一般社団法人 地域創造

新潟県長岡市 シティホールプラザ「アオーレ長岡」

 JR長岡駅からペデストリアンデッキ(大手スカイデッキ)を辿っていくと、シティホールプラザ「アオーレ長岡」3階へと吸い込まれる。市の本庁舎に加え、5,000人収容のアリーナ、ガラス屋根が覆う広場“ナカドマ(中土間)”、市民交流ホールなどを一体化させた公共施設だ。しかも、延床面積約35,000m2の3分の2を占める市民利用施設の運営を市民組織に委託し、市の市民協働推進室がバックアップする独自の運営形態をとる。同室の早川裕之主査は「当市は政策理念に『市民との協働』を掲げ、推進してきました。まさにそれを象徴する施設です」と胸を張る。

 

 

 アオーレ誕生の発端は、昭和30年代末に建設された厚生会館(2009年3月閉館)の老朽化だった。バスケットコート2面が取れる大フロアや中小3つのホールを擁す同会館は市民のスポーツ・文化活動で日常的に利用されてきた。しかし、老朽化で建て替えが避けられなくなり、しかも、厚生会館が立地するのは駅前。中心市街地活性化の面からも、厚生会館地区の再開発が求められた。加えて、04年に起こった中越大震災で、駅から2kmの地にあった旧市庁舎の耐震性不足が判明。そこで、市は06年3月に策定した都市再生整備計画の中で市役所の移転も含めた厚生会館地区整備事業を検討。その結果、12年4月、厚生会館跡地および隣接する2つの都市公園用地にアオーレが誕生した。

 検討の過程には市民が積極的に関与。ハードはもちろん、運用についても運用懇談会が組織され、アオーレを使った事業のためのイベント検討市民協議会も発足した。また、建設に際して市はアオーレ長岡市民債を発行。5年満期償還の建設債だったが,市民が積極的に購入し、2回の公募で計25億円分を完売した。「アオーレへの関心を高め、市民と共につくっていきたいという思いからの市民債発行でした」(早川主査)。

 さらに、11年末、アオーレの市民利用施設の運営を担う市民組織「市民交流ネットワーク・アオーレ」が立ち上がる。理事会にはまちおこし活動のキーマンたちが名を連ね、日々の業務を担うための常勤有給スタッフが公募で集められた。

 同ネットワークで運営リーダーを務める木口信雄さんは「現在は13人が在籍し、利用受付からイベントの企画まで、市民協働推進室と協力しながら両輪で取り組んでいます。管理するというのではなく、市民や地域の団体からやりたい企画を公募し、実現を支援するような自由度の高い運営を心がけています。そうしたイベントを恒常的に行い、アオーレが市民の交流の場になればと思っています」と話す。

 実際、アオーレでは開館以来、多彩なイベントが行われてきた。取材に訪れた6月29日にも、合併した三島地区で毎年秋に行われている竹灯籠をプレイベントとして紹介する「越後みしま竹あかりinアオーレ長岡」がナカドマで行われていた。そもそもアリーナ以外は、営利目的でなければ施設使用料が無料。同ネットワークでも、ナカドマを使った太極拳やラジオ体操会、あるいはウエディングでの利用など、日常的な利用を市民に提案してきた。加えて、アリーナを活用し、中心市街地でありながらバスケットボールのプロリーグ、bjリーグ公式戦やアイススケートショーなどの大型イベントも計画されている。

 

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上:市松模様が目をひくアオーレのエントランス
下:開放的な広場「ナカドマ」では「越後みしま竹あかり」が開催され、多くの人々で賑わった

 

 ホールを利用したコンサートなどの文化イベントも多数行われ、取材日には長岡市芸術文化振興財団主催の「長岡の音楽家たち ガラコンサート」も開催されていた。同財団の市川直記事業課係長は、「私たちは長岡リリックホールを拠点に芸術文化事業を手がけていますが、今年はアオーレで年末の『千人の第九』など3本の事業を行います。リリックは市中心部から少し離れているので、ここでの事業が誘客に繋がればと期待しています」と語る。

 駅前に立地し、市民による自由度の高い運営という強みをもつアオーレ長岡。どんな賑わい空間をつくり出すのか、今後が楽しみだ。

(ライター・田中健夫)

 

●シティホールプラザ「アオーレ長岡」
アオーレとは“会いましょう”を意味する長岡地域の方言。市民が集まり、さまざまな出会いが生まれる場所になってほしいという願いが込められた同施設は、屋根付き広場「ナカドマ」(2,250㎡)を中心に、長岡市本庁舎が入る東棟、市民交流ホールや市民協働センター、市議会議場などが入る西棟、5,000人収容可能なアリーナ(2,200㎡)棟の3棟が回廊で結ばれ、ガラス張りで内部の活動が見える構造となっている。市民交流ホールは4タイプあり、規模も320㎡、210㎡、160㎡、110㎡と多彩。アリーナ棟にも、多目的室3室と会議室3室がある。
[所在地]新潟県長岡市大手通1-4-10
[開館日]2012年4月1日
[設計者]隈研吾
[構造]鉄筋コンクリート地上4階、地下1階
[敷地面積]14,938㎡
[延床面積]35,485㎡

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