1:シンポジウム「評価はコミュニケーションだ!~公立文化施設における評価の取り組みと活用~」
2:おんかつ支援プレゼンテーション
小野寺光(バス・バリトン)
共演:山崎由貴(ユーフォニアム)
3:おんかつ支援プレゼンテーション
山野安珠美(箏・十七絃)
共演:早稲田桜子(ヴァイオリン)、野尻小矢佳(パーカッション)
4:ダン活プレゼンテーション
中村駿
多くのアーティストや公立文化施設、地方公共団体職員の交流の場となっている地域創造フェスティバルが7月28日、29日に東京芸術劇場で開催されました。おんかつ支援登録アーティスト54組によるプレゼンテーションやシンポジウム、地域創造の事業説明会に加え、公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)登録アーティスト6組による公開プレゼンテーションが行われるダン活全体研修会、都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議も同時開催され、猛暑の中、活気に溢れるフェスティバルとなりました。
シンポジウムのテーマは「評価」
地域創造では令和7年度から公立文化施設(専用ホール)や文化行政における戦略的な評価のあり方に関する調査(*1)を実施しています。今回のシンポジウムでは、昨年度実施したアンケート調査の結果を共有するとともに、実際に評価に取り組んでいる札幌市と秋田市の事例が紹介され、本調査研究の委員による質疑も行われました。
モデレーターの大澤寅雄さん(合同会社文化コモンズ研究所代表)から主なアンケート結果より、評価の実施状況、成果や課題の傾向について報告が行われました(レター8月号参照)。
続いて、指定管理者として規模も目的も異なる6施設を運営している公益財団法人札幌市芸術文化財団総務課調整担当係長の坂本このみさんが、「財団の中長期経営計画の達成に向けた進捗の確認と、評価プロセスを通じ て計画を職員に周知する」ために実施している評価の取り組みについて紹介しました。
「各施設が自己評価した後、課長職がメンバーとなった検証会議での検討を経て決定した財団評価を職員に共有しています。評価は他施設との順位を競うものではないし、一館で計画の達成を目指すのでもなく、財団全体で達成するという考え方を共有しています。市の評価軸と財団の評価軸が複層化していることが課題のひとつです」。委員の「検証会議の中で現場がピアレビュー的に話し合っているのがとても重要」というコメントが印象的でした。
また、市民の新しい活動・表現を応援する秋田市文化創造館の指定管理者であるNPO法人アーツセンターあきた事務局長の三富章恵さんは、「永遠に右肩上がりは無理だという法人内での合意があり、来館者数の目標値13万人を切らなければいいという前提で事業を行っている」と言い、「前例がなく、成果を説明しづらい」同館の評価の取り組みについて紹介しました。
「ここの存在意義を社会に伝えることが不可欠だったので、起こっていることをストーリーにして伝えています。べき論に終始するようになり、館内で起こっていることを見なくなってしまったので、ベストプラクティスを見つけて報告 書に入れるようにしました。外部評価委員には多様なステークホルダーに向けた言葉を有する方に就いていただきました。誰に評価を届けようとしてきたのか、肝心の市民に届いているのか、今もモヤモヤしています。こういう施設がある地域とない地域で何が違うのか、地域と一緒に考えられる状況をつくることが必要だと思っています」。委員からは、「秋田の取り組みにはさまざまな評価手法が入っている」などと感心するコメントが続きました。
評価学にも詳しい中村美亜さん(九州大学大学院芸術工学研究院教授)が、「評価学では方法論も大切だが、何に価値を見出すかや、評価をどう活用するかも重要。同じ土俵で価値判断ができるようにするにはコミュニケーションしかない。それが圧倒的に足りてないと思います」と締めくくり、参加者は納得の表情でした。
アーティスト計60組がプレゼンテーション
おんかつ支援の登録アーティストは、現在、計118組に上ります。今回のフェスティバルでは、その中から、参加可能な登録年度の若い54組が顔を揃えました。今回初めてフェスティバルに参加したのは三原未紗子さん(ピアノ)、鈴木舞さん(ヴァイオリン)、北垣彩さん(チェロ)、山崎由貴さん(ユーフォニアム)、小野寺光さん(バス・バリトン)です。
小野寺さんは人間の声と似ているといわれるユーフォニアムの山崎さんと共演。アウトリーチで子どもたちに人気だったというパパゲーノとパパゲーナのコミカルな掛け合い(オペラ『魔笛』より)を披露しました。
邦楽演奏家(*2)も5組参加しました。Dual KOTO×KOTO(箏デュオ)として長年活動し、ソロ活動に移行した山野安珠美さん(箏・十七絃)は、インドの演奏家と共演するために自作した曲を早稲田桜子さん(ヴァイオリン)、野尻小矢佳さん(パーカッション)と共演。箏の可能性をアピールしていました。また、尺八製作者でもあり、真竹で吹き口づくりのワークショップを行う大萩康喜さん(尺八)は楽器 をわかりやすく解説するとともに、『スーホの白い馬』をモチーフにした『約束のウタ』を演奏し、参加者の興味を惹いていました。
ダン活全体研修会において行われた2027年度登録アーティストの公開プレゼンには初登録となる中村駿さん、竹内梓さんの2名に加え、岩渕貞太さん、井田亜彩実さん、Von・noズ、黒須育海さんが登場しました。
中村さんはブレイクダンスをルーツとし、近年はダン活の支援アーティスト・森下真樹さんの『ベートーヴェン 交響曲第9番 全楽章を踊る 』で振付・演 出助手なども務める実績のあるダンサーです。紙や壁などモノとの対話や、舞台を飛び出して楽屋まで使うワークで参加者の動きを引き出していました。また、近年、日仏を往来しながら活動している竹内さんは、自分の身体に触れて自分の身体を知り、記憶を掘り起こすという「触れる」をテーマにしたワークを行い、静かななかにも豊かな時間が流れていました。
※
今回は公立美術館に関する情報発信の場として、伊藤羊子さん(信州アーツカウンシル チーフコーディネーター)より県内の美術館等が連携して取り組んでいる「長野県シンビズム」を紹介いただき、所属を超えた学芸員同士の交流や地域ゆかりの作家を紹介する企画展づくりなどの実践事例を学びました。
来年度は、8月2日~4日の3日間、茅ヶ崎市民文化会館にて開催予定です。皆様のご参加をお待ちしています。
●地域創造フェスティバル
公立文化施設や地方公共団体が事業を企画・実施する上で参考となる情報を提供することを目的に、地域創造が開催。公共ホール音楽活性化支援事業の登録アーティスト、公共ホール現代ダンス活性化事業の登録アーティストによる実演(プレゼンテ ーション)、シンポジウム、セミナーなどを実施するとともに、財団事業の説明会を実施。多数のアーティストや全国の文化施設・地方公共団体関係者、専門家が一堂に集い、交流する貴重なプラットフォームとなっている。会期中に都道府県・政令指定都市文化行政担当課長会議を同時開催。
共催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
●地域創造フェスティバル2026 プログラム概要
【1日目(7月28日)】
◎シンポジウム「評価はコミュニケーションだ!~公立文化施設における評価の取り組みと活用~」
大澤寅雄・吉本光宏(合同会社文化コモンズ研究所)、若林朋子(プロジェクト・コーディネーター)、中村美亜(九州大学大学院芸術工学研究院 教授)、坂本このみ(公益財団法人札幌市芸術文化財団)、三富章恵(NPO法人アーツセンターあきた)
◎公立美術館の先進的な事例紹介
「長野県シンビズムの取り組み」伊藤羊子(信州アーツカウンシル)
◎ダン活プレゼンテーション
岩渕貞太、井田亜彩実、中村駿、竹内梓、Von・noズ、黒須育海
◎おんかつ支援プレゼンテーション
【ピアノ】新居由佳梨、今田篤 【弦楽器】石上真由子、北島佳奈、坂口昌優 、高橋和歌、早稲田桜子(ヴァイオリン)/北垣彩(チェロ) 【管楽器】荒川洋、森岡有裕子(フルート)/田中拓也、田村真寛(サクソフォン)/山崎由貴(ユーフォニアム) 【声楽】梅津碧(ソプラノ)/糸賀修平(テノール)/ヴィタリ・ユシュマノフ(バ リトン)/小野寺光(バス・バリトン) 【打楽器】塚越慎子(マリンバ)/新野将之(パーカッション) 【邦楽】藤重奈那子(箏・十七絃・地歌三絃)/山野安珠美(箏・十七絃)/棚原健太(歌三線)【その他】福島青衣子(ハープ)/松尾俊介(クラシック・ギター) 【アンサンブル】泉真由×松田弦(フルート&クラシック・ギター)/Modétro Saxophone Ensemble(サクソフォン四重奏)/Quintet H(木管五重奏)
【2日目(7月29日)】
◎助成事業説明会
◎事業個別相談会
◎おんかつ支援プレゼンテーション
【ピアノ】新崎誠実、岩崎洵奈、今野尚美、酒井有彩、高橋ドレミ、三原未紗子 【弦楽器】鈴木舞、瀧村依里(ヴァイオリン) /海野幹雄、奥田なな子、加藤文枝(チェロ) 【管楽器】吉岡次郎(フルート)/大石将紀(サクソフォン)/高見信行(トランペット)/加藤直明(トロンボーン) 【声楽】上田純子、乗松恵美(ソプラノ)/菅家奈津子(メゾ・ソプラノ) 【打楽器】大熊理津子(マリンバ)/野尻小矢佳(パーカッション&ボイス) 【邦楽】森梓紗(箏・三絃・十七絃)/大萩康喜(尺八) 【その他】山本奈央(オカリナ)/閑喜弦介(クラシック・ギター) 【アンサンブル】カメハ(パーカッションデュオ)/アーバンサクソフォンカルテット、Quatuor B(サクソフォン四重奏)
*都道府県・政令指定都市文化行政担当課 長 会 議 を 同 時 開 催( 7月28日)
*各日、来場者が交流する「情報交換会」を開催
