一般社団法人 地域創造

調査研究事業報告 東日本大震災以降の被災県における 公立文化施設及び文化行政に関する実態調査

 財団法人地域創造は、平成23年3月に発生した東日本大震災が公立文化施設や地方公共団体の文化関連の活動に与えた影響を把握するため、特に被災の影響が大きいと考えられる5県(青森・岩手・宮城・福島・茨城)にある公立文化施設[*1]および地方公共団体に対してアンケート調査を実施した(調査期間:2011年12月15日~2012年2月3日)。

  今回は、公立文化施設のアンケート結果の中から、震災後の各施設の状況、震災で明らかになった今後の施設運営の課題や、震災後実施した特別事業[*2]についてその一部を報告する。なお、地方公共団体のアンケート結果を含む調査報告書本編は、4月から当財団ホームページ(http://www.jafra.or.jp/)で閲覧、ダウンロード可能。

 

◎公立文化施設への震災の影響【図1】
 被災地域5県の公立文化施設395館にアンケートを郵送し、263館から回答があった(回収率66.6%)。その県別内訳は、青森44館、岩手46館、宮城50館、福島61館、茨城62館で、そのうち直営により運営されているのが168館、指定管理者が95館だった。
 東日本大震災によってハード面、事業実施面、運営面のうち、一つでも震災の影響があったかどうかを尋ねたところ、影響ありと回答した施設は223施設(84.8%)だった。

◎震災後の開館・閉館の状況【図2】
 「震災の影響あり」と回答した223施設のうち87.9%の施設が、何らかの形で閉館と回答。ただし、そのうちの約7割が「閉館したが、すでに再開」しているが、「現在[*3]も一部閉館」「現在も全部閉館」の施設も合計で41館(18.4%)に上っている。

◎避難所としての使用【図3】
 震災による影響の一つとして、施設が「避難所」として使われたかどうかも尋ねた。その結果、77館(34.5%)の施設が「避難所」として利用されていたことが明らかになった。そのうち31館は指定避難所に指定されていない施設だった。

◎施設のハード面の損壊状況【図4】
 軽微、部分、重大を合わせハード面で何らかの損壊があった施設は86.1%に上った。その中でも特に「重大」との回答が13.0%あった。

◎予算への影響【図5】
 平成23年度の当初予算に影響は「なし」が6割強を占めたものの、「事業不能で事業予算が一部凍結」が12.1%、「削減」が11.2%となるなど、相当の影響がみられた。

◎運営体制への影響【図6】
 運営体制への影響は「なし」が約8割を占めたものの、「人員が削減された」施設が10.8%あるなど、運営への影響は少なからずみられた。

◎施設運営の課題や見直しについて【図7】
 今回の震災以後明らかになった課題や見直すべき点については、「災害時の設備・備品(50.2%)」や「危機管理マニュアル(46.8%)」など、防災設備の整備や災害発生直後の対応に関わる点への関心が高い結果となった。一方で、心の癒しといった文化・芸術の役割やコミュニティ施設としての機能、他館とのネットワークづくりといった点も課題として挙げられている。

◎自主事業への影響【図8】
 自主事業については、回答のあった223館のうち、見直し、削減、逆に増加含め、のべ127館が「影響あり」と回答(「その他」を除く)。特に「自主事業を減らした」とする施設が21.5%あったほか、「自主事業は全てできなくなった」とする施設が7.2%あった。ただし「自主事業を増やした」とする施設も7館(3.1%)あったことは注目に値する。

◎震災後特別事業実施の有無【図9】
 アンケート回収施設全体の33.8%が特別事業を実施していた。

◎特別事業の内容【図10】
 「被災者向け・避難者向けの無料公演・コンサート・展覧会(41.6%)」がトップ。次に「チャリティ公演・コンサート・展覧会(39.3%)」「文化・芸術による震災支援事業・復興活動のための寄附金集め(23.6%)」「各種支援イベントの受け入れ(19.1%)」「学校向けの心のケアのためのアウトリーチ(16.9%)」などが続いた[*4]。

 

図1 貴館のハード面、事業実施面、運営面などについて、震災の影響はありましたか。
(単数回答) (%)

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図2 震災の影響で施設を閉館しましたか。
(単数回答)(%):施設形態別

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図3 貴館を避難所として使用しましたか。
(単数回答)(%)

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図4 貴館の施設について損壊はありましたか。
(単数回答)(%)

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図5 平成23年度事業予算に影響はありましたか。
(複数回答)(%)

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図6 運営体制について影響はありましたか。
(複数回答)(%)

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図7 貴館が今後の公立文化施設運営において不足している、課題である、あるいは見直したいと感じた点はありますか。
(複数回答)(%)

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図8 平成23年度の自主事業について影響はありましたか。
(複数回答)(%)

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図9 貴館は自らが主体となって震災後に特別事業を実施しましたか。
(単数回答)(%)

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図10 貴館が実施した特別事業は何ですか。
(複数回答)(%)

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●調査概要

[調査期間]2011年12月15日~2012年2月3日
[調査対象エリア]青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県
[調査対象]調査対象エリア内にある地方公共団体(県、政令市、市町村、広域行政)計219団体、当該地方公共団体が設置した公立文化施設359館(「ホール(専用ホール、その他ホール)」「美術館」
「練習場・創作工房」およびそれらを併設する「複合施設」)

※調査対象となる公立文化施設の抽出にあたっては、地域創造が平成19年度に実施した悉皆調査「地域の公立文化施設実態調査」で得られた施設リスト、平成22年度に実施した「地域の公立文化施設実態調査」の施設リストをベースに、それ以降に開館した施設を補完。
[調査方法]アンケート郵送配布・郵送回収
[回収率]公立文化施設が発送数395件に対し、回収数が263件(回収率66.6%)。地方公共団体が発送数219件に対し、回収数が143件(回収率は65.3%)。両者の合計は発送数614件に対し、回収数406件(回収率66.1%)
[主な調査内容]公立文化施設:ハード面の被災状況、予算・自主事業への影響、当該館が主体的に実施した特別事業・活動状況とニーズ、課題など/地方公共団体:公立文化施設の被災状況、文化行政への影響、当該団体が主体的に実施した特別事業・活動状況とニーズ、課題など

 

*1 「公の施設」(特別区、一部事務組合等が設置した施設を含む)で、音楽、演劇、美術等の事業が行われている「ホール」「美術館」「練習場・創作工房」およびそれらを含む「複合施設」。

*2 公立文化施設および地方公共団体が主体的に実施した東日本大震災や防災をテーマにした文化事業・活動、被災者・被災館・避難者・支援者・避難所・被災地のために施設内外で実施した文化事業・活動。

*3 平成23年11月30日時点。

*4 ただし本設問は各回答数が少ないため、参考値であることに留意されたい

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