一般社団法人 地域創造

ステージラボ札幌セッション報告

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左上:ホール入門コース「アーティストが地域に滞在すると何が起きる?」(さっぽろ天神山アートスタジオを訪問)
右上:自主事業コース「アウトリーチプログラムの素材」(講師:石上真由子・加藤文枝・酒井有彩)
左下:公立ホール・劇場マネージャーコースレクチャー&ワークショップ「身体から障害を考える」(講師:セレノグラフィカ)
右下:共通プログラム「Creative Art Mix特別企画 コンテンポラリーダンスワークショップ」

プロの演奏家とのアウトリーチプログラムづくりなど多彩なゼミを開催

 ステージラボ札幌が7月4日から7日まで札幌市民交流プラザで開催されました。今回はホール入門コース、自主事業コース、公立ホール・劇場マネージャーコースが開講されました。プラザは、時計台やテレビ塔のある市中心に立地、本格的なオペラやバレエに対応する多面的舞台を有する札幌文化芸術劇場hitaru、札幌文化芸術交流センターSCARTS、札幌市図書館・情報館の3つから成る複合施設です。今回は、多くの市民で賑わうプラザの施設見学も行われました。

幅広い基礎を学ぶ〜ホール入門コース

 入門コースのコーディネーターは、企業のメセナ活動に長年携わってきた荻原康子さん(上田市交流文化芸術センター総合プロデューサー)です。「75分で知る日本の文化振興の歩み」と題した情報量満載のレクチャーから、初日がスタートしました。
 移動音楽教室など地域での活動に注力する群馬交響楽団音楽主幹の上野喜浩さんが、オーケストラの基本的な構造や業務の実際を伝授。古典作品を現代劇としてつくり変える木下歌舞伎制作の本郷麻衣さんは「勧進帳」を例に、具体的な現場の仕事に言及しました。
 ダンサーの白神ももこさんは、受講生とのワークショップに続き、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ芸術監督として、オープンスペースを活かしたダンスカフェなどの取り組みを紹介。
 また、国内外のアーティストの滞在制作を支援している「さっぽろ天神山アートスタジオ」(*)の現地視察も行われました。ディレクターの小田井真美さんが「アーティストを起点にしたネットワークをつくり、可視化し、市民と接続する」という天神山の取り組みをレクチャー。後半のゼミでは、地域とホールについて考えるグループ・ディスカッションをワールドカフェ形式で行うなど、多彩なプログラム内容となりました。

 

*さっぽろ天神山アートスタジオ
「札幌国際芸術祭2014」に伴い札幌市が保有していたゲストハウス「札幌天神山国際ハウス」を創造的活動を行うアーティストの滞在・活動支援施設としてリニューアル。交流スタジオ3、滞在スタジオ13、展示スペースなど。
https://tenjinyamastudio.jp/

演奏家とアウトリーチプログラムをつくる〜自主事業コース

 自主事業コースは、おんかつコーディネーターを務める地域創造の仕田佳経ディレクターが担当しました。特徴は、おんかつ支援登録アーティストである石上真由子さん(ヴァイオリニスト)、加藤文枝さん(チェリスト)、酒井有彩さん(ピアニスト)と共に、2日がかりでアウトリーチのプログラムづくりに挑んだことです。
 アウトリーチについての基礎を学んだ後、事前課題として聞き込んできたブラームス『ピアノ三重奏曲第3番』を題材にプログラムづくりをスタート。演奏家の個性を理解するためのソロ演奏、第3番の全曲演奏を聞いた後、5グループに分かれてアウトリーチ先について検討。びわ湖ホールが提案したブラジル人学校の中学生が対象に決定しました。その後、3グループに分かれて演奏家も参加してプログラムを検討。その3案を出発点にプログラムを完成させました。最後の通し演奏は、直前までの生みの苦しみを払拭する素晴らしいアンサンブルとトークで、みんな感動の面持ちでした。

 「さまざまな意見が出たり試していく中で変わっていく過程を体験することで、新しい視点を発見できた」「悩む時間、意見を聞いてかみ砕く時間がとても重要で、きついけど楽しい時間だった」「どのように聴き手とアーティストの橋渡しをするのか考え直す機会になった」など、受講生の真摯な声が印象的でした。

今日的な課題と向き合う〜公立ホール・劇場マネージャーコース

 マネージャーコース・コーディネーターの吉本光宏さん(合同会社文化コモンズ研究所代表)は、地域の課題と向き合うことをテーマに研修を行いました。
 まず、北九州芸術劇場で障がい者とのダンスづくりを行っているセレノグラフィカ(隅地茉歩さん、阿比留修一さん)のレクチャー&ワークショップを受講。隅地さんは、障がい者、健常者、子ども、大人が一緒に踊る映像を映しながら、「ダンスでは一糸乱れない美しさ、身体の可動域の大きさが評価されてきたが、バリアフリー・ダンスの中に不揃いの美しさを発見した。脳性麻痺の参加者が『踊ることが大好き』と言ってくれた時、衝撃を受けた。そういう気持ちが表現したときの強度に繋がる。こうした取り組みができているのは北九州市身体障害者福祉協会などの専門家が関わってくださっているから」と一人ひとりに語りかけ、車椅子も使ったワークを行いました。
 また、多分野のアーティストを学校に派遣しているNPO法人STスポット横浜理事長の小川智紀さん、地域のホールでクラシック音楽事業を立ち上げてきた小澤櫻作さん(竹田市総合文化センター チーフプロデューサー)が実践例をレクチャー。それらを踏まえてグループ・ディスカッションが行われました。
 最後に、吉本さんは、「芸術の力、アーティストの力、ホール・劇場の力を確信する」「時代や地域、市民の声に耳を傾ける」「目標やミッションを市民と共有し、業績ハイライトを広く喧伝する」「ステークホルダーと協働・共創・交渉し、仲間を増やして共感の輪を広げる」など、地域と向き合う心得をまとめていました。

 共通プログラムでは、札幌文化芸術劇場が取り組む「Creative Art Mix」(札幌で活躍するダンサーと音楽家によるコラボ企画)の協力により生バンドによるダンスワークショップが実現しました。次回のステージラボは、来年2月に岡山芸術創造劇場ハレノワで行われる予定です。奮ってご参加いただければと思います。

ステージラボ札幌セッション プログラム表

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コースコーディネーター

◎ホール入門コース
荻原康子(上田市交流文化芸術センター総合プロデューサー)
◎自主事業コース
仕田佳経(一般財団法人地域創造ディレクター、おんかつコーディネーター)
◎公立ホール・劇場マネージャーコース
吉本光宏(合同会社文化コモンズ研究所 代表)

「ステージラボ」に関する問い合わせ

芸術環境部 藤原・田之頭
Tel. 03-5573-4183

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