一般社団法人 地域創造

ステージラボ・アートミュージアムラボ富山・高岡セッション報告

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左上:富山県民会館の高野仁さんなどが講師を務めた舞台ワークショップⅠ「舞台っておもしろい」(ホール入門コース)
左下:「越中おわらを体験しよう」(共通コース)
右上:「高岡を知る、フィールドワークする」では伊藤裕夫・富山大学教授と高岡・吉久地区を散策(アートミュージアムラボ)
右下:アーティストユニットKOSUGE1-16によるワークショップ「“もちつもたれつ”という関係性をつくる」の一コマ。参加者が課題解決に向けて自分の施設の現実を短冊に書いて分類してみる(アートミュージアムラボ)

 ステージラボ・アートミュージアムラボ富山・高岡セッションが、1986年にオープンした富山県高岡文化ホールを会場に7月7日から10日まで開催されました。これまでラボの1コースだった管理職対象のコースについては、新たな試みとして東京での分離開催(9月3日~5日)としたため、今回実施されたのはホール入門、自主事業、アートミュージアムラボの3コースです。
  高岡市は前田利長公が築いた城下町として知られ、市内には古い町並みや国宝・瑞龍寺などその面影を今に伝えています。今年9月には開町400周年を迎え、さまざまな記念イベントが行われる予定です。共通ゼミでは越中おわら節など、こうした高岡や富山の新旧の文化を体験するワークショップがプログラムされ、大いに盛り上がりました。共催者としてご協力をいただきました富山県、富山県文化振興財団、高岡市、高岡市民文化振興事業団の皆様には、心よりお礼申し上げます。

 

●コースの個性が際立ったプログラムに

 ワークショップなどの体験型のプログラムと並び、ラボの特徴となっているのが、実務経験豊かなコーディネーターによる個性的なカリキュラムです。今回は、自主事業コースを公共ホール音楽活性化事業のコーディネーターでもある楠瀬寿賀子さんが担当したほか、ステージラボ受講生OBでもある富山県新川文化ホール館長の山本広志さん(ホール入門コース)、現代アートの島として注目を集める直島のプロジェクトに長年携わり、現在は金沢21世紀美術館館長を務める秋元雄史さん(アートミュージアムラボ)が新たにコーディネーターを務めました。

 山本館長のネットワークを活かした入門コースでは、公共ホールの先輩たちが講師としてずらりと顔を揃え、これまで蓄えてきたスキルを学びあう相互交流型のカリキュラムとなりました。富山県民会館、富山県教育文化会館、黒部市国際文化センター・コラーレ、入善コスモホールなど県下のホールに加え、漫画『のだめカンタービレ』の音楽会というヒット企画を生み出したかすがい市民文化財団や、他館の舞台技術関係の相談役となってきた貝塚市文化振興事業団などの先輩たちが惜しげもなくノウハウを伝授。また、音響・照明・舞台技術の基礎を学ぶワークショップでは、富山を代表する市民楽団スキヤキ・スティール・オーケストラを迎えた共通ゼミ用コンサートの仕込みを実際に体験。本番のオペレーションまで担当するという、駆け足ながらフルメニューの実践となりました。最終日の発表では、高岡文化ホール友の会の具体的な事例を元に、制度を見直す企画づくりがテーマになるなど、徹底して公共ホールの職員目線にこだわったカリキュラムでした。

 現代アートの世界に強力な人脈をもつ秋元館長のアートミュージアムラボでは、「どういう学芸員になれば今の厳しい美術館環境を生き抜いていけるか」をテーマに問題解決型学芸員のあり方についてさまざまな角度から検討が行われました。地域と向き合う訓練として、富山大学の先生などの協力を得ながら高岡のフィールドワークを実施。また、横浜の創造都市に関わってきたNPO法人BankART1929や病院でのアート事業を提案している企業の人など、第一線の専門家を招いたゼミも行われました。特に、日本を代表するキュレーターのひとりで、年間入館者65万人・教育プログラム参加者16万人を実現した長崎県美術館を立ち上げた前館長の伊東順二さん(現富山大学教授)のお話は刺激的でした。「東京は素材感をもっていない。日本の素材や技術は地域に眠っている」といった地域の可能性の指摘や、「呼吸する美術館」を目指して実施した長崎県美術館でのさまざまな取り組み(教育機関との連携、離島とのブロードバンドによる連結、プロのボランティアの育成、学生組織の立ち上げ等)は美術館の可能性を大いに実感させられるものでした。

 ユニークだったのは、「マジメすぎると美術の豊かさを失ってしまう」と企画されたアーティストユニットKOSUGE1─16による学芸員の課題解決ゲームづくりワークショップです。新しいゲームのルールを考案して、ゲームの上で本物の課題を解決してしまおうというもので、双六型あり、スポーツ型ありで現代アートならではのアプローチとなりました。

 自主事業コースでは、高岡でつくられたオリジナル楽器の久乗編鐘(仏具の御鈴に音階をつけた打楽器)とマリンバとのコラボレーションをテーマに、コンサートの企画づくりと発表に向けた研修が行われました。マリンバ・打楽器奏者の宮本采子さん、後藤由里子さんによる朗読とマリンバのワークショップ(『動物の謝肉祭』をモチーフに詩をつくり、音楽とコラボしながら朗読)、久乗編鐘の体験などを経て、最後にはその3つを構成したコラボレーション作品が完成。楠瀬さんでも初めてという実験的なステージワークも、筋道を立てれば実現できることに参加者は納得の面持ちでした。参加者のひとりは、「自分が舞台に立って改めて演奏家の気持ちがわかった。どんなに大変でも制作者は演奏家に裏の苦労を見せてはいけないと思いました」と話していました。人と創造することの基本に立ち返った3日間だったのではないでしょうか。

 

●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
山本広志(財団法人富山県文化振興財団・
新川文化ホール館長)
◎自主事業コース
楠瀬寿賀子(津田ホールプロデューサー)
◎アートミュージアムラボ
秋元雄史(金沢21世紀美術館館長)

 

●ステージラボ・アートミュージアムラボに
関する問い合わせ
芸術環境部 大林・水谷
Tel. 03-5573-4076・4064

 

●ステージラボ・アートミュージアムラボ富山・高岡セッション カリキュラム

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