一般社団法人 地域創造

平成21年度「都市行政文化懇話会」終了報告

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左・加藤種男氏の講演
右・講演後には早稲田桜子さん(ヴァイオリン)と大熊理津子さん(マリンバ)によるミニコンサートが催された

 今年度も文化芸術による地域づくりに高い関心をお持ちの市長の皆様をお迎えした「都市行政文化懇話会」が、10月15日に地域創造会議室で催されました。

 冒頭の林省吾理事長からの挨拶に続き、財団の顧問のひとりであり、地域と文化芸術についてのご意見をいただいてきた山折哲雄氏(宗教学者、国際日本文化研究センター名誉教授)、産業政策を研究されている後藤和子氏(埼玉大学経済学部・経済科学研究科教授)、メセナ活動のキーパーソンとして知られる加藤種男氏(社団法人企業メセナ協議会研究部会部会長、財団法人アサヒビール芸術文化財団事務局長)による講演が45分ずつ行われました。

 京都で20年近く生活されてきた山折氏は、海外に誇るべき日本文化として、神仏に対する信仰と自然景観が一体となった庭園を例に挙げ、千年以上にわたって育んできた日本人の美意識、文化意識という大きなテーマで話をされました。まず、カメラを片手に騒ぎながら名園を通り過ぎる観光客の増加に対して、肉眼でものを見ることを忘れてしまった日本人の文化意識の荒廃を指摘。ニューヨークで発行されている雑誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』の日本庭園ランキング(日本の庭園の研究者が現地調査を行って発表)において、回廊を備えていて見せる工夫が行われている島根県安来市の足立美術館の庭園が、7年連続して1位を獲得していることなどにふれながら、「日本文化の精髄を伝えていくための工夫を各地域で行っていただきたい」と話されていました。

 後藤氏は、クリエイティブ産業と都市政策をテーマに話をされました。ヨーロッパでは20年前から付加価値の高い産業にシフトする政策が取られてきたのに対して、日本は産業構造の転換に出遅れたと問題を提起。フランス・ナント市の創造都市政策やクリエイティブ・クラスという考え方にふれながら、これからの日本では、優れたコンテンツを生み出し、新しい産業を興すためには、文化政策と産業政策を一体にした取り組みが不可欠であると指摘されていました。

 アサヒビール文化財団での活動を中心に、アートの領域で企業と市民と行政の協働を推進してきた加藤氏は、「ニューコンパクト」という考え方を中心に紹介されました。これは、20年にわたり地方都市が疲弊してきた日本の現状に対し、広義の文化振興によって地域のコミュニティを再生することを提案したものです。「製造販売の一体化、小規模経営、地産地消、Face to Face の顧客管理といったコンパクト経済によってコンパクトな社会をつくるべきだ。そのためには地域の技術をブランド化する文化力が必要だし、圧倒的なビジョンの喚起力をもち、すべての営みに効果的に関わることができるアートが重要になる」と加藤さんは力説されていました。

 市町村長セミナー等でもこうした刺激的な最新情報をお届けする講演会が開催されていますので、ぜひそちらにもご参加いただければと思います。

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