一般社団法人 地域創造

令和6・7年度「公立美術館共同巡回展開催助成事業 」

漫画草創期に活躍した作家を紹介する巡回展を助成

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1:展示風景(勝央美術文学館)
2:地域交流プログラム「『これが漫画!展』 のグッズを手作りしよう!」(湯前まんが美術館)
3:ギャラリートーク(合志マンガミュージアム)
4:地域交流プログラム「保存修復技術を学んでフォトブックを作ってみよう」(横山隆一記念まんが館)

 

 令和6・7年度公立美術館共同巡回展開催助成事業「これが漫画!展 日本の漫画を創った時代~楽天・隆一 ・良輔~」が、湯前まんが美術館(5月24日~7月6日)、合志マンガミュージアム(8月1日~8月28日)、横山隆一記念まんが館(9月13日~11月4日)、勝央美術文学館(11月15日~11月30日)にて開催されました 。 公立美術館共同巡回展企画支援事業( 以下 、企画支援事業)を経て、令和5年度から3年間にわたり支援し、実施に至った展覧会です。


 今や日本を代表するコンテンツとなっ た「 マンガ」ですが、この巡回展では、明治・大正・昭和に活躍した日本の漫画の草創期を生きた漫画家たちに焦点を当てました。中でも、日本初の“職業漫画家”といわれる北沢楽天、戦前・戦後にかけて日本の漫画界を牽引した「漫画集団」の設立メンバーの一人であり、昭和期に国民的人気を誇った漫画『フクちゃん』の生みの親である横山隆一、毎日新聞における40年にも及ぶ風刺漫画連載をはじめ、ユーモアと強いジャーナリズム精神をもって戦後日本を批評し続けた那須良輔、この3人の作品を通して、ストーリーマンガ発展以前の日本の漫画の歴史を振り返り、再評価を試みる巡回展となりました。

 

●巡回展の自主企画を助成とアドバイザー派遣でサポート

 

 この巡回展は、湯前まんが美術館の中尾章太郎さんが学芸員として初めて企画したものです。応募にあたっては、2館以上という要件があったため、同じく昭和に活躍した漫画家を顕彰する漫画記念館と連携することで相乗効果が生まれると考え、面識のなかった横山隆一記念まんが館へ今回の巡回展の企画を売り込みに行かれたそうです。応募当初は地域おこし協力隊として美術館に来たばかりだった中尾さんは「展覧会を企画することも初めてで、巡回展の実施もこれまで経験がなかったが、地域創造の事業を活用してチャレンジすることができた」と話してくれました 。


 企画支援事業は、公立美術館が実施する自主企画巡回展への助成制度である公立美術館共同巡回展開催助成事業(以下、公美巡)への申請を目指して、調査研究や学芸会議、巡回先探しに係る経費(旅費、参考文献の購入、写真撮影費など)を助成するものです。


 そのほか、支援内容のひとつとして、希望に応じてアドバイザーの派遣も行っており、京都精華大学国際マンガ研究センター特任准教授の伊藤遊さんに今回の巡回展のアドバイザーにご就任いただきました。また、伊藤さんのご推薦にて、京都国際マンガミュージアム学芸室員の新美琢真さんにも定期的な企画会議にご参加いただき、検討を進めてきました。新美さんの派遣費用については、湯前町の予算にて行いましたが、こうした学芸会議関係の経費についても助成対象とすることができるのも本事業の魅力のひとつです。漫画の研究者であり数多くの展覧会も手がけている両氏からの出品作品の検討や、展示構成についての具体的なご助言は、参加館の学芸員にとって心強かったようです。

 

 また、公美巡には3館以上で申請する要件があるため、地域創造の支援のひとつとして、地域創造レター内での告知記事を出すなど参加館探しもお手伝いしています。公美巡に採択された令和6年度からは、合志マンガミュージアム、勝央美術文学館にもご参加いただけることになり、4館で巡回展の準備作業を行いました。準備年度は、企画案を基に、作品リストの確定や、輸送計画の策定、図録制作などを実行委員会として進め、巡回展開催に向けた具体的な作業に移ります。そして、令和7年度(公美巡開催年度)に満を持して巡回展を開幕することができました。

 

●2年間の調査、準備を経て待ちに待った巡回展の開幕

 

 総合開会式は、実行委員会の事務局でもある湯前まんが美術館で5月24日に行われました。「まちづくりの核となり、町民文化の発展に寄与する施設」として1992年に開館した湯前まんが美術館を中心に、漫画によるまちづくりを早くから実行してきた湯前町。当日は、地元のメディアも取材に入り、開会式直後に行われた担当学芸員たちのギャラリートークにはたくさんの方々にお集まりいただき、地域での美術館への関心の高さがうかがえました。展覧会は3章構成(第1章「近代漫画の胎動」、第2章「戦争と漫画」、第3章「漫画集団の発足」)で貴重な資料や原画などが展示され、明治から昭和にかけての漫画家たちの活躍がわかりやすく紹介されました。

 

●鑑賞をサポートする交流プログラムも準備

 

 また、地域創造の美術館事業では、展覧会の開催のみならず、企画内容に即したワークショップ等の地域交流プログラムも実施しています。横山隆一記念まんが館では、出品作品の修復に当たられた紙本保存修復家の一宮佳世子さんを講師に迎え、「保存修復技術を学んでフォトブックを作ってみよう」というワークショップを10月11日に開催しました。

 

 出品作品の修復の様子について、実際の写真も見ながら説明を聞いたのち、修復技術を応用して和紙を使った制作を行います。参加した方は一宮さんにコツを教えてもらいながら、制作に打ち込んでいました。一宮さんのお話を伺った後で展覧会場の作品を見ると、「この箇所が修復されたところだ」といつもと視点も変わり、細かなところまでじっくりと鑑賞できる良いきっかけとなりました。


 会場となった横山隆一記念まんが館の学芸員 ・大野雅泰さんは「自主企画としての巡回展は初の試みで大変な面もあったが、通常より長く2年かけて準備ができたので、調査が進んだ。漫画の資料は、日本各地で分散しており連携が難しかったが、この巡回展でネットワークができたことは良かった」と話してくれました。横山隆一記念まんが館以外でも、各館で参加者と交流しながらのギャラリートークや、オリジナルグッズを作るワークショップなどが開催されました。

 

 この巡回展のように、自主企画の巡回展にチャレンジしてみたい学芸員の方は、企画支援事業、公美巡2か年プログラムをぜひご活用ください。令和9・10年度公立美術館活性化事業への申請は、令和8年6月頃を目処に行う予定です。地域創造ホームページをご確認の上、ふるってご応募ください。

 

●令和6・7年度公立美術館共同巡回展開催助成事業( 2か年)
「これが漫画!展 日本の漫画を創った時代~楽天・隆一・良輔~」
[主催]近現代漫画家記念館共同巡回展実行委員会 
[展覧会アドバイザー]伊藤遊(京都精華大学国際マンガ研究センター 特任准教授 )、 新美琢真(京都国際マンガミュージアム 学芸室員)
[会場]湯前まんが美術館(熊本県湯前町 )、 合志マンガミュージアム(熊本県合志市)、横山隆一記念まんが館(高知県高知市)、勝央美術文学館(岡山県勝央町)
[助成](一財)地域創造

公立美術館活性化事業に関する問い合わせ

総務部 高野
Tel. 03-5573-4056

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