一般社団法人 地域創造

ステージラボ・アートミュージアムラボ東京セッション報告

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写真:
左上・劇団太陽族主宰の岩崎正裕さんによる、演劇がもつ力について考えるゼミ(ホール入門コース)
右上・ピアニスト田村緑さんによる子ども向けアウトリーチプログラムの実演(自主事業Ⅰ音楽コース)
左下・ダンサー上村なおかさんによるダンスワークショップ体験(自主事業Ⅱダンスコース)
右下・倉科勇三さんによるワークショップに関するレクチャー(アートミュージアムラボ)

 今回のステージラボ・アートミュージアムラボ東京セッションは、世田谷パブリックシアターが会場となった1998年以来、10年ぶりの東京開催となりました。会場は、来年度から野田秀樹が初代芸術監督(当面は顧問)になることが発表され、話題となっている池袋の東京芸術劇場です。90年に開館して以来、主に都民の発表会場および貸し会場として運営されてきましたが、オリンピック誘致をきっかけに都が東京の舞台芸術の創造発信拠点とすることを表明。今後の動向が注目されています。
  今回のラボでは、津村卓(ホール入門コース)、児玉真(音楽コース)、志賀玲子(ダンスコース)、河崎晃一(アートミュージアムラボ)の各氏がコーディネーターを務めた4コースを開講。2月5日から8日まで、全国から66人の受講生が集い、交流を深めました。ご協力いただきました関係者のみなさまには心よりお礼申し上げます。


●ワークショップと発表に明け暮れた4日間(入門)

 「音楽、演劇、ダンスがどのような力をもっているか一通り体験して欲しかった」と津村コーディネーターが言うように、入門コースは、デュエットゥ、演出家の岩崎正裕さん、コンテンポラリーダンスの山田うんさんと交流した多彩なカリキュラムとなりました。グループに分かれて具体的なMC入りの進行表まで作成したデュエットゥとのワークショップでは、その企画の中のひとつを実際に演奏家に実演してもらえるというプレゼントもあり、受講生たちは紙のプランが具体化する瞬間に立ち会い、企画者の喜びを実感していました。
  また、岩崎さんとのワークショップでは起承転結のある4コママンガの吹き出しに台詞を入れて戯曲づくりのコツを学び、最後にはおせっかいなヒーローが活躍する寸劇をみんなでつくって発表。横断歩道の安全を守るゼブラーマンなどアイデア満載のユニークなキャラクターが登場するたびに会場は大いに盛り上がっていました。


●邦楽から現代音楽まで幅広く体験(音楽)

 音楽コースでは、島根県芸術文化センター「グラントワ」で邦楽塾を指導している日本音楽集団の取り組みなどを紹介した邦楽から、地域ではあまり紹介されない現代音楽の可能性まで、幅広い領域について学びました。また、「ピアニストの田村緑さんのアウトリーチプログラムを考える」を課題にした企画ワークショップを行いました。NPO広報力向上委員会が作成したワークシートを用い、元電通社員の新澤淳さんの指導により、目標・ターゲット・課題を具体的に整理。田村さんが常時同席し、相談しながら企画づくりを行うという贅沢なワークショップとなりました。
  「アウトリーチプログラムはアーティストと手をたずさえて行うため、演奏家ときちんと話のできるホール職員を育てる必要がある」と児玉コーディネーター。受講生のひとりは、「人手がないため、普及事業はひとりで抱え込んできた。みんなでアイデアを出し合えば企画はこんなに磨き上げられるものなんだということを初めて体験した」と感激の面持ちで話してくれました。


●アーティスト理解からの企画づくり(ダンス)

 今回のダンスコースが課題にしたのが、ひとりのアーティストを深く理解することで企画を立ち上げるという経験を積んでもらうこと。協力していただいたのは、公共ホール現代ダンス活性化事業の登録アーティストとして地域での経験もあるアーティストの上村なおかさんです。
  社会にとってのダンスの必要性をNPO法人で活躍するJCDNの佐東範一さんや芸術家と子どもたちの堤康彦さんから話してもらう一方、上村さんのデモンストレーションやヒアリングを通じて企画づくりを実施。当初はアーティストと話すことも不安気だった受講生がその人柄やユニークなものの見方に触発され、最後の発表にはアーティストに地域を知ってもらいたい、アーティストの視点で地域を再発見してもらいたいというアーティストの存在から発想した企画がずらりと並んでいました。


●4日間にわたって語り尽くす(美術)

 財政難からその存続が危ぶまれ、市民グループが設立したNPO法人芦屋ミュージアム・マネジメントが一部業務の委託を受ける形で運営されている芦屋市立美術博物館。その学芸課長の経験をもつ河崎コーディネーターによる美術コースは、徹頭徹尾、現状を話し合い、課題を話し合うという、これまでのラボの中でも異色のコースとなりました。
  「参加者に文化会館の付属ギャラリー職員などが多かったこともあり、足下を探せばできることが必ずあるという現場意識をもってもらいたかった」とのことで、事前課題で提出された「職場の問題点」「理想的な職場」の発表から始まり、途中、同じく芦屋市立美術博物館で普及事業を担当していた倉科勇三さんの事例発表を挟みながら、ひたすら話し合いが行われました。

 

●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
津村卓(地域創造プロデューサー、北九州芸術劇場チーフプロデューサー)
◎自主事業Ⅰ(音楽)コース
児玉真(NPOトリトン・アーツ・ネットワーク ディレクター、地域創造プロデューサー)
◎自主事業Ⅱ(ダンス)コース
志賀玲子(伊丹アイホールプロデューサー)
◎アートミュージアムラボ
河崎晃一(兵庫県立美術館常設展・コレクション収集管理グループリーダー)

●ステージラボ・アートミュージアムラボに関する問い合わせ
芸術環境部 石井真希
Tel. 03-5573-4055

 

●ステージラボ・アートミュージアムラボ東京セッション カリキュラム

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