一般社団法人 地域創造

大阪府能勢町 淨るりシアター 『オペラこども三番叟~池から始まる不思議な物語』

  「その昔 土師連の名にしおう 能勢の郡里の朝ぼらけ…」

 総勢13名の「こども浄るり」による「能勢三番叟」演奏のあと、静かに幕が上がる。舞台の中央には池。そのほとりに集まってきた8人の子どもたち。不思議な少年に導かれ、池の中に入っていくと――。蛙やなまずの妖怪、骸骨に遭遇したり、池の底から発車する「池電」に乗って天国へ旅をしたり…。奇想天外、ユニークな子どもたちの世界が1時間あまりにわたって繰り広げられた。

 10月14日、大阪府能勢町の淨るりシアターで上演された『オペラこども三番叟』。町内から集まった小中学生36人が「舞台を創る」をテーマに、台本書きから舞台美術・衣裳、楽器づくり、演奏など、1年半にも及ぶワークショップを重ねて完成させた作品だ。

 淨るりシアターでは、江戸時代から受け継がれてきた能勢の浄瑠璃を生かした地域づくりに力を注いできた。「これまでも『子ども浄るり』で、子どもたちを劇場にとり込んできましたが、古典の世界はなじみにくく、参加者は限られていた。より多くの子どもに創造の楽しさを知ってもらいたいと企画したんです」(大内祥子館長)。
 町制45周年記念事業として、文化庁の「文化のまちづくり事業」に申請し、3カ年計画でスタート。構成・演出は「新しい感性を持って舞台づくりに興味をもっている方に」(大内館長)と、中川真・大阪市立大学大学院教授が務めることに。中川氏はアジアの音楽・演劇・サウンドスケープ(音風景)を研究、ガムラングループ「マルガサリ」を主宰している。能勢町の隣、豊能町にスタジオがあるという縁もあった。

 2000年5月、参加者のオーディションを行い、6月からワークショップが始まった。いきなり舞台づくりをするのではなく、町内7つの学校から来ている子どもたちが友だちになること、そして日常を離れた体験をさせることを優先させた。大きな布に手や足で自由に絵を描いたり(作品は幟(のぼり)となって会場を彩り、人々の目を楽しませた)、音響を担当のサウンド・デザイナー川崎義博氏が中心になりシアター周辺の音を集めてマップを制作したりと「感性のバージョンアップを狙いました」と中川氏。10月からは台本づくりに着手。しかしこれが思いがけず難航した。たまりかねて中川氏が浄瑠璃にちなみ、人形を登場させる台本をつくったものの、「子どもたちに却下されたんです。最初から、大人が枠をつくって、子どもたちを萎縮させても意味がない。自由な発想、“子どもたちの物語”を尊重しようという姿勢を貫きました」。

2001年3月に仕切り直し。演出班・美術班・音楽班・ダンスのパートに分かれ、創作を続けた。台本が仕上がったのが7月の終わり。キャストオーディション、稽古を経て、上演にこぎつけた。

 劇場ロビーでは、登場人物や場所のイメージ画、台本の草稿、廃品を利用した子どもたち自作の楽器など、67回に及んだワークショップの軌跡を伝える作品展示も行われた。

 “オペラ”と銘打っているのに歌が少なかったこと、稽古不足など課題も残したが、「方向性としては間違っていなかったと思う。これをきっかけに舞台、劇場を身近な存在として感じてくれれば成功といえるのではないか」(中川氏)

 公演直後のパーティーで、晴れ晴れとした顔をしていた子どもたち。「何度やめようと思ったかわからない。でもだんだん責任感みたいなものが出てきて、やり遂げなくちゃと思いました」(久佐々山小学校5年・水上香奈子さん)。長い道のりは、子どもたちの心に何かを残したようだ。

(ライター・土屋典子)

 

●町制45周年記念事業『オペラこども三番叟~池から始まる不思議な物語』

[日程]10月14日
[会場]淨るりシアター(大阪府能勢町)
[主催]能勢人形浄瑠璃実行委員会、能勢町、能勢町教育委員会
[構成・演出]中川真
[音楽]野村誠
[音響効果]川崎義博
[美術・衣裳]加藤登美子
[振付]上甲裕久
[舞台監督]民部吉章
[浄瑠璃/作曲]鶴澤清介
[語り]竹本綾香
[三味線]鶴澤寛輔

 

地域創造レター 今月のレポート
2001.11月号--No.79

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