一般社団法人 地域創造

滋賀県アートコラボレーション事業「おうみ狂言図鑑2014」

 滋賀県文化振興事業団が県内の公立ホール等と連携して取り組む滋賀県アートコラボレーション事業「おうみ狂言図鑑」が、2014年も成功裏に幕を閉じた。近江をテーマにした新作狂言を創作・上演するこの企画は、11年に2館で始まり、今年は4館が参加。2月23日の日野町町民会館わたむきホール虹を振り出しに、愛荘町立ハーティーセンター秦荘、彦根市みずほ文化センターと回って、3月23日に東近江市てんびんの里文化学習センターで千秋楽を迎えた。
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『安土城ひみつ会議』
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『信楽たぬきの変身』
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『続・鮒ずしの憂うつ─でっち羊羹の陰謀』
写真提供:滋賀県文化振興事業団

 東近江市は、人口約11万人で、近世には多くの近江商人が活躍したことで知られる。その博物館を併設したてんびんの里文化学習センターは、商人屋敷が並ぶ重要伝統的建造物群保存地区・五個荘金堂に隣接する地域にある。
  千秋楽では古典2題に加え、おうみ狂言図鑑4作目の新作『安土城ひみつ会議』が上演され、240席のホールは満席。能・狂言は観客が高齢化していると言われるが、ここでは親子連れや若いカップルなどさまざまな年齢の観客が、京都を拠点にする大蔵流・茂山千五郎家が演じる狂言を楽しんでいた。
  新作は、お屋形様に嫌われたと悩む“明智ひでみつ”が“羽柴ひできち”に相談しているところに、金髪の宣教師“オルガンヒキーノ”やイケメンの“蒲がもう生さとうじ”が加わり話はあらぬ方に向かうという筋立て。片言の日本語あり、飛び蹴りありと、古典とは大いに違う。
  4作とも監修・演出を務めている狂言師の茂山あきらさんは、「狂言は室町時代の吉本新喜劇。どんなこともアリです。地元の人だからこそつくれる“ご当地狂言”は、地域の魅力を知る良い機会になるのでは」と言う。
  そもそもアートコラボレーション事業で新作狂言をやろうというのは、栗東芸術文化会館さきらプロデューサー(当時)の松崎正明さんのアイデアだったという。江戸時代には能・狂言を愛した井伊家が統治した滋賀県といえども、古典芸能を市町村が上演するのはハードルが高い。その点、喜劇性の強い狂言は道具も出演者も最小限、小回りが利き巡演にも好都合だ。地元を題材にした“ご当地狂言”なら話題にもなる。

それに共鳴したわたむきホール虹の野﨑稔さんが参加し、11年、第1作『鮒ずしの憂うつ』(劇団「MONO」代表土田英生作)が誕生した。古典狂言の公演を18年間続けてきたてんびんの里は2年目から参加。「新作がとても面白かったのです。この事業を始めてお客さんが増え、若い人も多くなりました」と担当者の森上友恵さん。野﨑さんも「新作が確実に狂言ファンを増やしている」という。
  2年目からは地域ホール共働モデル事業として事業団が主体となり、負担金50万円(ホール使用料自己負担。入場料は各施設の収入)で新作づくりに参加し、良質の舞台が提供できる事業として参加館を募っている。
  2作目『信楽たぬきの変身』、3作目『続・鮒ずしの憂うつ─でっち羊羹の陰謀』はアーティスト集団や劇作家に依頼したが、今回はアマチュア劇団も主宰している野﨑さん自らが「三千院高穂」の筆名で台本を担当した。「みんなでアイデアを出しあうので集団作家名のようなものです。あきらさんの指導を受けながら何回も書き直して、狂言はこう書くのかとわかってきた。ものづくりに参加できて楽しいです」。
 テーマを決めるところから会合を重ね、チラシを東近江、パンフレットを日野、舞台技術を彦根、愛荘が鑑賞者プレゼントと作業を分担。当日も得意分野で人材を出した。
  「市町村のホールは人手が足りない。事業団からも舞台職員などが応援に出ています。館や立場を超えて職員同士の繋がりが生まれる機会にもなっています」と、この滋賀県文化振興事業団制作統括の山元喬さんは言う。
  思わぬ効果もあった。ホールの発案で新作に登場した鮒ずしなどをロビーで販売すると、結構売れたのだ。「滋賀県のPRも兼ねて県外公演もやりたいですね」と山元さんは夢を紡ぐ。15年には甲賀市が加わって5館での実施が決まっている。あきらさんが「他にはない」と言う“ご当地狂言”は、さまざまな効果を上げながら進化を続けている。

(ジャーナリスト・奈良部和美)

 

●平成25年度滋賀県アートコラボレーション事業 地域ホール共働モデル事業「おうみ狂言図鑑2014」
[主催]滋賀県、滋賀県文化振興事業団、日野町文化振興事業団、愛荘町文化協会、彦根市、彦根市教育委員会、東近江市、東近江市教育委員会[出演]茂山千五郎家(茂山千五郎、茂山七五三、茂山あきら、茂山正邦、茂山茂、茂山宗彦、茂山童司ほか)
[新作狂言]『安土城ひみつ会議』(脚本:三千院高穂)
[会期]日野町(2014年2月23日/日野町町民会館わたむきホール虹)、愛荘町(3月2日/愛荘町立ハーティーセンター秦荘)、彦根市(3月9日/彦根市みずほ文化センター)、東近江市(3月23日/東近江市てんびんの里文化学習センター)
[演出]永山智行

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