1:小学校でのアウトリーチ(中川村立中川東小学校)
2 :ダンスワークショップ(松川村)
3:音楽ワークショップ(小布施町)
4:アートシェア信州~ダンスと音楽がつなぐ道~『山脈狂詩曲(やまなみラプソディ)』(ホクト文化ホール)
地域創造では、都道府県および市町村等の公 共ホールが協働・連携して、クラシック音楽、現代ダンスまたは演劇の複数ジャンルを取り入れたプログラムを制作する2カ年事業「公共ホール創造ネットワークモデル事業」(以下、創造ネット)に取り組んでいます。
これまで神奈川県、和歌山県、福島県で実施し、令和7・8年度はモデル事業の4地域目として、3館の県立ホールを運営する一般財団法人長野県文化振興事業団(以下、事業団)が中心となり、小布施町、松川村、中川村の3町村と連携して事業を実施しました。これまでは地域創造の登録アーティスト経験者が参加していましたが、長野県では大町市出身の横山彰乃さん(ダンサー・振付家)、長野市在住の外山賀野さん(チェロ)と海沼優衣さ ん(パーカッション・マリンバ)とい う地元ゆかりのアーティスト3名が参加しました。1年目のアウトリーチプログラムづくり、3町村の小中学校でのアウトリーチを経て、2年目となる今年度はクラシック音楽×現代ダンスの作品創作と公演が行われました。今回のレターでは2年目の取り組みについて紹介します。
クラシック音楽×現代ダンス
創造ネットでは参加地域との協議によって、実施体制、アーティスト、プログラム内容等を詰めるのが特徴になっています。今回は、事業団内に受け皿となる企画係を立ち上げ、ホクト文化ホールの町田弘行さんがプロデューサーとし て 全 体 を 統 括しました(右頁コメント参照)。また、県立ホール2館、市町村ホール3館で上演が行われ、2館が舞台上舞台、2館が平土間形式、1館がロビーを会場とし、舞台監督と照明プランナー以外は県立ホール各館の技術スタッフが主体的に関わるなど、貴重な研修機会となりました。
6月からの本公演に向けて、約半年前から打ち合わせをスタートし、顔を合わせた実際の稽古は4月を中心に通算1カ月ほど行われました(右頁事業スケジュール参照)。創作にあたっては、最初に関係者全員がリアルに顔を揃える壁打ちミーティング(月1回)を3回実施し、構成・演出を担当した横山さんが関係者との丁寧な対話を行ったのが特徴で、その結果、長野県の共通イメージである山々が作品のモチーフとなりました(右頁コメント参照)。
『山脈狂詩曲(やまなみラプソディ)』と題された本作品では、舞台中央に長野の山々を思わせるセットを配置。木曽節に乗せて登山服姿のダンサー、演奏家が三々五々登場し、横山さんが観客を誘ってリラックス体操をするなど和やかにスタート。山の霊気を感じさせるビブラフォンの演奏が印象的な1場は、人間と山(自然)との交感をダンス、パーカッション、照明などで表現。2場では客席を巻き込んだ長野県について の寸劇と、信州の芸能をモチーフにしたダンス、 3場ではチェロとパーカッションの現代音楽に 山の化身のようなダンサーが挑むソロが披露されるなど、見どころ満載の70分となりました。 途中、出演者の体調不良などもありました が、ワンチームで乗り切り、2年間にわたるプロジェクトを締め括りました。
事業全体を振り返って
町田弘行(ホクト文化ホール)
長野県文化振興事業団は3館の県立ホール(ホクト文化ホール、伊那文化会館、キッセイ文化ホール)を指定管理者として運営していますが、事業予算が少なく、創作の機会がほとんどありません。施設間の人事異動はありますが、地理的に移動に時間を要するため連携もほとんど行われていません。創造ネットはクリエーションと連携を経験するいい機会だと思いました。
組織改編によって各館の職員が参加する企画係が新設され、私もメンバーでした。そのメンバー3名が今回の事業の中心となり、私がプロデューサー、伊那文化会館の山田敦子さんが制作統括、キッセイ文化ホールの柄澤志保さんが広報を主に担いました。各館ごとに会計処理をするなど、事務面でも3館連携は思ったより大変でした。
市町村ホールについては公募ではなく、地域に詳しい県立3館がそれぞれ1館ずつ推薦しました。小布施町では町役場の職員からこの事業に参加したい人を募集する立候補制で担当者を決めたそうで、企画財政課の若い職員が参加しました。
アーティストは長野県出身で、東京などで活動し、事業団とも接点のあった横山さんを最初に決めました。お互いに刺激しあえるよう、同世代のアーティストをキャスティングしました。現場の技術スタッフも僕らと同世代、30~40歳代で対応しました。また、子育て中のダンサーが出演することになり、そういう人たちにも活躍してもらえるよう稽古中に託児の保育士さんを手配し、稽古時間を19時までにするなど支援体制を整えました。こういう取り組みが当たり前に広がっていけばいいと思いました。
今回初めて異なるジャンルでの創作に挑戦し、お互いに突き詰めていけばいろんなことができると実感しました。こういう取り組みを経験した人が増えることで、既存のジャンルに縛られず、例えば子どもたちにホールでは楽しいことが起こってるんだよと表現できる人が増えるのではないかと思いました。
作品創作を振り返って
横山彰乃(ダンサー・振付家)
日本女子体育大学を卒業してから首都圏で活動していました。ダンスでまちづくりをしたいというのとは違う気持ちですが、いつか長野に根差した活動をしたいと思っていました。劇場は特別な空間すぎて、ダンスや舞台芸術が人の生活と切り離されてしまう。一般の人と触れ合いながら活動できる環境が欲しいと思っていました。それと自分の奥底にある長野の山々を実感しながら創作したいという気持ちもありました。
当初は、創造ネットがどういうものか腑に落ちていませんでした。クラシック音楽の演奏家と一緒に取り組むにあたって楽器を2種類指定できるというので、チェロとパーカッションを選びました。演奏家が二人とも30歳代で、まずはやってみようとトライしてくれたので創作を前に進めることができたと思っています。また、1年目のアウトリーチが楽器を動かしながら演奏するなど、演奏家とダンサーがお互いを知り合う助走期間になっていて、それがとても大切だったと思っています。
創作にあたっては、全員が集まってひたすら話をする壁打ちミーティングをやりました。そのなかで皆さんの長野への思いがすごく強いことがわかりました。長野県には3つの地域があり、景色も風土も文化も違うと。それをすべて作品に取り入れることはできませんし、地域の人に向けてだけ創作するのも違う。そうしてたどり着いたモチーフが「長野の山々」、芸能や文化が往来したであろう「山の道」でした。それと、ダンスとクラシック音楽のどちらか一方がバックダンサー、バックミュージックになるような創作にはしたくない、ライブ演奏とダンスが組み合わさった表現にしたいと思っていました。
音楽でいろいろな時代を巡るような構成にしたかったので、まず私が50曲ぐらい選曲して、外山さん、海沼さんと相談しながら決めていきました。2カ月ぐらいこういうデスクワークを行い、イメージを固めてから稽古に入りました。
令和7・8年度「公共ホール創造ネットワークモデル事業」長野県の主な取り組み(事業スケジュール)
◎令和7年度(1年目)
•6月~11月:アーティスト顔合わせ、アウトリーチプログラムづくり、現地視察、キックオフイベント(長野県伊那文化会館)など
•12月:アウトリーチの実施(小学校・中学校対象)
•1~3月:全体会議(作品コンセプトの共有、公演タイトル決め、会場ごとのセット、テクニカルや大道具についてなどの打ち合わせ、宣材写真撮影、地域交流プログラムの内容打ち合わせ/ホクト文化ホール)
•3月24日~27日:公演稽古(ホクト文化ホール)
◎令和8年度(2年目)
•4月1日~4日、7日~12日、15日~17日、 21日~24日、5月8日~10日:公演稽古(ホクト文化ホール)
•4月29日:地域交流プログラム(音楽ワ
ークショップ:海沼優衣/天のなかがわ河川公園)
•5月16日:地域交流プログラム(ダンスワークショップ:横山彰乃/松川村多目的交流センター すずの音ホール)
•5月17日:地域交流プログラム(舞台ワークショップ:テクニカルスタッフ/伊那市伊那文化会館)
•5月30日:地域交流プログラム(音楽ワークショップ:外山賀野/おぶせミュージアム・中島千波館)
•6月2日~5日、18日、19日、23日:公演稽古(ホクト文化ホール)
•6月25日~28日:中川村公演仕込み、リハ、ゲネ、本番(中川文化センター)
•7月2日~5日:松川村公演仕込み、リハ、ゲネ、本番(松川村多目的交流センター すずの音ホール)
•7月9日~12日:伊那市公演仕込み、リハ、ゲネ、本番(長野県伊那文化会館)
•8月25日~28日:小布施町公演仕込み、リハ、ゲネ、本番(小布施町北斎ホール)
•9月2日~6日:長野市公演仕込み、リハ、ゲネ、本番(ホクト文化ホール)*鑑賞サポートあり
令和7・8年度「公共ホール創造ネットワ ークモデル事業」実施体制
[主催]長野県、一般財団法人長野県文化振興事業団、小布施町、松川村、中川村
[共催]一般財団法人地域創造
[アーティスト]横山彰乃(ダンサー・振付家)、外山賀野(チェロ)、海沼優衣(パーカッション・マリンバ)
アートシェア信州~ダンスと音楽がつなぐ道~『山脈狂詩曲(やまなみラプソディ)』
[会場・日程]
•中川文化センター:6月28日
•松川村多目的交流センター すずの音ホール:7月5日
•長野県伊那文化会館:7月12日
•小布施町北斎ホール:8月28日
•ホクト文化ホール:9月6日
[振付・演出]横山彰乃
[出演]横山彰乃、海沼優衣、外山賀野、ゆう、泊舞々
[サポートアーティスト]宮坂遼太郎
公共ホール創造ネットワークモデル事業に関する問い合わせ
芸術環境部 渡邊・藤原(香)
Tel. 03-5573-4067
