一般社団法人 地域創造

公共ホール音楽・現代ダンス活性化障がい者関連事業 障がい者関連の支援事業がスタート

令和7年度公共ホール音楽・現代ダンス活性化障がい者関連事業

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1:鶴岡養護学校でのアウトリーチ(セレノグ ラフィカ)
2:伊賀つばさ学園でのアウトリーチ(石上真由子)
3:倉敷市立上成小学校でのアウトリーチ(野尻小矢佳)
4:愛知県立豊橋聾学校でのアウトリーチ(田畑真希)

 

 

 地域創造では、公共ホールのニーズを踏まえ、障がい者等を対象とした事業を担う職員の企画・制作力の向上を図る「公共ホール音楽・現代ダンス活性化障がい者関連事業(以下、障がい者関連事業)」を令和7年度にスタートしました。「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が2018年に施行されたのを機に、公立文化施設でもハードの改修だけでなく、さまざまな形でアクセシビリティの向上が図られています。


 今回の障がい者関連事業では、公共ホール音楽活性化事業、公共ホール邦楽活性化事業、公共ホール現代ダンス活性化事業を実施した団体を対象とし、その蓄積を生かして特別支援学校や福祉施設等で行うアウトリーチを支援します。特徴は、地域での豊富な経験を有する登録アーティスト(おんかつ支援・ダン活支援)を派遣すること、障がい者を対 象とする事業の経験があるコーディネーターを派遣すること、障がい者福祉の現状や事業実施に必要な知識を得るための全体研修会が行われることです(今年度の全体研修会の模様はレター2025年7月号参照)。

 

 アーティストを伴った下見を経て、最大4日間(2回に分けての派遣が可能)で4〜8回のアウトリーチを実施することができます。また、長期的なビジョンをもって取り組めるよう、最大3 カ年の継続が可能となっています。

 

 今年度は、3月末までに荘銀タクト鶴岡、伊賀市文化会館、倉敷市玉島市民交流センター、穂の国とよはし芸術劇場PLATが事業を実施します 。今回は、セレノグラフィカ(以下、セレノ)とコーディネーターの佐藤 拓道さん(たんぽぽの家アートセンターHANA副施設長)の派遣により、1月27日に福祉施設関係者への体験ワークショップ、28日、29日に山形県立鶴岡養護学校へのアウトリーチを実施した荘銀タクト鶴岡の取り組みをご紹介します。

 

●ダン活での取り組みを障がい者施設に繋げる

 

 荘銀タクト鶴岡では、2019 年度からセレノ、中村蓉さん、長与江里奈さんによるダン活を実施してきました。また、23年度から一部事業で字幕タブレットや手話通訳といった鑑賞支援サービスを導入。昨年度には福祉施設へのアウトリーチも初めて実施しました。


 今回は、これまで接点のなかった障がい者施設に活動を広げたいと、1日目に障害者就労継続支援事業所、障害者自立訓練事業所、鶴岡市福祉課など6団体14名が2人1組になって相手の人差し指を追いかけるなどセレノのワークを体験しました。チアダンスの経験もあるという鶴岡市立愛光園デイサービスセンター指導員の安野星さんは、「指導員になったときからダンスを通じて子どもたちに関わりたいと思っていた。これまで絵の表現活動や、やまがたアートサポートセンターら・ら・らからの紹介で菊地将晃さんとのダンス活動をやってきた下地があるので今回の事業もできるのではないかと思っている。コンテンポラリーダンスと言われてもわからないのでこういう体験できる機会があるのはとてもありがたい」と話していました。


 2日目、3日目のアウトリーチでは、小学部1・2年生と小学部5・6年生が体育館、小学部3・4 年生が教室規模のプレイルームでワークを行いました。いずれの会場でも、セレノが養護学校の先生たちのアドバイスを受けて作成するようになった、大きな字で「今 日のメニュー」を書いたホワイトボード(イラスト付き)が設置され、アクティングエリアの目安にはカラフルなコーンが置かれていました。

 

 ビッグアイ(国際障害者交流センター)で 行われている「大阪府障がい者オープンカレッジ・ダンスコース」への2006年から11年までの参加を皮切りに、さまざまな現場で障がいのある人とのワークを積み重ねてきた隅地さんと阿比留さんは、「今回のプログラムは養護学校のためだけのものではなく、小学校などで行っているワークの短縮版(45分)。下見の時に先生たちに30分ぐらい体験してもらった。特別なケアが必要な子がいるなど、個別の情報を細やかに入手しておくことが必要で、このメニューはできないのでは?などと決めつけず、みんなでやり方を探しながら、愛情溢れる先生方と気持ちをひとつにして過ごす時間が大切だと思っている。身体があるということは素晴らしく、その身体を動かすと楽しく、その楽しさはきっと誰かと共有できる、その瞬間をキャッチしてほしい」と話していました。

 

 セレノと子どもたちの距離はとても近く、一人ずつに声がけしながら踊るように握手する「あいさつ」から始まり、オノマトペのような声を出しながら動く隅地さんに促され、立ち上が っ て「歩いてみよう ストップ&ゴ ー」、人の動きを真似る「まねっこダンス」へと展開。ひとりで走り回ったり、離れて見つめたり、付き添いの先生に抱かれていたり、別の部屋からリモートで参加したり、車椅子を下りたり、まねっこダンスのリーダーとして自らいろいろな動きを提案したり。そこにはそれぞれの身体が居心地よくしていられる空気がつくり出されていました。

 

 今回初めてコーディネーターを務めた佐藤拓道さんは、「障がいのある人と事業をしたいけど、失礼があるんじゃないか、何を準備すればいいかわからないなど、慎重に考えすぎて及び腰になっているホールの職員も多い。ホール側のふわっとした不安を具体化しながら、手助けできればと思っている。今回、ダンスのワークを一緒に体験して、その懐の深さを実感した。手を重ねただけで場の空気が変わる。参加者のポーズに意味をつけるのではなく、そのまま受け止められる。重度の人でも指先だけでできる。こういうワークをその場にいて一緒に体験することが大切だと改めて感じた」と振り返っていました。

 

 今年度の派遣アーティストである石上真由子さん(ヴァイオリン)、 野尻小矢佳さん(パーカッション)、田畑真希さん(振付家・ダンサー)のアウトリーチでもさまざまな取り組みが行われました。令和8年度の事業実施団体の全体研修会が4月13日、14日に開催される予定です。ぜひこの事業に興味をもっていただければと思います。

 

●令和7年度公共ホール音楽・現代ダンス活性化障がい者関連事業

◎実施ホール/派遣アーティスト/コーディネーター
•荘銀タクト鶴岡/セレノグラフィカ(隅地茉歩+阿比留修一)/佐藤拓道(たんぽぽの家アートセンターHANA副施設長)
•伊賀市文化会館/石上真由子(ヴァイオリン)/田中玲子( 認 定 NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク エグゼクティブ・プロデューサー/理事)
•倉敷市玉島市民交流センター/野尻小矢佳(パーカッション)/津村卓(一般財団法人地域創造プロデューサー)
•穂の国とよはし芸術劇場PLAT/田畑真希/松本志帆子(藁工ミュージアム学芸スタッフ、NPO法人蛸蔵理事)

問い合わせ

芸術環境部 垂水・波多野
Tel. 03-5573-4076
project@jafra.or.jp

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