一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル報告

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左上:共通シンポジウム「アウトリーチを検証する~音楽・ダンス・演劇の分野から地域交流プログラムの効果と可能性を考える~」
左下:山田うんさんのコンテンポラリーダンスワークショップ
右上:大森潤子さん(ヴァイオリン)のプレゼンテーション
右下:セミナー「地域における邦楽事業~地域交流プログラムの手法開発へ向けて~」では山田流箏曲の山野安珠美さん、奥山益勢さん、山勢麻衣子さんが演奏を披露(写真は奥山さん、山勢さんの演奏)

 8月5日から7日まで東京芸術劇場と豊島区立勤労福祉会館を会場に地域創造フェスティバルが開催されました。この催しは、これまで実施していた「公共ホール音楽活性化支援事業」の登録アーティストによるプレゼンテーションを、地域創造の事業をより広く紹介するプログラムとして、昨年、大幅にリニューアルしたものです。現代ダンス活性化事業のアーティストによる実演や各種セミナーを併せて開催し、スキルアップや情報収集・交流の場としても活用できるプログラムになっています。今年度は、全国から200人以上の方々に参加していただき、大盛況のうちに終了しました。関係者の皆様には心からお礼申し上げます。

 

●共通シンポジウムのテーマはアウトリーチ

 今年度の共通シンポジウムは、「アウトリーチを検証する~音楽・ダンス・演劇の分野から地域交流プログラムの効果と可能性を考える~」と題して行われました。当財団では、昨年度から学校現場などにおけるアウトリーチの効果についての2カ年調査をスタート。「公共ホール音楽活性化事業・同支援事業(以下、おんかつ)」、「公共ホール現代ダンス活性化事業(以下、ダン活)」で先生と子どもたちを対象にアンケートを実施しています(本誌2009年5月号参照)。

 その調査を担当しているニッセイ基礎研究所・吉本光宏さんの司会により、中間報告のデータを織り交ぜながら、おんかつコーディネーターの楠瀬寿賀子さん、ダン活コーディネーターの志賀玲子さん、公共ホール演劇ネットワーク事業でアウトリーチプログラムを実施した南河内万歳一座の内藤裕敬さん、ダン活の登録アーティストとして数々のワークショップを行ってきた山田うんさんが、それぞれの立場から熱く語りました。内藤さんは「維新派主宰の松本雄吉さんの言葉に、劇場は『あるもの』ではなくて『なるもの』だ、というのがあります。皆さんが地域で何をやりたいかを明確にし、勇気をもって踏み出せば、アーティストはそれにとことん付き合います」と、これから事業に取り組もうとする参加者にエールを贈っていました。

 おんかつ関係では、3日間を通しておんかつ関連アーティスト53組が、これまでの活動で培った演奏とトークを、20分の持ち時間で次々と披露しました。楽曲の実演付きアナリーゼ(分析)や楽曲構成などで聴かせる大人のためのアプローチが増えているのが印象的でした。また、セミナーでは基礎講座に加え、①地域コーディネーターの役割とスキルについて、②クラシック音楽とコンサートの魅力について、という2つのテーマで応用講座が開催されました。最終日に開かれたシンポジウムでは、おんかつをきっかけに地域独自のプログラムを立ち上げて継続している青森市文化スポーツ振興公社、多治見市文化振興事業団、長崎ブリックホール、熊本県立劇場の事例を元に、地域の人材の掘り起こしや、ホールの役割について熱心な話し合いが行われました。

 ダン活では、平成20年度実施団体による取り組みを紹介しながら、3組のアーティスト(岩下徹、セレノグラフィカ、山田うん)によるワークショップが行われました。それを体験した人たちからは「それぞれ特徴ある3組のアーティストに接することができてよかった。100人いれば100通りのダンスがあることを実感しました」「知らない人同士でも、身体を動かすことで一気に壁を取り払うことができることに驚きました。年齢、男女に関係なく取り組めるので、地域に戻ってぜひやってみたい」という声が上がっていました。

 

●本年度スタートの邦楽モデル事業

 参加者の注目を集めたのは、本年度からスタートする邦楽モデル事業を紹介するセミナーです。まず、前半の30分間、「地域における邦楽事業~地域交流プログラムの手法開発へ向けて~」と題して、モデル事業の実施団体である「グラントワ」いわみ芸術劇場館長の山﨑篤典さんと児玉真・地域創造プロデューサーによるトークセッションが行われました。2004年(旧石西県民文化会館時代)から同館では日本音楽集団代表の田村拓男さんを講師に迎え、市内外のアマチュアプレーヤーを対象に箏・尺八のワークショップ「邦楽塾」、小中学生を対象とした箏のワークショップ「キッズ邦楽塾」という2つの育成事業を実施。邦楽塾をきっかけに「島根邦楽集団」が誕生するなど、成果を上げています。その実例を紹介しながら、今年度、島根県益田市、津和野町、雲南市の小中学校で開催する邦楽アウトリーチについて説明。山﨑館長からは、「この事業では子どもたちに邦楽の楽しさを伝えることを第一に、鑑賞を中心としたプログラムをつくり上げていきたい。2002年に学校教育に導入された邦楽ですが、私たちの世代より子どもたちのほうが先入観なしに受け入れる。邦楽にはおじいちゃん、おばあちゃん世代と孫世代といった地域の世代間交流を促す可能性があると思う」と事業に向けての心意気がほとばしっていました。箏、三絃の協力演奏家3人による熱のこもったミニライブも行われ、参加者からは大きな拍手を受けていました。

 

●地域創造フェスティバル プログラム

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