一般社団法人 地域創造

ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」/文化政策幹部セミナー 報告

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左・共通ゼミ「グループディスカッション」
右・公立ホール・劇場 マネージャーコース「市民協働の舞台芸術創造を考える」(講師:中村透・琉球大学教育学部長)

 地域創造では、現場のマネージャーと文化行政幹部職員が交流できる場として、これまでステージラボの1コースとして開催してきたものを「公立ホール・劇場マネージャーコース」(以下、マネージャーコース)として分離し、「文化政策幹部セミナー」(以下、幹部セミナー)と同時並行で開催する初めての試みを行いました(会期:マネージャーコース=9月3日~5日、幹部セミナー=9月3日、4日/会場:地域創造会議室)。スケジュールは下記の通りですが、2日間を隣り合った会議室で過ごすとともに、初日には共通で受講するミニシンポジウム「文化政策における戦略的マネージメント」やグループディスカッションが行われるなど、お互いの立場を理解し合える試みとなりました。

 

●共通ゼミのテーマは「戦略的マネージメント」

 今回コーディネーターを務めたのは、草加叔也さん(マネージャーコース)と河島伸子さん(幹部セミナー)です。共通ゼミのミニシンポジウムでは、コーディネーターが共同で進行を行い、ホール運営、文化政策を代表する専門家として可児市文化創造センターala(アーラ)の衛紀生館長と静岡文化芸術大学の片山泰輔准教授がそれぞれの立場から問題提起を行いました。

 まず、片山さんが文化政策を考える上でのポイントをわかりやすく整理。「文化施設は自治体が力を入れてきた文化政策の手段。文化施設はそもそもこのまちをどうしていきたいかのビジョンと、それを実現するためのミッションがあって初めて活かされていくものなのに、ビジョンとミッションが忘れられていることが多い」「文化施設も他の公共施設も同じだが、施設を利用しない不特定多数の人たちの非利用者便益がなければ税金を使う意味がない。そこを考える必要がある」など解説を行いました。

 対する衛さんは、プロデュース公演からアウトリーチまで年間180事業を行っているというalaでの取り組みを例に、現場で鍛えられた考え方を披露。「まず自分たちを正しく定義することが重要。alaは自らのことを、新しい経験値を提供し、思い出を共有し、新しいライフスタイルをもたらす社会機関であると定義して事業を展開している」「文化というのは、私たちの中にある、関わりたい、関わり合いたいという欲求のことなのではないか。ならば、そうした人と人が関わる場、他人との相互交流によって新しい発見ができるような場を提供していくのが我々の役割だと思う」と、受講生を刺激していました。

 ミニシンポジウムの後、全受講生28人は両コースの混成で6グループに分れて討議。市・県など自治体の規模によって文化政策によるまちづくりのあり方が異なるとの発表を行ったグループに対し、専門家からは「住民が主体的に参画していくための文化政策のあり方が見えてこない」といった厳しい指摘も飛んでいました。

 

●館長クラスが講師陣

 今回のマネージャーコースでは、世田谷パブリックシアターなど官民合わせて10以上の劇場の開設に関わってきた佐藤信さん(演出家、現「座・高円寺」芸術監督)、中村透さん(琉球大学教育学部長、元シュガーホール芸術監督)、渡辺弘さん(埼玉県芸術文化振興財団事業部長、元まつもと市民芸術館支配人)といった館長クラスが講師として参加。これまでの経験を踏まえた最新の情報を提供しました。

 ラボの講師としてお馴染みの中村さんは、会議室の床に大きな日本地図を書いてその上を歩かせるという斬新なワークショップからスタート。「住んでみたい地域に移動」と言われた受講生たちは、なぜか北海道や九州など日本列島の端へと移動。「仕事では東京に集まるのに、意識は地方に散っているというのがわかって安心した」と指摘され、みんな苦笑い。

 最後に、シュガーホールで長年行ってきた市民参加によるミュージカルづくりを通じて見えてきたことを次のように締めくくられたのは、とても印象的でした。

 「日本の感覚では“身”というのがとても重要なキーワードになっているのに失われつつある。この精神と肉体が分離していない“身”の感覚を取り戻すには、身体を一緒に動かしていく“身体協働”が基本のパフォーミングアーツを見直していくことが必要。地域社会・共同体・異世代で一緒に汗をかくことがなくなり、まちは生産システムと離れ、職住が分離し、情報がメディアでしか入ってこない現状では、ましてや“身体協働”ということが重要になってくる。それと、地域の人は、子どもたちに対して異文化との接触・高度な技術との接触のための可能性を何らかの形で開いておかなければ、子どもたちから機会を奪うことになることにも留意すべきだ」(中村)

 また、今年開館したばかりの座・高円寺芸術監督の佐藤さんは、これまでの公立ホール・劇場の歩みを振り返った上で、「世田谷パブリックシアターでは、劇場になるために専門的な職員をもってきて性能のいいチームをつくることをやった。公共性の担保では、専門セクションをつくり予算の3分の1をアウトリーチに充てるなどしたが、公共劇場としては従来の劇場側の専門性だけでは満たされないところがあることなどを学んだ。座・高円寺では、劇場からの発想ではなく、高円寺というまちが必要としていることが何で、それを劇場に取り込むにはどうしたらいいかと発想の転換をして、運営を考えている」と今の取り組みについて紹介されました。

 常に刷新を心がけるトップの存在が、公立ホールの現状を支えていることを改めて感じた3日間だったのではないでしょうか。

 なお、幹部セミナーでは主体的に考えることを目指し、2日目(最終日)は本格的なディベートを中心にしたプログラムとなりました。受講生からは、「文化政策・文化行政について体系的な解説資料がなかったので事前配布資料が大変参考になった」「現場と共通の場をもてたことがよかった」「今年度異動してきた人もいて、キャリアの違いが際だった」などいろいろなご意見をいただきました。

 地域創造では、こうしたご意見を踏まえ、来年度からのマネージャーコース、幹部セミナーのあり方を検討していく予定です。

 

●ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」/文化政策幹部セミナースケジュール

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●コーディネーター
◎ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」
草加叔也(空間創造研究所 代表)
◎文化政策幹部セミナー
河島伸子(同志社大学経済学部教授)

 

●問い合わせ
◎ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」
芸術環境部 水谷・大林
Tel. 03-5573-4064
◎文化政策幹部セミナー
総務部 布施
芸術環境部 加藤
Tel. 03-5573-4143

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