一般社団法人 地域創造

平成21・22年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業」報告

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左上・綾部市アウトリーチの様子(会場:志賀小学校、アーティスト:澤菜穂子、弘田徹、南部麻里)
右上・京丹後市アウトリーチの様子(会場:田村小学校、アーティスト:鈴木慶子、閑ゆりあ、冨田大輔、田中愛)
左下・宮津市アウトリーチの様子(会場:由良小学校、アーティスト:高梨寛子、石橋梓、田中麻樹子、桑野恵子)
右下・総括コンサート(中丹文化会館)

 地域創造では、都道府県の参加のもと、研修会や域内市町村でのアウトリーチ、コンサートなどの事業を実施することで、都道府県にアウトリーチの手法および事業展開のノウハウを蓄積することを目指す公共ホール音楽活性化アウトリーチ・フォーラム事業(*)を実施してきました。平成21・22年度(京都セッション)においては、これまで単年度で実施してきた本事業を、都道府県に対するサポートやノウハウの提供をさらに充実させ、そのネットワークづくりをより強固なものとするため、2カ年の事業として実施しました(事業の流れは下記図参照)。

●拠点ホール中心のネットワークづくり
 今回の事業のパートナーとなったのは、京都府北部に位置し、清流や里山、田園、星空など山紫水明の自然環境に恵まれた綾部市にある財団法人京都府中丹文化事業団です。この京都セッションでは、2カ年という期間を生かして、事業の趣旨でもある「ネットワークづくり」に特に重点を置き、プログラムを実施しました。大都市にはない地域密着型の事業展開を目指し、市町村公演事業の実施団体として選定されたのは、中丹文化事業団の近隣に位置する福知山市、綾部市、舞鶴市、宮津市、京丹後市、伊根町の6市町。経験も立場も異なる各市町の担当者は、中丹文化事業団や京都府を中心に、事業に対する積極的な情報交換を行い、公演事業への準備を進めました。今回のチーフコーディネーターを務めた児玉真さんも「一般的には近隣で競合するホールが多いが、今回は中丹文化事業団を中心に近隣の市町立ホールが互いに協働したことが大きな成果に繋がった」と語っていました。

●バラエティに富んだ演奏プログラム
 京都セッションに参加したアーティストは、オーディションによって選ばれたピアノトリオ、弦楽四重奏、サックス四重奏の3組11名。市町村公演事業では、小学校を中心に計36回のアウトリーチを行い、各市町のホールにてコンサートを開催しました。
  アウトリーチやコンサートでは、それぞれのアンサンブルが研修での成果を踏まえ、工夫を凝らして音楽の素晴らしさを伝えました。コンサートで子どもたちを舞台に上げて音の響きや迫力を伝えたピアノトリオのTriangle。楽器の魅力とともに表現することの大切さ、故郷を想うことの大切さを伝えた弦楽四重奏のSTRINGQUARTET EARTH。絵本と朗読とのコラボレーションによる音楽物語で新たな音楽の魅力を伝えたSaxophone Quartet 桜と、それぞれに特徴あるプログラムを展開しました。本物の音楽にふれた多くの子どもたちは「音の大きさに驚いた」「曲を聴いて想像するのが楽しかった」などの感想を述べていました。

●地域と一体となった総括コンサート
 12月18日には、プログラムの掉尾を飾る総括コンサートを中丹文化会館で開催しました。アンサンブルごと3組の演奏の後、アンコールではクリスマスをテーマにした曲を全11名で演奏。主催となる中丹文化事業団や京都府のほか、これまで市町村公演事業を実施してきた市町の担当者も積極的に企画づくりやサポートに参加し、地域とのネットワークづくりを掲げて行ってきた事業を象徴するコンサートとなりました。
  今回、演奏家として参加したSTRING QUARTET EARTHの田中愛さんは、「アウトリーチ経験のないメンバーもいたなかで、無事に最後までやり遂げることができたのは、地域の方やスタッフの皆さんの根気強いサポートのおかげ。この経験をアーティストとしての意義ある活動に繋げていきたい」と語り、また、事業の担当者として全6市町の市町村公演事業をサポートした中丹文化事業団の垣内武臣さんは、「地域や市町の担当者の方々と交流を深めることができたこの事業は本当に楽しかった。この2年間での出会いと、それによって得ることができたノウハウを今後も地域のために生かしていきたい」と振り返っていました。

●平成22・23年度事業も本格スタート
 京都府での成果を踏まえ、平成22・23年度は滋賀県と和歌山県の2県で実施しています。先日、事業の実施に先立ち、両県において県内市町村の文化担当者やホール職員などを対象としたアウトリーチに関するシンポジウムを開催しました。
  チーフコーディネーターを務めるのは滋賀県が児玉真さん、和歌山県が楠瀬寿賀子さん。シンポジウムでは、両チーフコーディネーターにアウトリーチを実施する意義などについてお話いただいた後、過去に実際にアウトリーチ・フォーラム事業を経験した担当者による事例の紹介を行いました。事例の紹介を行ったのは、滋賀県では、(財)熊本県立劇場の本田恵介さん、和歌山県では(財)青森市文化スポーツ振興公社の田澤拓朗さん。お二方ともこの事業をきっかけに、地元で独自にアウトリーチ事業を継続しており、事業を実施していくポイントだけではなく、その継続の必要性と意義を強く訴えていました。
  講義の後には、公共ホール音楽活性化事業のOBアーティストによる模擬アウトリーチなどが行われました。アーティストによる模擬アウトリーチを実際に体験した参加者からは、「今日味わった感動を今度は自分の地域の方々に届けたい」「より多くの方にクラシック音楽に興味をもってもらう機会をつくっていきたい」などの声が寄せられ、地域でアウトリーチを実施することの意義を体感していました。
  なお、平成23・24年度は鹿児島県にて事業を実施する予定です。各団体の皆さまにおかれましては、今後事業へのご参加をぜひご検討ください。

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*アウトリーチ・フォーラム事業の主なプログラム
①シンポジウム
県内の公共ホール職員等のほか、アウトリーチに興味のある方々を対象に、アウトリーチ活動の基本的なことから、その意義や可能性などについて専門家を招いて学ぶシンポジウム
②全体研修会
市町村公演事業を実施する担当者向けの実務的な研修会
③アウトリーチ研修
演奏家やコーディネーターとともにアウトリーチの手法を開発する研修会
④市町村公演事業
都道府県立ホールのサポートにより域内各市町村で実施する学校等でのアウトリーチと公共ホールでのコンサート
⑤総括コンサート
都道府県立ホールでの演奏家全員が参加する事業の締めくくりとなるコンサート

●平成21・22年度「公共ホール音楽活
性化アウトリーチ・フォーラム事業」京都セッション
[主催](財)京都府中丹文化事業団
[共催](財)地域創造
[市町村公演事業実施団体]福知山市、綾部市、舞鶴市、宮津市、京丹後市、伊根町
[実施日程]2009年12月8日~2010年12月18日
[チーフコーディネーター]児玉真(いわき芸術文化交流館アリオスチーフプロデューサー、地域創造プロデューサー)
[コーディネーター]能祖将夫(北九州芸術劇場プロデューサー、桜美林大学准教授)、川本伸治(PMF組織委員会アーティスティック・アドミニストレーター)、小澤櫻作(地域創造ディレクター、アフィニス文化財団ディレクター)
[アシスタントコーディネーター]赤木舞(昭和音楽大学音楽学部助教)、角井智絵(マリンバ奏者)、能勢美紀(横浜みなとみらいホール事業企画グループ)
[演奏家]
・福知山市、綾部市担当
Piano Trio ∴ Triangle
澤菜穂子(Vn)、弘田徹(Vc)、南部麻里(Pf)
・京丹後市、伊根町担当
STRING QUARTET EARTH
鈴木慶子、閑ゆりあ(Vn)、冨田大輔(Va)、田中愛(Vc)
・舞鶴市、宮津市担当
Saxophone Quartet 桜高梨寛子(SSx)、石橋梓(ASx)、田中麻樹子(TSx)、桑野恵子(BrSx)

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