一般社団法人 地域創造

令和元(2019)年度「公共ホール音楽活性化事業」「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム

p2_1.jpg
左上:糸賀修平さんによるアウトリーチ(奥出雲町立三成小学校)
右上:NOK Saxophone Quartetによるアウトリーチ(大館市立花岡小学校)
左下:アーバンサクソフォンカルテットによるアウトリーチ(氷見市教育委員会)
右下:メルヴィル弦楽四重奏団によるアウトリーチ(能代市立浅内小学校)

 地域創造では、地域においてクラシック音楽を身近なものとするため、公立ホールやアーティストと共にさまざまな事業を展開しています。その中の柱が、地域住民との交流プログラムやホールコンサートから成る「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」と、都道府県との共催により2カ年事業として実施している「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業」です。いずれも秋から本格的な事業が始まりました。

令和元(2019)年度おんかつ本格スタート~氷見市、奥出雲町

 今年度のおんかつでは、2018・2019年度登録アーティスト8組が9月から来年2月まで全国12地域で事業を展開します(発展継続事業3地域を含む)。アウトリーチ事業への認識の広まりとともに、指定管理者などホールの担い手も多様化しています。今号では教育委員会が中心となった富山県氷見市と島根県奥出雲町の模様をご紹介します。
 氷見市は富山湾西岸に位置する人口約4万7,000人の市です。2015年に氷見市民会館が閉館し、現在、新文化施設建設へ向けて準備を進めています。今回の事業は、多くの方々に利用いただける施設とするための土壌づくりとして教育委員会が9月26日~28日に実施したもので、アーバンサクソフォンカルテットが健康交流施設「いきいき元気館」附属ホールでのコンサートと、大人向けアウトリーチを行いました。

 アウトリーチ事業に対する共通認識を育むことを目的とし、今回の担当である氷見市教育委員会の後藤和泉さんが特に思い入れをもって実施したのが、同僚である教育委員会職員や、氷見商工会議所の役職員を対象としたプログラムでした。会場となった教育委員会執務室では、動きながら演奏できるサクソフォン四重奏ならではの機動性を活かし、地元では誰もがなじみのある獅子舞のリズムやメロディーをアレンジして登場し、その華やかな音色や演奏する人数によって変幻自在に変わる音楽性を楽しめるプログラムを展開。市長や課内の同僚など、これまでアウトリーチを体験したことのない人々にその意義を伝える貴重な時間となりました。間近で迫力ある演奏にふれた教育総務課長の天坂正さんは、「本格的な音楽が生活の一部となる『おんかつ』の素晴らしさを実感しました」とコメント。後藤さんは、「おんかつがなければ教育委員会や商工会議所でのアクティビティはできませんでした。継続するためには実施する側の理解を深めることが不可欠で、市内での音楽アウトリーチ活動がより一層拡がっていく推進力になればと思っています」と期待を滲ませていました。

 奥出雲町は島根県の山間部で「ヤマタノオロチ」神話の舞台と言われているところです。奥出雲町は2005年に仁多町と横田町の合併により誕生。おんかつには教育委員会傘下の奥出雲町文化協会が子どもたちに本物の音楽体験を届けたいと応募しました。10月3日~5日にその奥出雲町を訪問したのが、旧仁多町出身のテノール歌手、糸賀修平さんです。母校の小・中・高校にアウトリーチで“凱旋”することになった糸賀さんは、並々ならぬ思い入れでこれまでのプログラムを一新。ご自身が海外で役をつかみ取った思い入れの強いオペラ『リゴレット』からアリア「女心の歌」など夢を伝える楽曲で構成。「好きなことを見つけたら、目標を立てて突き進み続けることが大切」と、自身の経験を交えて後輩たちに語りかけていました。「里帰りコンサート」と銘打って横田コミュニティセンターで行われた最終日の公演では、糸賀さんの友人や学生時代の先生なども来場。同級生で友人でもある教育長の塔村俊介さんは、「ただコンサートをやるだけではないこの事業の大切さを実感しました。少しでも子どもたちの刺激やきっかけとなるものが生まれれば」と振り返っていました。

2年目のアウトリーチフォーラム事業 秋田セッション

 アウトリーチフォーラム事業は、若手演奏家にアウトリーチプログラムを開発する機会を提供するとともに、アウトリーチおよび親しみやすいコンサートの普及を図ることを目的としており、平成30(2018)・31(2019)年度は秋田県との共催で実施しています。2年目にあたる今年度は、サクソフォン四重奏の「NOK Saxophone Quartet」と弦楽四重奏の「メルヴィル弦楽四重奏団」が派遣アーティストとなり、アウトリーチプログラムを開発するための宿泊研修を経て、9月から11月にかけて県内4市町(大館市、能代市、横手市、羽後町)での実践(小学校等でのアウトリーチとホールでのコンサート)、11月30日に2組のアーティストが顔を揃えたガラコンサート(→P5参照)を予定しています。

 現在、秋田県と秋田市は、秋田県民会館および秋田市文化会館の老朽化を受け、両施設の機能を集約した県・市連携文化施設を共同で整備しています。千秋公園に隣接し、県立美術館等の文化施設が集積する中心市街地に2021年度に開館する予定で、今回の事業は新施設の開館までの市町村とのネットワークづくりや人材育成を目的として実施されています。
 今年度初めての市町村公演は、9月25日~28日に大館市と能代市で実施されました。大館市を訪問したNOK Saxophone Quartetの福田彩乃さんは、「子どもたちに対してもメンバーに対しても、相手を尊重して言葉を選ばないと自分の思いは伝わらないことを実感しました」とコメント。最終日にはほくしか鹿鳴ホール(大館市民文化会館)でコンサートが行われ、終演後、サインを求める子どもたちの列ができるほど賑わっていました。文化会館の担当者の山内知生さんは、「この事業を通して新しい人脈を築けただけでも大きな収穫。今後、県や他の市町ともタッグを組んで、単に公演のプロモーションに終始するアウトリーチではなく、アーティストと一緒にプログラムを組み上げるようなものを目指したい」と手応えを感じていました。

 能代市では、メルヴィル弦楽四重奏団が小学校と特別支援学校でさまざまな角度から弦楽器の魅力を伝えるアウトリーチプログラムを試みました。最終日に能代市文化会館で行われたコンサートは全編弦楽四重奏のオリジナル曲という挑戦的な内容でしたが、アウトリーチ先の子どもたちも訪れるなど、和やかな雰囲気となりました。文化会館の担当者の佐藤邦彦さんは、「アウトリーチでは振り返りを行うごとに内容がブラッシュアップされていく様子を見ることができました。コンサートでは、普段クラシックを聴く機会のない市民の皆様からも温かい声をいただき、職員冥利に尽きる公演でした」と振り返っていました。

 秋田セッションの市町村公演は今後も続きます。事業に興味をお持ちの方は、ぜひ一度視察をしていただければと思います。

 

●令和元(2019)年度「公共ホール音楽活性化事業」参加団体(主会場/アーティスト/日程)
・富山県氷見市(氷見市いきいき元気館/アーバンサクソフォンカルテット/9月26日~28日)
・島根県奥出雲町(横田コミュニティセンター/糸賀修平/10月3日~5日)
・愛知県田原市(田原文化会館/アーバンサクソフォンカルテット/10月17日~19日)
・奈良県奈良市(なら100年会館/酒井有彩/11月7日~9日)
・福島県国見町(国見町観月台文化センター/アーバンサクソフォンカルテット/12月13日~15日)
・埼玉県吉見町(吉見町民会館(フレサよしみ)/岡田奏、田中拓也/12月19日~21日)
・静岡県御殿場市(御殿場市民会館/中野翔太、田中拓也/2020年1月20日~22日)
・千葉県酒々井町(プリミエール酒々井/泉真由×松田弦/1月23日~25日)
・東京都羽村市(羽村市生涯学習センターゆとろぎ/田中拓也、中野翔太/2月6日~8日)
*発展継続事業
・佐賀県佐賀市(佐賀市立東与賀文化ホール/岡田奏/9月17日~21日)
・北海道帯広市(帯広市民文化ホール/中野翔太、田中拓也/10月30日~11月3日)
・福岡県久留米市(久留米市城島総合文化センター インガットホール/酒井有彩/2020年2月4日~8日)

 

●「公共ホール音楽活性化事業」に関する問い合わせ
芸術環境部 永田
Tel. 03-5573-4069

 

●令和元(2019)年度「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業」実施団体(主会場/アーティスト/日程)
・秋田県大館市(ほくしか鹿鳴ホール(大館市民文化会館)/NOK Saxophone Quartet/9月25日~28日)
・秋田県能代市(能代市文化会館/メルヴィル弦楽四重奏団/9月25日~28日)
・秋田県羽後町(羽後町文化交流施設 美里音/メルヴィル弦楽四重奏団/10月30日~11月2日)
・秋田県横手市(横手市ふれあいセンターかまくら館/NOK Saxophone Quartet/11月20日~23日)

 

●「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業」に関する問い合わせ
芸術環境部 渡辺
Tel. 03-5573-4185

カテゴリー

ホーム出版物・調査報告書地域創造レター地域創造レターバックナンバー2019年度地域創造レター11月号-No.295令和元(2019)年度「公共ホール音楽活性化事業」「公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム