一般社団法人 地域創造

ステージラボ兵庫セッション報告

ステージラボ兵庫セッション報告
2013年1月29日~2月1日

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写真
左上:仲道郁代さんの「音楽鑑賞プログラム」を体験(地域交流プログラムコース)
右上:中川賢一さんのピアノワークショップ(ホール入門コース)
左下:マイケル・スペンサーさんのワークショップ(共通プログラム)
右下:林伸光さんの講義(音楽企画制作コース)

 ステージラボ兵庫セッションの会場となったのは、佐渡裕さんが芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターです。専属のPAC オーケストラを有し、コンサートを中心にオペラ、バレエなどが上演される2,001席の大ホール、演劇中心の800席の中ホール、417席の小ホールと豊富な練習場を備えた関西クラシックの殿堂とも言える施設です。今回のラボは、その特徴から3コースともクラシック音楽を中心とした内容となりました。
  コーディネーターを務めたのは、長年、地域創造で公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)を担当し現在はアフィニス文化財団事業部部長の小澤櫻作さん(ホール入門コース)、クラシック音楽の普及にも尽力されている人気ピアニストの仲道郁代さん(自主事業Ⅰ〈地域交流プログラム〉コース)、共著で「チケットを売り切る劇場」を発表した兵庫県立芸術文化センター・ゼネラルマネージャー兼事業部長の林伸光さん(自主事業Ⅱ〈音楽企画制作〉コース)です。

 

●一流の演奏家によるワークショップ
 今回の最大の特徴は、国際的なコンサートを支えているホール技術陣の全面協力を得て、ベストに調整されたフルコンサート・グランドピアノ3台を使い、本番に劣らない環境で一流の演奏家によるワークショップが間近に堪能できたことです。
  地域交流プログラムコースでは、仲道さん自らが講師となり、「音が見えるようになってほしい」と、フラフープやボール、絵などを使った音のイメージトレーニングからスタート。受講生のリクエストに応えて“お腹のすいたテンションの低い”子犬や“怒った”子犬のワルツなどを即興で弾き分け、音を見ること、鑑賞することの楽しさを具体的に伝授。最後は音楽修辞学についてまで話が及ぶなど、鑑賞プログラムの奥の深さを垣間見たワークショップでした。また、仲道さんと長年にわたってパートナーを組んでいる調律師の外山洋司さんからは、ピアノの構造から、入札による業者選定の問題点、特殊奏法への対応、消耗品交換、普段の掃除の仕方など質疑応答を交えて、ホール職員がどのようにピアノと付き合えば良いかの実務に則した講義が行われました。
  ホール入門コースでは、おんかつを代表するアーティストのひとり、ピアニストで指揮者の中川賢一さんをフィーチャー。これまで培ってきたノウハウを集大成し、計7時間のゼミで、ひとりのアーティストからクラシック音楽を照射するというカリキュラムにチャレンジしました。音楽でのコミュニケーションをテーマにしたワークショップでは、学校でのアウトリーチで行っているプログラムを体験。受講生の絵を見ながらの即興演奏、演奏を聴きながらのドローイングを行いました。また、その絵を映像として映し出し、ダンスのワークショップを行った東野祥子さんとのコラボレーションを披露。圧巻だったのは、「団結した人民は決して敗れない」をテーマにした36 の変奏曲「不屈の民」のソロ演奏です。事前の実演付アナリーゼで主題がどのように展開していくかを学んだ受講生は、55分の大曲に心を振るわせながら聞き入りました。

 

●兵庫県立芸術文化センターのノウハウを公開
 音楽企画制作コースでは、「売れる仕組みを考える」をテーマに、林さんの幅広い人脈を活かして新聞社の音楽記者やチケット販売のプロなどを講師に迎え、座学中心のカリキュラムが組まれました。大規模なコンサートのチケットセールス・プロモーションを手掛け、「コンサートの成功は満席にすること」と言う中井孝栄さん(株式会社インタースペース代表取締役)は、「チケッティング作業と営業活動」をテーマに講義を行いました。「夜公演の集客率が減少している中で、ターゲットのニーズに合った曜日と開演時間の設定が公演の成否を大きく左右する」「適正なチケット価格の設定がすべてに繋がる」「団体販売とは割引によってお客様の背中を押すこと」「プレイガイドは販売企画を提案してもらうなど、うまく活用しよう」など、ショービジネス業界の最前線ならではの話が続きました。
  また、兵庫県立芸術文化センターの取り組みから学ぶ一環として、全コースでPAC オーケストラが兵庫県内の中学1年生をホールに招待する「わくわくオーケストラ教室」の見学が行われました。オーケストラのバックに映し出された巨大な映像で物語や作曲家のエピソードを紹介しながらの演奏や、ひとつひとつの楽器を丁寧に紹介するなど、教育的で楽しめるパッケージになっていて、みんなとても集中していました。今年度は393校53,121人を招待する予定とのことで、ラボの会期中にも次々と団体バスに乗った中学生が訪れていました。

  このほか、共通プログラムでは、元ロンドン交響楽団のヴァイオリニストで、現在は日本でもエデュケーターとして活躍するマイケル・スペンサーさんによる基調講演とワークショップ、コーディネーターによる「公共ホールのこれからを考える」シンポジウムも行われるなど、充実したプログラムとなりました。

 

兵庫セッション プログラム表
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●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
小澤櫻作(公益財団法人アフィニス文化財団 事業部部長)
◎自主事業Ⅰ(地域交流プログラム)コース
仲道郁代(ピアニスト)
◎自主事業Ⅱ(音楽企画制作)コース
林伸光(兵庫県立芸術文化センター ゼネラルマネージャー兼事業部長)

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