一般社団法人 地域創造

ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」&文化政策幹部セミナー終了報告

 地域創造では、公立文化施設のマネージャークラスおよび文化政策幹部職員を対象とした上級者向け研修事業としてステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」(以下、マネージャーコース)と「文化政策幹部セミナー」(以下、幹部セミナー)を同時開催し、相互交流を図っています。今年度は、マネージャーコースのコーディネーターに作曲家で南城市文化センターシュガーホール元芸術監督の中村透さん、幹部セミナーのコーディネーターに東京大学大学院准教授の小林真理さんをお招きし、10月31日から11月2日まで(幹部セミナーは11月1日、2日)地域創造で開催されました。

 

◎学びあうカリキュラム~マネージャーコース

 1日目、2日目にゲスト講師による事例紹介が行われました。まず登場したのが、2013年7月に開館する大分市の複合文化交流施設「ホルトホール大分」館長に就任した是永幹夫さんです。劇団わらび座の本拠地であり、劇場・宿泊施設・温泉・工芸館・田沢湖ビールなどを一体運営する「たざわ湖芸術村」を主導している是枝さんの講義の内容は、「足元を掘れ、そこに泉がわく」というわらび座の経営哲学や実践、市民ホール・図書館・子育て交流センター・障害者福祉センター・健康プラザ・サテライトキャンパス・産業活性化プラザなどが一体となったホルトホール大分が目指す多機能連携についてなど多岐にわたりました。

 続いて、観客育成について北九州芸術劇場館長の津村卓さん、小さな自治体で地元演奏家と連携した定期ロビーコンサートを行うなど活発な文化事業を展開する沖縄県宜野座村「がらまんホール」の小越友也さんがそれぞれの取り組みを紹介しました。

 興味深かったのは3日目のカリキュラムで、「教育普及型事業とコーディネーター養成」「市民参加の芸術創造」をテーマに、参加者たちが自らの取り組みを発表。例えば、「市民参加イベントはいくつも立ち上がっては消えていった」という長野県伊那文化会館の毛涯伸さんが唯一続いている「第九」演奏会について分析するなど、最新事例から学ぶだけではなく、参加者同士が相互に学びあうカリキュラムになっていました。

 

◎歴史を踏まえた講義~幹部セミナー

 幹部セミナーは参加者の自己紹介からスタート。人口7,000人の村で音楽祭を実施している小学校の元校長先生、東日本大震災により多くの避難者を出している福島県南相馬市の幹部職員、2014年秋に市民ホール開館を控えて市民との関係に悩む責任者、指定管理者として自立を求められている文化センターの館長など、まさにそれは日本の文化政策の縮図そのものでした。

 その後、コーディネーターの小林さんが、大学で1年かけて学ぶ「自治体文化政策の歴史」について駆け足で講義。戦前における文化と国家の関係に始まり、1970年代以降の自治体文化政策の流れについて「文化行政とはホールをつくることではなく、そもそもは行政が新しくなるための方法論だった」と具体的な例や参考図書も交えて内容の濃い講義が行われました。

 また、自治体文化行政の現場から、横浜市で文化政策の専門職を務める文化振興課主任調査員の鬼木和浩さん、元長崎県文化スポーツ振興部長として長崎県美術館、長崎歴史文化博物館の立ち上げに携わり、民間指定管理者との協働を推進してきた藤泉さんの取り組みを聞くなど、充実したカリキュラムとなりました。

 

◎共通ゼミは「劇場法」がテーマ

 両コースの共通ゼミとして行われたのがミニシンポジウム「劇場法とこれからの文化政策」です。まず、政策研究大学院大学教授の垣内恵美子さんが、今年6月に成立したばかりの「劇場法」について解説。議員立法による理念法であり法制化によって義務や権利が付与されるものではないこと、劇場が実演芸術の利用に供するものであるとの定義、運営のための人材の養成および確保について言及していること、国の予算が増える可能性についてなどが話されました。

 それを受けて、地域の公立ホールを運営する立場から、津村さん、足利市民会館館長の阿部栄さん、中村さんがそれぞれの地域の違いを踏まえてコメント。社会的に劇場の役割を位置づけた法律への一定の評価とともに、厳しい財政状況の中で理念を実現することの難しさなどについて意見交換が行われました。

 

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共通ゼミ「グループディスカッション」発表風景

 

●ステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」カリキュラム

◎第1日(10月31日)
・ゼミ1「オリエンテーションとワークショップ」(中村透)
・ゼミ2「にぎわい創出の拠点づくり─地域協働・多機能連携─」(是枝幹夫)
・舞台芸術鑑賞「二兎社公演『こんばんは、父さん』」(世田谷パブリックシアター)

◎第2日(11月1日)
・ゼミ3「地域の中長期的な鑑賞者層の拡大」(津村卓、中村)
・ゼミ4「小さな町の協働実践/支援ボランティアのネットワークづくり、協働の実態と課題」(小越友也)

◎第3日(11月2日)
・ゼミ5「教育普及型事業とコーディネーター養成」(中村)
・ゼミ6「市民参加の芸術創造」(中村)
・ゼミ7「地域創造における公共ホールの役割」(中村)

 

●「文化政策幹部セミナー」カリキュラム

◎第1日(11月1日)
・ゼミ1「自治体文化行政の歴史と展開、文化は役に立つのか①」(小林真理)

◎第2日(11月2日)
・ゼミ2「自治体文化行政の歴史と展開、文化は役に立つのか②」(小林)
・ゼミ3「文化政策専門職の意義と役割」(鬼木和浩)
・ゼミ4「指定管理者と自治体文化政策、自治体の役割」(藤泉)
・ゼミ5「グループ作業と発表」(小林)

 

●共通ゼミ(11月1日)

・ミニシンポジウム「劇場法とこれからの文化政策」(パネリスト:阿部栄、垣内恵美子、津村、中村/進行:小林)
・グループディスカッション(ファシリテーター:阿部、津村/全体進行:中村、小林)

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