一般社団法人 地域創造

平成21年度「公共ホール演劇ネットワーク事業」事業説明会・セミナー報告

 地域創造と複数の公共ホールの連携作業により、1つのカンパニーが地域に滞在し、アウトリーチと公演を行う「公共ホール演劇ネットワーク事業」。21年度の開催に向けた事業説明会(1月21日)と併せ、翌日にはさまざまな関係者を招いて演劇セミナーを開催しました。
  昨年9月に行われたプレ事業「演劇アウトリーチモデル事業」に参加した北海道利尻町交流促進施設どんとの張間静也さんは、「学校の先生を対象にした平田オリザさんの演劇ワークショップは、翌日に控えた学校でのモデル授業をスムーズに運ぶためにも先生の理解を深める重要な時間になった。小・中学生には、多くの表現者に出会うことで人生の選択肢を広げ、人と対話することがこれからの社会生活で必ず役立つという信念をもって事業を行っている」というお話をしていただきました。
  昨年4月に富士見市民文化会館キラリ☆ふじみの芸術監督に就任した生田萬氏と、劇作家・演出家の三枝希望氏からは、子どもたちとの長年にわたる共同作業について、伊丹市立演劇ホール アイホールと北九州芸術劇場の事例を基にお話いただきました。「子どもたちの想像力をフル回転させて創作する事業は、ホールの担当者やテクニカルスタッフのプロの力量が試される。学校で居場所のない子もこの事業では、居場所を見つけることができる。ただし、いじめの問題解決などに結びつくと思ってはいけない」という経験談が参加者にも大いに参考になったと思います。
  55歳以上を対象にしたプロ劇団として話題のさいたまゴールド・シアターの劇団員、益田ひろ子さんは、「役者として表現するとき今まで思い出したくない嫌なことも役に立つ、すべてがリサイクルです」と人生経験が演劇に役立つ実感を、同じく劇団員の竹居正武さんは、「演劇のような取り組みが街を変え、人を変える力になるのではないか」と、街づくりの可能性を見据えた視点を話されました。また、さいたま芸術劇場の渡辺弘事業部長は、「ゴールド・シアターの事業に関わり、演劇は若い人のものだと思いがちだけれど、そうではないということを深く感じた」と新たな側面を指摘されていました。
  今回のセミナーは、子どもたちやシニア世代との演劇を通じた共同作業が、ホールスタッフの意識を変え、その延長に町や人を変える力をもっているという可能性を強く認識する機会となりました。

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