庫県「ひょうご文化ルネサンスわくワークフェスティバル」
◎和歌山県「第49回近畿・東海・北陸ブロック民俗芸能大会」
◎鳥取県「第43回郷土の民俗芸能大会」
◎徳島県「伝統芸能~阿波人形浄瑠璃と和太鼓・現代舞踊の融合~」

 

●第7回地域伝統芸能まつり

[日程]2月24日、25日
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、鎌田東二、香山充弘、三枝成彰、下重暁子、鈴木健二、中沢新一、林省吾、原田豊彦、山折哲雄、山本容子、瀧野欣彌
[後援]総務省、文化庁、NHK

 

◎出演団体等

2月24日:
八丈太鼓(東京都八丈島八丈町)
平曲(平家琵琶)「平家物語より 祇園精舎/先帝御入水」
先帝祭(山口県下関市)
狂言『節分』
半能『鵺 白頭』
木ノ本の獅子舞(和歌山県和歌山市)
山形花笠まつり(山形県山形市)
久喜の提燈祭り(埼玉県久喜市)
2月25日:
江差追分(北海道江差町)
備中神楽(岡山県高梁市)
椎葉村の作業唄(宮崎県椎葉村)
江刺鹿踊り群舞(岩手県奥州市)
日本舞踊 清元 申酉
五箇山の唄と踊り(富山県南砺市)
日光和楽踊り(栃木県日光市)
仁尾竜まつり(香川県三豊市)

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