一般社団法人 地域創造

北海道深川市 深川市文化交流ホールみ・らい開館10周年記念事業 「音楽物語 わが街 深川」

函館本線で札幌から旭川に向かう途中、人口約2万2千人の深川市に深川市文化交流ホールみ・らいがある。11月30日、その開館10周年を記念する音楽物語『わが街 深川』が披露された。
  この作品は、深川の街と住民に取材し、市民自身が歌い演じる“街の履歴書”とも言えるもの。オオホナイ(アイヌ語で深い川の意)という地名の由来から、神話・伝説、屯田兵による開拓時代、果てはB級グルメのそばめし誕生譚まで、生き物のように変わり続ける街の姿と、この土地に生まれ、あるいは移住した深川人の人生の瞬間が、30を超えるオリジナル曲とともに描かれている。出演したのは、ソリストを務めた地元の声楽家3人、深川と近隣地域から集まった7歳から80歳代まで64人の合唱団、ナレーションと演劇で協力した地元の劇団員16人。また、学内行事として30年にわたりオリジナルミュージカルを創作してきた地元拓殖大学北海道短期大学の学生たちも参加し、作品を盛り上げていた。満員の客席は、目の前で展開する自分たちの物語に、劇中歌の歌詞のように「GOGOGO、深川」と心からのエールを送っていた。

Photo13.jpg
Photo14.jpg

写真提供:深川市舞台芸術交流協会

 み・らいは2004年、老朽化していた市民会館の建て替えによって誕生した。01年、深川市では新市立病院建設用地確保のために旧市民会館の取り壊しを決定。新たな会館について地元文化団体関係者に意見を求め、有志による新市民会館建設プランづくり市民協議会が発足。06年から協議会を前身とするNPO法人深川市舞台芸術交流協会が指定管理者として運営してきた。
  おやこ劇場の運営委員長として協議会に参加し、12年からは館長を務める三ツ井育子さんは、「深川は元々、近隣も含めると合唱団と劇団が6つずつあるくらい文化芸術に関心の高い市民が多い。そういう方々にこのホールで喜びや生きがいを感じていただきたいと考えています。加えて子どもたちに生の文化芸術を体験してもらいたいという思いがあり、アウトリーチ事業と市民参加事業をホールの2本柱にしてきました。10周年ではそういう皆さんと一緒にオリジナルな舞台をつくりたいと思いました」と言う。
  プロダクションは“地産”にこだわったが、参加者を導くクリエーターは外部から招聘した。脚本・演出・プロデュースの能祖將夫、作曲・長生淳、指揮・中川賢一、ピアノ・白石光隆など。
  「実は地域創造が札幌で行ったワークショップの講師として中川さんと出会い、その手腕に感動して10周年の相談をしました。それが今回のチームに繋がりました」(三ツ井)
  彼らには、09年、大分県豊後大野市総合文化センター・エイトピアおおの10周年に、市民合唱と神楽を融合させた神楽オペラ『SHINWA~アマテラスとスサノオ』を成功させた実績があった。とんとん拍子に話が進み、13年5月から複数回、計15日にわたって能祖が深川をリサーチのため訪問。5月から稽古を開始し、クリエーターが深川に入る14回の稽古に加え、倍以上の自主稽古が行われた。
  洋菓子店を営みながら地元劇団に所属し、劇中でナレーターを務め、本人役として洋菓子店を興した父のエピソードも語った佐藤自真(おずま)さんは、「これまで接点のなかった合唱団の方々との創作は大きなチャレンジでしたが、舞台上で未知の化学反応が起きていた。深川の底力を感じたし、この先の活動にも繋がる経験でした。それとお客様にウケたのが何より嬉しかった」と笑う。
  詩人でもあり、市民が自分の人生を語る朗読劇『My life My stage』などでも人々の記憶に向き合ってきた能祖は、「三ツ井館長から『深川らしい作品を』と依頼された時に、地誌や風土をリサーチするだけでは何かが足りないと感じました。悩んだ末たどり着いたのが『“らしさ”とは“人”ではないか』ということ。そこで『人生で心に残っていること』を募集し、市民の記憶や思い出を集めました。それが今回の作品の芯になっています。誰もがもっている小さなエピソードにこそ力があるのだと思います」と振り返る。
  市民との創作の礎となり、街とホールと人々の人生を照らすこの作品が、今後も上演を重ねることを願ってやまない。

(大堀久美子)

●深川市文化交流ホールみ・らい開館10周年記念事業 音楽物語『わが街 深川』
[主催]NPO法人深川市舞台芸術交流協会/深川市/深川市教育委員会
[共催]公益財団法人北海道文化財団
[日程]2014年11月30日
[会場]深川市文化交流ホールみ・らい

●深川市文化交流ホールみ・らい
[開館年]2004年
[指定管理者]NPO法人深川市舞台芸術交流協会(当初は直営で、2006年から移行)
[施設概要]ホール(691席)、ワークショップルーム、創作活動室2室、談話室2室、展示などにも使えるホワイエなど
[活動内容]深川市舞台芸術交流協会の指定管理以降、市民を対象にした参加事業を数多く展開。小学校を対象にしたアウトリーチ事業、創作市民ミュージカル『夢を追いかける瞳』、近隣合唱団とデューク・エイセスが共演する合唱祭、周辺の民間指定管理公共ホールが連携した市民劇の演劇祭「空知演劇フェスティバル」への参加など。市民参加をテーマにした開館10周年記念事業にはほかに「和太鼓松村組」公演(市内のイルム太鼓、多度志太鼓と共演)、「子どもまつり.人形・音楽・遊びの広場.」などがあり、3月のファイナルを飾る「吹奏楽フェスティバル」では市内5つの小・中・高校の吹奏楽部が集合し、BLACK BOTTOM BRASS BANDとのジョイントコンサートも行う。

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告書地域創造レター地域創造レターバックナンバー2014年度地域創造レター1月号-No.237北海道深川市 深川市文化交流ホールみ・らい開館10周年記念事業 「音楽物語 わが街 深川」