一般社団法人 地域創造

「ステージラボ 公立ホール・劇場 マネージャーコース」「文化政策幹部セミナー」 報告

ステージラボ公立ホール・劇場マネージャーコース
2016年10月12日~14日

文化政策幹部セミナー
2016年10月12日、13日

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写真
左:NPO法人アートフル・アクションで行った公立ホール・劇場マネージャーコースゼミ7の様子(講師:アサダワタルさん)
右:文化政策幹部セミナーゼミ3の様子(講師:甲斐賢治さん)

 地域創造では公立文化施設のマネージャークラスおよび自治体の文化政策幹部職員を対象とした研修事業としてステージラボ「公立ホール・劇場 マネージャーコース」(以下、マネージャーコース)と「文化政策幹部セミナー」(以下、幹部セミナー)を同時開催し、文化施設と行政組織の相互交流を図っています。今年度は、ニッセイ基礎研究所の大澤寅雄さん(マネージャーコース)と鳥取大学教授の野田邦弘さん(幹部セミナー)をコーディネーターに迎え、地域創造会議室を会場に開催されました。
  近年、公立文化施設は劇場法で謳われているように「人々が共に生きる絆を形成するための地域の文化拠点」となるべく、これまで以上に地域の住民や文化活動との連携が求められています。そうした観点を踏まえ、今回は、「地域と人をつなぐ芸術文化活動」を両コースの共通テーマとして設定。平成24・25年度調査研究で提唱した「文化的コモンズ」(報告書は当財団ウェブサイトからダウンロード可能 https://www.jafra.or.jp/library/report/24-25/index.html)の考え方を踏まえ、誰もが文化的な営みに参加できる地域のあり方について活発な議論が行われました。

 

●市民の生活と向き合う~マネージャーコース
 マネージャーコースではコーディネーターの大澤さんが、地域の文化活動を自然界の生態系のサイクルに例え、「地域の文化活動を持続可能にしていくためには、公立文化施設が“ビオトープ”のようにそれぞれの活動を循環させていく場になる必要があるのではないか」と問題提起。これを受けて、各ゼミでは地域の文化活動の実践者から事例紹介が行われました。
  那覇市のNPO法人地域サポートわかさの事務局長であり若狭公民館の館長である宮城潤さんは、地域のさまざまな社会的課題(経済的貧困、文化的貧困など)へ向き合うにあたり、「発信するよりも受信する感覚が必要」という観点から、市民からの持ち込み企画を連携事業として実施している取り組みが紹介されました。「市民の切実な思いを汲み取る当事者意識を地域の施設はもつ必要があるのではないか」と宮城さん。
  また、NPO法人STスポット横浜理事長の小川智紀さんは、横浜市において体系的に取り組んでいる“横浜市芸術文化教育プラットフォーム”について紹介。「広域にわたる市内小学校へアウトリーチを実施していくことは、経済的格差等を背景とした文化的格差を埋めていく“文化の最低保障”を担保することだ」と言い、中間支援組織としてのこうした考え方が持続的な活動に繋がっていると指摘されていました。
  マネージャーコースの最終日は、小金井市を拠点とするNPO法人アートフル・アクションへ会場を移してゼミを開催。事務局長の宮下美穂さんと、昨年度から同NPOのプロジェクトをディレクションしているアーティストのアサダワタルさんから、市民や行政、アーティストが協働して実施したプロジェクトの背景や構造についてお話をうかがいました。
  アサダさんは自らを“日常編集家”と名乗り、「表現をきっかけにコミュニティを編み直し、立場の違いや互いの価値を認め合う」ためのさまざまな手法を考案してきたアーティストです。「公立ホールは、市民の表現活動のプロセスを発表する場として位置づけることができる。つまり、公共ホールに地域の価値を編集したものを集めることで、再びそれを地域に拡散していくことができる」とアサダさん。こうした公立ホールをメディアとしてとらえる考え方は「文化的コモンズ」に通じるものであり、公立ホールのコーディネート力について再認識させられました。
  また、宮下さんも自分たちの活動を「誰が主体であるわけでもなく、中心をもたない場であることによって、市民のそれぞれの日常的な背景が活かされていくもの」と説明。施設の枠組みや制度にとらわれないそのスタンスは、ホール等で働く参加者にとって刺激的なものだったのではないでしょうか。

 

●政策としてのアート~幹部セミナー
 幹部セミナーではコーディネーターの野田さんが、まず、地方文化行政の変遷と、文化が都市と市民の創造性を喚起させる理論的な根拠、社会政策として活用されている現況について概説。それを受けて、今年初めて開催された「さいたまトリエンナーレ」のディレクターを務める芹沢高志さんを講師に迎え、アートプロジェクトの現場から見たアートの公共性について多角的な議論が行われました。芹沢さんはアートが行政のロジックのみで理解されることに警鐘を鳴らし、「アートは物ではない。人の営みであり、プロセスとして理解することが大事。行政のロジックでは課題を解決するものとして理解されがちだが、そうではなくて問題を提起するものとしてとらえるべきではないか」と本質的な問いかけをされていました。
  次に、せんだいメディアテークの甲斐賢治さんが、震災後に“市民力”を育む重要性が増していった状況を踏まえて、施設のコンセプトを説明されました。「サービスを提供する側とされる側という立場で固定化せず、常に反転させていく」ことで、市民を支援することから市民と協働することに舵を切っていく実践についてお話しいただきました。

 両コース共通プログラムでは、地域創造理事であり、劇作家・演出家の平田オリザさんと横浜市文化観光局文化振興課主任調査員の鬼木和浩さんが登壇。平田さんは、最新著作のタイトルにもなっている「下り坂をそろそろと下る」をテーマに、少子高齢化社会を迎える日本において芸術文化を活用した教育改革の意義などについてお話されました。また、鬼木さんは、「自治体文化政策を徹底解剖する」と題して、自治体組織の構造やロジックをわかりやすく解説。共通プログラムを受けて、両コースの参加者がそれぞれの現場で抱える課題を相互にプレゼンテーションし、それに対して意見交換しながら議論を深めていくグループワークも行われました。

 

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左:共通プログラム1の様子(講師:平田オリザさん)
右:共通プログラム グループディスカッションの様子

ステージラボ 公立ホール・劇場 マネージャーコース/文化政策幹部セミナー スケジュール
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