一般社団法人 地域創造

地域創造フェスティバル2013報告

地域創造フェスティバル2013報告
7月30日~8月1日

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写真
左上:調査研究事業シンポジウム「地域と文化─災後の公立文化施設のあり方を巡って」
右上:ダン活プレゼンテーション③ 「ダン活のススメ」(鈴木ユキオさんによるワークショップ)
左下:おんかつ支援アーティストプレゼンテーション(BLACK BOTTOM BRASSBAND)
右下:おんかつ支援アーティストプレゼンテーション(早稲田桜子さん)

 

 今年で6回目となる「地域創造フェスティバル2013」が、昨年リニューアルオープンした東京芸術劇場を会場に開催されました。このフェスティバルは、地域創造のおんかつ支援アーティストなどによるプレゼンテーションやシンポジウム、セミナーにより地域創造の事業を広く紹介し、併せて公共ホール職員等のネットワークづくりの場となることを目的としています。今回は、クラシック音楽やコンテンポラリーダンスのアーティスト59組、全国から参加者221人が集い、活発な交流を行いました。ご尽力いただきました関係者の皆さまには、心からお礼申し上げます。

 

●調査研究事業シンポジウム「災後の公立文化施設のあり方をめぐって」
 地域創造フェスティバルでは、最新の調査研究の成果を広く紹介するシンポジウムを開催しています。今回は、平成24・25年度の2カ年にわたって取り組んでいる「災後における地域の公立文化施設の役割に関する調査研究」の中間報告として、調査研究委員の吉見俊哉(東京大学大学院教授)、坂田裕一(NPO法人いわてアートサポートセンター理事長)、大谷燠(NPO法人DANCE BOX代表)、中村透(南城市文化センターシュガーホール芸術監督)の各氏から多角的な視点で提言が行われました(モデレーターは株式会社ニッセイ基礎研究所主席研究員・芸術文化プロジェクト室長の吉本光宏さん)。
  東日本大震災当時、盛岡中央公民館館長を務めていた坂田さんからは、中央公民館で行った「3.11絵本プロジェクトいわて」をはじめ、岩手県文化振興基金を1億2千万円取り崩した県による民俗芸能などの支援、関連団体の連携により立ち上げた「いわて文化支援ネットワーク」の活動など、具体的な取り組みが紹介されました。また、阪神淡路大震災を経験し、被災地である神戸市長田区で公設民営劇場DANCE BOXを運営している大谷さんは、被災地の民俗芸能などを受け入れ、地域住民の協力により公演を実現。特に興味深かったのは、災時に備えた地域の多様な市民活動団体とのネットワークづくりに着手していることで、「半径1キロの範囲内でジャンルを越えたネットワークを構築しているし、近隣のアーティストが災害時にできることをデータとして蓄積している」と報告されていました。
  こうした具体的な事例紹介に対して、吉見さんからは、災害によって失われる地域資源について、デジタル化社会における「アーカイブ」の可能性を踏まえた提言が行われました。「“地域の記憶拠点”である図書館にもホールにも博物館にも、どこにも属さない膨大な文化資産があり、デジタル化によってこうした文化資源が活用できる可能性がある。大量生産、大量消費の世界から、文化や知識もリサイクルされる知識循環型社会に向けて、まずは文化ストックを調査して把握することが重要」と提言されていました。また中村さんからは、自然災害ではなく戦争によって多くのものを喪失した沖縄を例に、「公立文化施設は心の問題にどう答えていくかが常に問われている。市民組織による制作会議を立ち上げて市民ミュージカルを創作しているが、新たなコンテクストによりいろいろな人が出会うことで甦るものもあると考えている」と話されていました。
  災後という非常事態から公立文化施設のあり方を照射するという今回のシンポジウムは、日常業務に追われている参加者には改めてその存在意義について考える機会になったのではないでしょうか。

 

●アーティストやコーディネーターと交流
 地域創造フェスティバルの最大の魅力は、アーティストたちによる多彩なプレゼンテーションやワークショップです。今年はおんかつ支援登録アーティスト53組によるプレゼンテーション(各25分)のほか、ダン活登録アーティストの作品の上演や支援登録アーティストによるワークショップが行われました。また、ステージラボ兵庫セッションで創作されたダンサーの東野祥子さんとピアニストの中川賢一さんによるコラボレーション作品も披露されました。
  おんかつプレゼンでは、昨年より持ち時間が10分延長されたこともあり、アーティスト同士のコラボレーションも多く、チェロと琴(海野幹雄、Dual KOTO×KOTO)、フルートのデュオ(永井由比、吉岡次郎)など工夫したプログラムになりました。
  また、おんかつの継続事例を知っていただくためのシンポジウムも開催され、ピアニストの高橋多佳子さんと平成18年度におんかつに参加して以来、事業を継続している北上市文化交流センター・さくらホールの千葉真弓さんからの報告が行われました。千葉さんは、「継続していくためにはアイデア先行ではなく、本物の力を信じて正統派のクラシック音楽をやってもらうべきだというのが今の心境。それから広報も重要。テレビ、ラジオ、Facebook、新聞、雑誌、有料広告、ミニ解説、アーティストからのメッセージなど、何かで引っかかって来てもらえるよう広報の重ね塗りをしている」と話していました。
  ダン活では、全コーディネーターが参加し、コンテンポラリーダンスはわかりづらいという参加者の声に応えて相談会を連日開催するなど、地域創造の事業を身近に感じていただけるようなプログラムを実施しました。

 

地域創造フェスティバル2013 プログラム(会場:東京芸術劇場)
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