一般社団法人 地域創造

大分県豊後大野市 エイトピアおおの10周年記念 神楽オペラ『SHINWA~アマテラスとスサノオ』

 9歳から76歳までの公募市民合唱団、地元の神楽社、東京からやって来たアーティスト、ピアノとお囃子、直営ホールの市職員─一見すると空中分解しそうなチームが約1カ月の集中稽古でオリジナリティ溢れる舞台をつくり上げた。

  その舞台とは、豊後大野市総合文化センター・エイトピアおおの10周年記念として2月8日に上演された神楽オペラ『SHI NWA~アマテラスとスサノオ』である。弟のスサノオに怒って天の岩戸に隠れた姉アマテラスが踊りに誘われて出て来る「岩戸開」と、乱暴者だったスサノオがクシナダと出会って怪物退治をする「八岐大蛇」の2大エピソードを、さまざまな工夫によりクラシック音楽と神楽を合体させて描いたものだ。

 

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神楽オペラ『SHINWA』舞台の様子
©エイトピアおおの

 例えば、セットは神楽の舞台「御神屋(みこうや)」を意識し、天の岩戸を描いた書き割りの両側に本物の竹を設置。その前に陣取った53人の合唱団が、語り手のナレーションに導かれて「ヤア、ヤア、ヤア、ヤア、八雲立つ…」と五七五七七調のリズムに乗せた合唱曲を歌う。下手ではピアノ、上手ではお囃子が生演奏を行い、アマテラスとクシナダ(一人二役)はソプラノ歌手が、スサノオは神楽面を着けた無言の舞人が演じる。また、神楽の演目となっている岩戸開と八岐大蛇のシーンは地元のすずかけ神楽社が新振付で演じる─といった具合だ。
  そしてその舞台は、人間くさい神様たちが活躍する絵本のような作品に仕上がっていた。

 

 

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あかいやねミュージックフェスタ(2008年11月)
©エイトピアおおの

 豊後大野市は2002年に旧大野郡の7町が合併して生まれた新市で、宮崎と大分の県境にある、豊かな農産物に恵まれた人口4万人の町だ。大(1,001席)・小(300席)のホールをもつエイトピアおおのは、合併前の1998年、日本初の広域連合が設置・運営する施設として誕生。合併に伴い豊後大野市の直営施設として再出発した。
  以来、地域創造の公共ホール音楽活性化事業(音活)やそこで培った人脈をフル活用し、2005年から毎年、BLACK BOTTOM BRASSBAND(BBBB)を招いて「あかいやねミュージックフェスタ」(*1)を実施しているほか、07年には『SHINWA』にも参加しているピアニストの中川賢一さんとソプラノ歌手の大森智子さんを招聘。今回の公演は、1カ月の稽古で実現したというより、こうした会館の継続的な取り組みがあって初めて可能になったものだ。
  事業を担当した金田幸江さんは、「実は2002年に大分で開催された地域創造のステージラボに参加したのがすべての始まりです。そこでこの企画をコーディネートしていただいた能祖将夫さんや今回参加してもらった演奏家の方々と出会いました。初めて見た養護学校へのアウトリーチには本当に感動しました。それをきっかけに市民や子どもたちに舞台に立つ喜びや音楽の楽しみを味わってもらいたいと、アウトリーチ、アーティストによるワークショップ、みんなが共演するホールでの演奏会をセットにした事業を続けてきました。アーティストが人を巻き込む力は本当に素晴らしい」と言う。
  『SHINWA』は、音活などで長年交流のあったアーティストたちが、週3~4日現地に滞在し、ワークショップをしながら作品づくりを行ったのもひとつの特徴となっている。例えば、神楽社とも連日ワークショップを行い、ピアノとお囃子と合唱のコラボレーションのあり方や神楽の入れ方を試行錯誤した。神楽監修の広瀬淳一さんは、「作曲家の長生淳さんなどには、神楽を生で見ていただくところから始めました。要所要所は神楽の所作ですが、新しく振り付けしたところがかなりあります。メンバーが若いからできたし、彼らも視野が広がったと思います」と言う。
  「神楽には神歌というのがあり、これが短歌と同じ五七五七七調になっています。事前にこの神歌を聞かせてもらったのが、一番のインパクトになりました」という長生さん、「口承文学である日本神話は、言葉やリズムの遊びが豊かでそれ自体が音の物語になっている。『八雲立つ』をはじめ『ヤ』が多用されているのを発見し、それを台本のコンセプトにしました」という能祖さんなど、市民と共に新しいものをつくり出そうとしたアーティスト、それを支えたスタッフの熱意が結実した幸せな舞台だった。 *この事業は、地域創造の「公共ホール音楽活性化事業応用プログラム」 (*2)の支援を受けて実施された。

(坪池栄子)

 

●エイトピアおおの10周年記念 神楽オペラ『SHINWA ~アマテラスとスサノオ』
[主催]豊後大野市
[共催](財)地域創造(公共ホール音楽活性化事業応用プログラム)
[会期]2月8日(日)
[会場]豊後大野市総合文化センター エイトピアおおの
[台本・演出・ナレーション]能祖将夫
[作曲]長生淳
[神楽監修・神楽舞手]広瀬淳一(すずかけ神楽社)
[出演]中川賢一(指揮・合唱指導)、大森智子(ソプラノソロ・合唱指導)、白石光隆(ピアノ・合唱指導)、すずかけ神楽社、市民合唱団


*1 昭和20年代に建設された赤い屋根をもつ木造校舎の旧・三重南小学校を活用し、音楽を通じた地域おこしと、子どもから大人まで音楽を楽しめる場の提供を目的として2005年からスタート。08年まで連続してBBBBを招き、地元住民とホールが連携して、学校へのアウトリーチ、木造校舎でのワークショップ、ワークショップ参加者も出演する演奏会を実施。

 

*2 音活などの実績があるホールを対象に、次のステップとして企画した、地域を題材にした作品の創作活動や教育・医療・福祉など他分野との連携を図る事業を2年にわたり支援する(レター2009年2月号参照)。

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