一般社団法人 地域創造

令和2(2020)年度「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」の取り組みについて

 新型コロナウイルス感染症の影響により、今年度の公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)も大きな影響を受けています。おんかつでは、演奏家が小学校や福祉施設などに出掛けるアウトリーチを長年にわたって推進してきました。しかし、音楽室などで演奏家と身近に触れ合う体験型のアクティビティを大切にするアウトリーチでは、感染症に対してこれまでにない注意が求められています。こうした事態を踏まえ、地域創造ではアウトリーチの環境づくりで注意すべきポイントなどを整理しました。音楽事業を統括する児玉真プロデューサーにその経緯や意図について聞きました。

 

─感染症拡大によるおんかつへの影響

 4月20日〜22日に開催する予定だった今年度のおんかつ導入プログラムの実施団体向け全体研修会(2020・2021年度登録アーティスト6組によるプレゼンテーションあり)を4月初旬に中止すると発表。また、5月25日、26日に予定していた地域創造フェスティバル(おんかつ支援登録アーティスト約50組のプレゼンテーションを予定)も中止することになりました。

 その代替策として、導入プログラム、支援プログラムともに演奏家に映像資料を作成してもらい、実施団体に向けて配布しました。また、地域創造では6月におんかつを含めた今年度事業の関係団体に対して意向調査を行いました。その結果、導入プログラムは14団体中6団体、支援プログラムは28団体中21団体が年度内に実施する予定で準備しています(9月末現在)。

─アウトリーチの実施ポイントを整理

 おんかつは演奏家が学校などに出掛け、コミュニティとどう向き合うか、どうコミュニケーションするかという交流を大切に考えているプログラムです。新型コロナウイルスの特性を考えるとハードルがありますが、だからと言って簡単に止めればいいというものではない。長期的に見れば、音楽にしても他の芸術にしても、人の創造力や暮らしにとって絶対に必要なものです。今回のような事態でも再開できるようなきっかけ、考え方を示すべきではないかとみんなで話し合いました。

 演奏会については、クラシック音楽公演運営推進協議会が「クラシック音楽公演における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」を6月11日に策定していますが、アウトリーチについての注意事項をまとめたものはありませんでした。すでに地元の演奏家が学校に出掛けている地域もありましたが、どこの現場も手がかりになるものがなくて困っていました。

 実施場所が多種多様な上に、感染状況が異なる自治体、主催者であるホール、演奏家、受け入れ先の学校などさまざまな関係者が関わるアウトリーチでは、条件が一定ではないためガイドラインという形にまとめることは不可能に近いです。そこで、おんかつ導入プログラムの現場を想定し、通常の感染症拡大予防策(検温、アルコール消毒など)に加え、アクティビティの環境をつくる上で注意すべきポイント(右表参照)と、プログラムづくりでアーティストが注意すべきポイント(右下段囲み)をコーディネーターたちと整理しました。

 どういうことを考えてアウトリーチを組み立てればいいのか、個別研修(下見)の時にどんなことを確認しなければいけないのか、本番よりもリスクが高まると指摘されている控え室などのバックステージで留意することは何か、連絡網は確認したか、アウトリーチの演出で演奏家が留意することはあるか、など。おんかつ導入プログラム向けに整理したポイントですが、これを土台にして、各地で工夫をしていただければと思っています。

 どんな事態になったとしても、演奏家が音楽で伝えたいことに変わりはありません。これまでおんかつで培ってきたプログラムや演出ができなかったとしても、新たな創意が生まれてくることを信じています。関係者が同じスタートラインに立ち、改めて子どもたちやコミュニティのために音楽で何ができるかを考える機会にもなると思っています。

 

アクティビティの環境づくりで注意すべきポイント

 おんかつ導入プログラム関係者は、政府や所在する地方公共団体からの指示や要請、実施会場である公共ホールのガイドライン等を遵守することを原則とし、アクティビティにおいては、各アクティビティ先の方針や要望を踏まえ、関係者間で協議してアクティビティを実施します。併せて、このチェックポイントを参考に事業に取り組みます。

 

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アクティビティのプログラムづくりでアーティストが注意すべきポイント

・アクティビティ参加者との接触を伴う演出は避ける。
・アクティビティ参加者が小道具等を使い回す(不特定多数の人が触る)演出は避ける。
・アクティビティ参加者が密集、密接するような演出は避ける。
・アクティビティ参加者が大声を出すような演出は避ける。
・飛沫飛散防止対策として、アクティビティ実施時は原則としてマスクを着用するとともに、アクティビティ参加者との距離を充分確保する。
・アクティビティ先に事前に説明できるよう、アクティビティ実施10日前までにプログラム概要を提出する。
・コーディネーター、実施団体、地域創造とよく相談しながらプログラムづくりを行う。

 

 

●令和2(2020)年度「公共ホール音楽活性化事業」(導入プログラム)参加団体(※9月末現在)

北海道大空町(大空町教育文化会館)

岩手県釜石市(釜石市民ホールTETTO)

岩手県奥州市(前沢ふれあいセンター)

山形県長井市(長井市民文化会館)

滋賀県長浜市(木之本スティックホール)

広島県府中市(府中市文化センター)

 

●「公共ホール音楽活性化事業」に関する問い合わせ

芸術環境部 山之内・菅

Tel.03-5573-4078・406

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