一般社団法人 地域創造

ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」/文化政策幹部セミナー 終了報告

ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」/文化政策幹部セミナー 2011年10月12日~14日

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写真
左上:坂田裕一・盛岡市中央公民館館長による報告「東日本大震災と公共劇場」
右上:「英国の公共劇場と学校における演劇教育」の講師を務めたディーン・チャールズさん。ドラマ・ティーチャーの資格をもつ氏による講義とワークショップが行われた
左下:文化政策幹部セミナーのケーススタディ「コーディネーターの役割」の様子
右下:共通ゼミのグループディスカッション

 地域創造では、公立文化施設のマネージャークラスおよび文化政策幹部職員を対象とした上級者向け研修事業として、平成21年度からステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」(以下、マネージャーコース)と「文化政策幹部セミナー」(以下、幹部セミナー)を同時開催し、相互コース間の交流を図っています。今年度は、マネージャーコースのコーディネーターに東京芸術劇場副館長の高萩宏さん、幹部セミナーのコーディネーターに東京藝術大学教授の熊倉純子さんをお招きし、10月12日から14日まで(幹部セミナーは13日~14日)地域創造会議室で開催されました。
  マネージャーコースでは、初日にドイツ、フランス、イギリスの公共劇場の運営やイギリスのドラマ教育について学んだ後、池袋でフェスティバル/トーキョーの野外公演(維新派)を鑑賞、3日目にはコミュニケーション教育のワークショップも体験。また、幹部セミナーでは、「市民の価値」について指摘したジョン・ホールデンの学説を学ぶなど、市民との協働を進めるためのコーディネーターの役割に注目。八戸市と北本市のアートプロジェクトを例にしたケーススタディを開催。劇場の立場から、また行政職員の立場から、将来の地域における公共劇場のあり方や文化芸術の果たす役割について改めて問い直すレクチャーや、真剣なディスカッションをとおして、参加者それぞれがこれからのあり方について考えました。
  両コースを通じて、最も重要なテーマとなったのが、3月11日の東日本大震災です。被災地で活動している関係者からの報告に加え、共通ゼミとしてミニシンポジウムを企画。今回のレターでは、その内容について詳しくご紹介します。


 

東日本大震災における取り組み

 マネージャーコースでは、盛岡市中央公民館館長の坂田裕一さんから岩手県のホールの被災状況や現在抱えている課題、震災からの文化復興の取り組みについて、2時間にわたって報告が行われました。県内24施設の内、17施設が被災。津波で全壊した陸前高田市民会館はシンガポール赤十字社の支援によりヘリポートと避難物資保管庫を有した多目的ホールとして平成25年度中に再建される目処がたったこと、津波で半壊した釜石市市民文化会館の復旧見通しは立っていないものの、11月上旬には市民が体育館で文化祭を開催予定であること、同じく復旧の見通しが立たない宮古市民文化会館は地元楽器店との指定管理協定を解除したことなど。生々しい情報に参加者は緊張した面持ちで聞き入っていました。
  「宮古で活動していた知り合いの劇団は、倉庫に保管していた装置も衣装も流されました。でも、みんなが集まったら自然に芝居をやろうという話になったそうです。ホールが出来る前から芝居をやっている。好きだからやっていたのに、震災があったから止めるというわけにはいかないと。ホールが地域文化の復興を支援できる状況になくても、市民や文化団体は自主的に活動を始めています」と坂田さん。
  この他、中央公民館を拠点にした活動として、延べ2,507名のボランティアが6万2,000冊の本を147カ所に届けた「3.11絵本プロジェクトいわて」、支援したい団体と被災地のニーズを繋ぐ「いわて文化支援ネットワーク」を立ち上げて行った100台以上の中古ピアノの提供や県内のレッスンプロで結成したいわてフィルハーモニーの活動など、さまざまな取り組みが紹介されました。
  「避難所になった所はあっても、慰問公演や文化支援ボランティアの窓口になるなど、“文化支援センター”の役割を果たせたホールはほとんどなかった。これでいいのかと思いました。専門施設という特権により地域から遊離し、暮らしの中で培われてきた民俗芸能などを軽視してきたのではないか。地域のホールは雑多な芸能が集う広場になるべきだと改めて思いました」(坂田)
  共通ゼミでは、パネリストとして阪神・淡路大震災を機に神戸市の新長田で公設民営の小スペースの運営を始めたNPO法人ダンスボックス代表の大谷燠さんが登壇。被災地の外でできる取り組みとして、いわき高校演劇部や普代村の鵜鳥(うのとり)神楽の受け入れ先となったことを報告。また、震災前から南三陸町の魅力を再発見するアートプロジェクトを展開してきたENVISI代表の吉川由美さん(八戸ポータルミュージアムはっち文化創造ディレクター)からは、今なお続く深刻な状況についての報告がありました。吉川さんは、町のお嫁さんたちと地域の宝物や記憶を取材し、神社に伝わる「きりこ」(紙を切り抜いてつくるお供えの飾り)をつくり、昨年、沿道1キロにわたって展示。今年もプロジェクトの準備を進めていた矢先に町が津波で壊滅。「3月22日に仙台から取る物も取りあえず町に入りました。4キロ内陸まで津波にさらわれ、町の住宅の69%が流出し、生活のすべてが流されていた。子どもたちの半分が家を失い、4分の1が家族を亡くしているのに、静かに悲しみに向き合う時間もない状況でした。それで音楽家に協力してもらって5月11日に黙祷の会を催しました。最初は心のケアどころではない状況で、仮設住宅に入ったこれからが問題だと思っています」と吉川さん。稀有な経験をした子どもたちが素晴らしい大人になっていくのが本当の復興だと思う、という言葉に頷くしかありませんでした。
  共通ゼミを通じてわかってきたのは、公立ホールや自治体の職員が地域の繋ぎ手として日頃からどれだけ機能できているかが重要だということでした。それぞれが震災という厳しいテーマと公立文化施設のあり方や地域と文化芸術の関わりに向き合った3日間となりました。


 

ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」/文化政策幹部セミナー スケジュール

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