一般社団法人 地域創造

北九州市 北九州芸術劇場(仮称) 地芝居Qプロデュース 『金曜日の食卓』

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 1月13、14の両日、北九州市で地芝居Qプロデュース『金曜日の食卓』と題された公演が行われた。作・演出・キャストはすべて北九州の演劇人。脚本は、人気劇団“夢の工場”を主宰する大塚恵美子、演出はJPAF主催による第1回利賀演出家コンクールで最優秀賞を獲得したペーター・ゲスナー。地元で人気の小劇団の役者が顔を揃えたこともあり、3公演とも客席は大入り。舞台、客席とも北九州演劇界の勢いを感じさせる公演となった。

 実はこの公演、制作・創作の両面で北九州演劇界にとってのある“実験”がなされた企画でもあった。まず、制作面。この公演を企画・制作したのは、北九州の若い演劇関係者12人が結成した制作チーム“地芝居Qプロデュース”である。これは、北九州芸術劇場(仮称※)のプレ事業として昨年から開講されている「明日の演劇人のための制作講座~プロデュース公演をつくろう」に参加した受講生によって結成されたものだ。

 北九州市では、93年からスタートした演劇祭も定着し、“飛ぶ劇場”など全国区で活躍する劇団も登場するなど、劇団活動が年々活発になっている。しかし、「若い劇団の多くは代表が作・演出、制作を兼ね、制作面が弱いといった課題がありました」というプレ事業事務局の市山裕之さん。こうした現状を踏まえ、若い演劇人を対象に、実際の公演制作を通じてプロデューサー的な発想とノウハウを学んでもらおうと昨年8月から講座をスタートさせた。

 講座のコーディネーター兼講師を務めた青年団の平田オリザ氏は「受講生にはかなり厳しい要求をしました」という。企画面では、東京公演を想定した全国に通用する内容を目指し、予算面では、会場費以外、独立採算での運営を目指した。そうした明確な目標設定のもと、キャスティング、予算組み、先輩演劇人との交渉・連絡、常宣、当日運営まで受講生が役割を分担しながら準備に奔走した。

 地芝居Qプロデュースのメンバーとして渉外を担当した山田幸子さんは、劇団を旗揚げして4年目の25歳。「自分の劇団では、予算の組み方など全て自己流。こういう機会は貴重だと思って参加したのですが、想像していたよりスケールの大きな公演になって、びっくりしています」。

 そしてもう一つ。創作面で行われた試みというのが、作品の質を高めるために設けられた「ドラマドクター」の制度。ドラマドクターとは劇作家に対して客観的な立場から戯曲に対してクリニックを行う役割りのことで、京都を拠点に活躍する劇作家・演出家の鈴江俊郎氏に依頼。今回脚本を担当した大塚恵美子さんに対し、2回の対面セッションを含め、10月末から約1カ月半にわたってメールで戯曲の添削等が行われ、そのやりとりはすべて制作講座の受講生に公開された。

 最終日の公演後のアフタートークでも、このプロセスに質問が集中。「お客さんにちゃんと伝わるか、という視点で議論をしました。皆さんが“あざとい”と感じた台詞はきっと僕の意見で入ったものです(笑)」と鈴江氏。

 このシステムを提案した平田氏は、「ドラマドクターは、観客に近い視点で、作品に対して客観的にアドバイスする職人的な仕事です。大都市では、多くの観客の目に晒される事で、作家は自分の作品にシビアに向き合わざるを得ない。観客の絶対数が少ない地域において、“ドラマドクター”は、数千人の観客の目のかわりなんです。地域で創作の質をあげていくには有効な方法ではないでしょうか」と語る。

 大塚さんは、「普段人に見せない生みの苦しみを公開するわけですから、楽ではなかったです。でも、これほど自分の作品を客観的に眺めた事はなかった。自分の中の劇作の原点や、弱さも再確認できいい経験になったと思います」。

明確な目標設定のもと、北九州の内と外、若手と中堅をつなぐ場となった今回のプロデュース公演。こうした試みが、地域の表現者の層を厚くし、創作力を高めていく事を期待したい。

(宮地俊江)

 

●地芝居Qプロデュース『金曜日の食卓』

 

[脚本]大塚恵美子
[演出]ペーター・ゲスナー
[ドラマドクター]鈴江俊郎
[監修]平田オリザ
[出演]大福悟、松尾容子、平田伸介、近藤紀子
[企画・制作]地芝居Qプロデュース
(時佐勝、大福悟、山野井清仁、萬田陽子、堀正美、山田幸子、尾形里奈、松田清志、黒崎あかね、寺田剛、本村新護、松下恵理)

 

※北九州芸術劇場(仮称)

北九州市が2003年のオープンを目指し整備を進めている劇場。大中小3つの劇場を有する。2000年度から、「才能の発掘・育成」「ノウハウの吸収」等を目的にしたプレ事業“シアタープロジェクト2003”を実施している。

 

地域創造レター 今月のレポート
2001年2月号--No.70

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