一般社団法人 地域創造

制作基礎知識シリーズVol.42 地域振興におけるクラウドファンディングの可能性

講師 山名尚志
(株式会社文化科学研究所代表)

 

 クラウドファンディングとは、インターネットを利用して、世界中の人々から直接資金を集める仕掛けのこと。今、このクラウドファンディングを地域振興に利用しようという動きが次第に広がりつつある。
 今回は、このクラウドファンディングの仕組みと、その地域振興への応用のあり方について説明する。

 

クラウドファンディングとは

 クラウドファンディングは、通常、クラウドファンディングの事業者が展開するウェブサイトを通じて行われる。資金を集めたい側は、資金調達をしているプロジェクトや事業などをそこに登録。資金を出す側は、サイト上で好きな相手先を見つけ、クレジットカード支払や他の電子決済手段を用いて資金を出す、という流れになる。
 集め方としては、予め決まった金額を設定し、期限内(60〜90日程度が多い)にそれを上回る金額が集まらなかったらファンディング自体がなくなる(出した資金は出し手側に全額戻る)オール・オア・ナッシング型と、集まらなくてもファンディングおよび事業自体は実施されるオール・イン型の2つの方式がある。後者については、クラウドファンディングで十分な金額が集まらなくても事業実施ができるという事前の保障が必要となる。
 クラウドファンディングのサービスには大きく2つの類型がある。第一の類型は、未上場株式の購入をするもの(株式型)、ファンドをつくって投資するもの(ファンド型)、貸金業法に基づき融資として行うもの(貸付型)など、小口の金融商品をネットで提供するサービスである。この類型のクラウドファンディングを行う事業者は、金融商品取引法に基づいた業者登録が必要となる。
 第二の類型は、金融商品としての利益追求を目的としないもので、基本的に全くリターンがない寄付型と、サービスや商品などのリターンがある購入型の2つに分けられる。例えば、震災で損傷した建造物の復興資金を集めるためのクラウドファンディングを行い、寄付者については、名前を復興した建造物の銘板に記載するだけ、というのは寄付型。同じ復興活動でも、災害で発生した流木を利用したグッズの開発プロジェクトを行い、支援者には出来上がったグッズをリターンとして渡すというのは購入型となる。
 ただし、上記の例でもわかるように、寄付型と購入型との間に明確な差があるわけではない。実際には、リターンが寄付金額に見合った商品やサービスに「見えるか」どうかでのグラディエーションがあるだけと捉えたほうがわかりやすい。中には寄付金の税額控除がある案件もあるが、それも寄付型のクラウドファンディング事業者だから税額控除があり、購入型の事業者だからない、ということではなく、その事業者を通じてクラウドファンディングで実際に資金調達をしている事業者が、特定公益増進法人や認定NPO法人、自治体など、税額控除の対象となる団体であるかどうかに左右される。ちなみに、こうした第二の類型のクラウドファンディングについては、第一の類型とは異なり、サイトを運営する事業者を規制する特別の法律はない。

 

地域振興とクラウドファンディング

 地域振興、特に公立文化施設が関係するような地域貢献事業という観点から見た場合、中心となるのは、上記でみた第二の類型、寄付もしくは購入型のクラウドファンディングである。例えば、「地域でアートフェスティバルを実施し、その資金をノベルティ付きの特別チケットの予約販売で賄いたい」といったプロジェクトであれば、購入型での実施となる。あるいは、「地域の歴史的建造物の保全費用を集めるのだが、参加者には、礼状を出し、建造物の銘板に名前を記載するだけで、特に何か物品を渡すわけではない」といったプロジェクトであれば寄付型ということになる。実際、日本におけるクラウドファンディングの大手である「Readyfor」や「CAMPFIRE」では、こうしたプロジェクトが多く実施されている。また、「FAAVO」という地域振興プロジェクトにのみ焦点を絞ったクラウドファンディングサイトも運営されている。
 では、どうすれば地域振興のプロジェクトに必要な資金を集められるのだろうか。ともかく事業者のウェブサイトに登録して待っていればいいのだろうか。残念ながら、物事はそれほど甘くはない。クラウドファンディングの事業者のサイトには、そのプロジェクトに共感した人がお金を支払うためのシステムは実装されているものの、サイトに掲載しただけで、購入や寄付をしたい人が山のように集まる広報や宣伝の力をもっているわけではないからだ。実際のところ、広報については、主役はサイト側ではなく、あくまでお金を集めようとしている登録者側にある。ここでいかに自助努力ができるかで成否が決まってくる。
 もちろん、サイトが全く宣伝の役に立たないわけではない。一般に、寄付金集めを成功させるためには、まずは知人・関係者で初めの3分の1を確保し、次に知人の知人で3分の1、最後に全く知らない人で残りの3分の1を集めるのがいいとされている。クラウドファンディングでの資金調達も同様であり、最初の3分の1は、ほとんどの場合、自力で集める必要がある。
 サイトが宣伝に役立つようになるのは次の3分の1からである。クラウドファンディングのサイトには、プロジェクトを単に紹介するだけでなく、どうプロジェクトが進んでいるのか、誰が協力してくれているのかを、SNS等と連携して、リアルタイムに発信する機能が備えられている。また、既にプロジェクトに参加した人の生の声を伝えていくコーナーもある。こうした機能を最大限に活用することで、参加してもらった知人や関係者が、さらにその知人や関係者に効率的に「協力してほしい」というメッセージを伝えることができる。こうした動きがさらに力強くなっていけば、最後の3分の1、全く知らない人までも巻き込んでいくことが可能になる。
 とはいえ、こうしたサイトのシステムを活用し、多くの人を巻き込んでいく役目を負っているのは、あくまでプロジェクトの登録者側だ。サイト側にもキュレーターと呼ばれるお世話係がいて資金調達の成功に繋がるプロジェクトの立て方や運営の仕方を教えてはくれる。しかし、主役はどこまでいっても登録者側。登録者が、どこまで人々の共感を得られるプロジェクトをつくれるか。その後、どれだけ熱意をもって周囲の人を巻き込めるか。この努力こそがファンディングの成功の決め手となる。

 

自治体施設とクラウドファンディング

 クラウドファンディングの主体となるのは、地域のNPOや企業だけではない。2014年、内閣府では、地方創生を図る一助として「ふるさと投資連絡会議」を立ち上げ、全国の自治体にクラウドファンディングの活用を呼びかけた。この結果、今では、クラウドファンディングを検討する自治体も増えてきている。自治体が地域の団体のクラウドファンディング利用を支援・後援している場合もあるし、自治体自体が、ふるさと納税の枠組みと連携させて、主体となっている場合もある。
 クラウドファンディングの原型は、1997年、イギリスのロックバンドのファンたちが、そのバンドの全米ツアーの資金をファン自らの手でインターネットを通じて集めたことに溯るとされる。その後も、各種の文化イベントや音楽、演劇、映画、アニメなど、文化関連のファンディングの成功例は極めて多い。文化芸術活動は、人々の共感を集めやすいという点で、そもそもクラウドファンディング向けなのである。
 このことを踏まえるなら、自治体の文化セクション、あるいは地域の公立文化施設は、クラウドファンディングによる地域振興のひとつの主役ともなりうる。幅広い人々から大きな共感を獲得し、地域のみならず、全国、世界を巻き込む事業の実施手段として、クラウドファンディングを積極的に検討してみてはいかがだろうか。

◎Readyfor(レディーフォー)
https://readyfor.jp/

◎CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
https://camp-fire.jp/

◎FAAVO(ファーボ)
https://faavo.jp/

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