一般社団法人 地域創造

平成22年度「公共ホール音楽活性化事業」全体研修会

平成22年度公共ホール音楽活性化事業全体研修会
2010年4月14日~16日

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写真
おんかつ登録アーティストの公開プレゼンテーション(津田ホール)と研修会(地域創造会議室)の様子
左上:Quatuor B
右上:吉岡次郎
左下:Dual KOTO×KOTO
右下:グループに分かれての企画検討が行われた

 平成22年度公共ホール音楽活性化事業(以下、おんかつ)の参加団体を対象にした全体研修会が、4月14日から16日まで地域創造会議室と津田ホールを会場にして開催されました。2年に一度入れ替わる登録アーティストの更新年にあたる今年度は、全国から20団体が参加し、新規登録された10名・組のアーティストや関係者と交流を深めました。
  おんかつは、オーディションにより選ばれた登録アーティストとコーディネーターを市町村の公共ホール等に派遣し、地方公共団体との共催でコンサートと4回のアクティビティ(アウトリーチをはじめとする演奏交流プログラム)を企画・実施するものです。参加団体の担当者、コーディネーター、登録アーティストが一堂に会する全体研修会では、具体的な事例紹介によって実務を学ぶ研修と企画づくりワークショップ、および登録アーティストが実演を行う公開プレゼンテーションが行われます。新規アーティストのデビューを飾るプレゼンテーションにはクラシック音楽のアウトリーチに興味をもっている一般の公立ホール担当者や関係者なども集い、そのパフォーマンスに熱い視線を送っていました。

4回のアクティビティの機会を有効に活用

 おんかつのアクティビティというと小学校へのアウトリーチを連想しがちですが、4回ある機会を活かしてアクティビティ先に工夫を凝らしている事例もあります。今回はその中から、地域の特性とアーティストの個性を踏まえて学校以外でのアクティビティを入れて構成した勝央町(平成21年度実施:岡山県)と、(財)富田林市文化振興事業団(平成20年度実施:大阪府)の取り組みが紹介されました。
  勝央町では、小谷口直子さん(クラリネット)と福島青衣子さん(ハープ)が、4つの異なる背景をもつ施設(統廃合で生まれた新しい小学校、工業団地内の企業、病院、摂食障害を抱える女性のための施設)でのアウトリーチを実施しました。担当の竹内祐三さんは、おんかつに参加した理由を「2004年に開館した勝央文化ホールが5年目を迎え、新たな展開を模索していたときにおんかつと出合った」と言います。全体研修会で地域資源を考えるワークショップを行ったのがヒントとなり、4回のチャンスを有効に活かして「地域資源の発見とホールのチャンネルを拡げること」を目的に異なる4施設を選択したとのこと。
  「会場の様子も、対象者も、求められる内容もすべて異なったため、アーティストには負担が大きかったと思います。しかし、小谷口さんから『この厳しい時代に音楽がなくても困る人はいないのでは?と考えることも多いですが、地域で演奏やアウトリーチを行うたびに逆に音楽の力を再認識できる』という言葉をいただき、アーティスト以上にホール職員がそのことを考えなければならないと感じました。事業を行うことでこういう“残る物”がある、というのがおんかつの良いところだと思います」と竹内さん。
  また、富田林市には、担当者の辻野文崇さんがプレゼンテーションの時に人柄に惚れ込んだという今野尚美さん(ピアノ)が訪問。アクティビティでは、生徒数が市内で最少の小学校のほか、ホールに来ることのできない支援学校の子どもたちに向けたアウトリーチ、未来の演奏家を育てることを目的としたピアノクリニック、ホールに併設されているプラネタリウムでのミニコンサートが行われました。
  今回の全体研修会にも同席した今野さんは、「小学6年生の時に体育館で演歌歌手の島倉千代子さんの歌を聴いて生身の凄さに感動しました。アウトリーチというのは“手を伸ばす”という意味ですが、本当に手の中に残るもの。ですから、どうすれば自分が学んできたことを伝えられるか、どうすれば担当者の思いに応えられるか、という気持ちで一杯でした」と言います。
  支援学校では「今いる場所、学校はここから将来に向けて出発するふるさと」という思いを込めて校歌を最初に演奏。また、小学校では先生が描いた海の絵にちなんだ即興演奏、プラネタリウムではそこの映像を活かした母子向けミニコンサートなど、アクティビティ先の資源を活かした取り組みが紹介されました。

 

初々しいプレゼンテーション

 おんかつ事業では、その一環として若い演奏家の育成と県が主体となって県内アウトリーチ事業を構築するアウトリーチ・フォーラム事業を行っています。今回はそのフォーラム出身の3名・組を含む10名・組のアーティストが、各30分ずつ計3時間にわたってそれぞれテーマをもったパフォーマンスを披露しました。
  皮切りを飾ったQuatuor B(クワチュールべー)(サクソフォーン四重奏)のテーマは親しみやすさとアレンジ力。あだ名で呼び合う自己紹介から始まり、作曲家の高橋宏樹と組んだテーマ曲や『赤とんぼ』などの身近な日本歌曲をアレンジした「日本の四季によるミニチュア・シンフォニー」でサックスの魅力をアピールしていました。
  吉岡次郎さん(フルート)はフルートを横笛ととらえて、「世界中どこにでもあるさまざまな横笛の魅力を広めたい」をテーマに、フルートのBb管を用いて同じ笛の仲間であるバグパイプやインドの蛇遣いの笛の音真似を披露していました。大石将紀さん(サクソフォン)が打ち出したのは、難しくて敬遠しがちな現代音楽でした。「現代音楽は音を遊ぶこと」をテーマに、サックスで現代音楽を演奏するために不可欠な超絶技巧と循環呼吸(息を吐きながら吸う)を身に着けるための練習曲『蚊』を取り上げ、「ブ~ン、ブ~ン、ブ~ン」という驚きの蚊の羽音を実演。また、乗松恵美さん(ソプラノ)は「うたのストーリー性」をテーマに、山田耕筰の童謡をお話し仕立てで披露していました。
  地域創造では、昨年度からモデル事業をスタートするなど、邦楽のアウトリーチにも力を入れています。おんかつでも邦楽ジャンルに門戸を開き、片岡リサさん(箏)に続いて箏デュオ「Dual KOTO×KOTO」がアーティストに登録されました。
  このほか、沖縄在住で、南城市(旧佐敷町)のシュガーホールが開館当初から取り組んできた「おきでんシュガーホール新人演奏会オーディション」でグランプリを受賞した新崎誠実さん(ピアノ)、N響で活躍した祖父や父など音楽一家に生まれた海野幹雄さん(チェロ)、ドイツ育ちの実力派・甲斐摩耶さん(ヴァイオリン)、現役大学院生の瀧村依里さん(ヴァイオリン)、パーカッション&ボイスという新しいジャンルで登録した野尻小矢佳さんといったフレッシュマンが、緊張したなかにも初々しいパフォーマンスを披露していました。

●公共ホール音楽活性化事業
◎平成22・23年度登録アーティスト
新崎誠実(ピアノ)、甲斐摩耶(ヴァイオリン)、瀧村依里(ヴァイオリン)、海野幹雄(チェロ)、吉岡次郎(フルート)、大石将紀(サクソフォン)、野尻小矢佳(パーカッション)、乗松恵美(ソプラノ)、Dual KOTO×KOTO(箏デュオ)、Quatuor B(サクソフォーン四重奏)
◎コーディネーター
・チーフ
児玉真(地域創造プロデューサー、いわき芸術文化交流館アリオスチーフプロデューサー)、津村卓(地域創造プロデューサー)、能祖将夫(北九州芸術劇場プロデューサー、桜美林大学准教授)、楠瀬寿賀子(津田ホールプロデューサー)、丹羽徹(社団法人日本クラシック音楽事業協会事務局長)、小澤櫻作(地域創造ディレクター、財団法人アフィニス文化財団ディレクター)
・サブコーディネーター
水上俊秀(財団法人仙台市市民文化事業団)、宇津志忠章(広島交響楽団/社団法人広島交響楽協会)、山本若子(有限会社N.A.T)、花田和加子(ヴァイオリニスト)、田澤拓朗(財団法人青森市文化スポーツ振興公社)、角井智絵(マリンバ奏者)
・アドバイザー
吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室長)
◎問い合わせ
芸術環境部 友田・沼田
Tel. 03-5573-4064

●公共ホール音楽活性化事業平成22年度実施団体(20団体)
NPO法人一関文化会議所(岩手県一関市)、多賀城市(宮城県)、塩竈市教育委員会(宮城県)、八郎潟町教育委員会(秋田県)、笠間市教育委員会(茨城県)、栃木市(栃木県)、(財)浦安市施設利用振興公社(千葉県)、狛江市文化振興事業団(東京都)、(財)柏崎市観光レクリエーション振興公社(新潟県)、箕輪町(長野県)、NPO法人ひだ文化村(岐阜県飛騨市)、田原市(愛知県)、上富田町教育委員会(和歌山県)、熊野町(広島県)、上島町教育委員会(愛媛県)、須崎商工会議所(高知県須崎市)、香南市(高知県)、(財)佐賀市文化振興財団(佐賀県)、鳥栖市(佐賀県)、玖珠町(大分県)
●全体研修会プログラム
◎4月14日(水)/地域創造・会議室
・ Mission(児玉真)
・ Know-how-1~事業の流れ編~(小澤櫻作)
・ 事例紹介-1~地域資源の活用~(吉本光宏×勝央町)
・ 事例紹介-2~アーティストを活かす~(能祖将夫×富田林市×今野尚美)
・ 番外ゼミ(参加者、コーディネーター、講師による意見交換会)
◎4月15日(木)/津田ホール
・ Know-how-2~ホール担当者の役割編~(進行:丹羽徹)
・ Goal(進行:津村卓)
・ 登録アーティストプレゼンテーション
・ 交流会
◎4月16日(金)/地域創造・会議室
・ グループ別企画検討」(進行:児玉真)
・ 発表(3分×20団体)
・ Know-how-3~事務手続き編~

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