一般社団法人 地域創造

【特別企画】新型コロナウイルス感染症拡大と向き合う全国の公立文化施設などの職員からメッセージ

新型コロナウイルス感染症拡大により、施設が休館し、多くの事業が中止・延期になるなど、文化・芸術分野においても大きな影響を受けることとなりました。現在では、施設の再開とともに、新型コロナウイルス感染症拡大防止策等を講じながら、さまざまな工夫のもと、事業が徐々にスタートしています。こうしたなか、地域の文化・芸術に携わる方々は、長期間準備を進めてきた事業が中止・延期になり悔しい思いをしたり、コロナ禍における施設の運営や事業実施について苦慮されたことも多かったと思います。そうした思いをレターを通じて共有していただければと、公立文化施設などの最前線で日々努めていらっしゃる職員の方々からメッセージをいただきました。回答にご協力いただきました皆様、どうもありがとうございました。

*表記は上から所在する地方公共団体名、施設名または所属団体名、氏名、所属年数、現在の担当業務

青森県八戸市

八戸市新美術館建設推進室
大澤苑美
[新美術館に異動して1年目(文化政策部署時代と合わせると9年目)/展覧会や市民協働・連携事業の企画、アートプロジェクト(八戸工場大学)]

 八戸市では、2021年度夏〜秋以降の新美術館オープンを目指しています。私たちの美術館は「出会いと学びのアートファーム」をビジョンに掲げており、展覧会や各種事業のプロセスで、市民の方との協働やアーティストによる地域資源リサーチを重要視しています。が、このコロナ禍で、特に県外から訪れるアーティストと市民の出会いの場を作りづらく、頭を抱えています。アーティストを地域コミュニティにお連れしてよいのだろうか、対策はどうしようか、PCR検査どうする!?などなど、神経を尖らせています。また、建設工事に影響が出ないよう、私たちも出張を控えているところです。個人的には、近隣の美術館、博物館や民俗資料館を改めて見る機会にし、さまざま発見と学びがありました。
 私の担当するプロジェクト「八戸工場大学」はオンライン実施に切り替えました。オンライン環境が整わない方や苦手な年齢層を除外することにならないよう、会場参加も用意するなど試行錯誤しています。

 

宮城県蔵王町

蔵王町ふるさと文化会館(ございんホール)
岩渕大輝
[4年目/文化会館主催事業(音楽アウトリーチ事業、
音楽の絵本コンサート)、公民館・文化会館施設の維持管理、文化会館公式Webサイト管理・更新]

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、3月に施設の貸館を中止し、その後、国や県の感染症対策指針に基づいて段階的に施設利用を再開しました。主催事業は8月下旬から再開し、ホールの収容人数を半分(227人)にしたほか、消毒薬や空気清浄機の導入、会館入口に設置したサーマルカメラによる体温測定、混雑防止のため入退場時の人数制限などを実施しております。初めてのことばかりなので、舞台業界の講習会に参加し、感染症対策を実際に見て学び、現場に反映しました。運営状況としては、感染症対策で必要な物品(サーマルカメラや空気清浄機、消毒用アルコール等)の購入で歳出が増大した一方、施設使用料が減少する見込みであるため、次年度の予算作成に苦労する状況です。
 感染症の影響で、事業の開催直前まで中止になる可能性があるほか、事業終了後も会場にいた人から感染者が出なかったかどうか、担当者としては日々心配な状態が続いています。
 一方で、事業が無事に開催され、想定よりも多くの方々にご来場いただけたこと、公演を楽しんでいただけた様子が見られたことは、この状況下で非常に感慨深いものがありました。

 

福島県いわき市

いわき芸術文化交流館アリオス
谷健治
[2年目/アウトリーチ事業(おでかけアリオス)]

 アウトリーチ事業では、1学期に実施を予定していた小・中学校や地域でのコンサート・ワークショップはすべて中止・延期になりました。延期日程をどう設定したらいいか、先の見えない状況の中で強く印象に残ったのは、学校や地域の方々とやり取りする中でたびたび伺う「さまざまな行事が中止となっている状況なので、ぜひとも実施してほしい」という言葉でした。この言葉は、アートの(ある一面における)使命や責任を改めて強く感じさせると同時に、アートが地域社会に少しずつ浸透していっているという嬉しい確信を与えてくれるものでもありました。この言葉に背中を押してもらうようにして、現在はアーティストと一緒にこれまでとは少し違うプログラムをあれこれと考えながら、さまざまな学校・地域でアウトリーチ事業を実施しています。
 また、私にとってコロナ禍は「人が移動し、集まる」ことを前提とした表現の更なる可能性を探る契機になりました。コロナ禍の時代だからこそ、「表現とは何か」という問いに、根源からアーティストと共に向き合い、ジャンルを越境しながら、その時にできる方法で段階的に作品を創るプロジェクトを始めました。試行錯誤の果てに、どのような作品が生まれていくのかという期待を胸に、2020年冬の日常を過ごしています。

 

茨城県小美玉市

小美玉市四季文化館(みの〜れ)
山口高容
[2年目/自主事業の企画、施設管理]

 これまで住民主役・行政支援による運営を続け、日頃より賑わいを見せていた四季文化館(みの〜れ)。今回の新型コロナウイルスの影響により休館やイベントの中止・延期を余儀なくされ、住民の方々が来ない文化センターがこれほどまで寂しいものとは考えてもみませんでした。
 そのような中で、念入りに新型コロナウイルス対策を行い、ようやく8月に野外の映画イベントを開催すると、来場者からは久しぶりのイベントを「楽しんだ・元気が出た」などの多くの意見とともに、協力してくれた住民スタッフからも「充実した時間を過ごすことができた」と意見をいただきました。館職員としても久しぶりの文化センターの賑わいに胸が高鳴り、改めてイベントの必要性、文化センターの人が集まる場としての重要性をコロナ禍により知ることとなりました。
 今後コロナ禍に負けず、これまで以上に住民が主役となる文化センターを目指し、住民と協力しながら事業を進めていきたいです。

 

埼玉県東松山市

東松山市民文化センター
菊地俊孝
[21年目/副館長]

 新型コロナウイルスの拡大により、当ホールにおいても多大な影響を受けました。当ホールでは利用料金制による指定管理者制度が導入されていますが、利用料の大幅減によりその対応に苦慮しています。今後数年で利用が戻ることは考えにくく、利用料金制度はほぼ成立しない状況と考えられます。その中で今、公共ホールがしなくてはならないことは何か考える時期にきています。施設を機能させ、受け継がれるべき地域の芸術文化を次世代に伝えていくこと。このような事態であってもその任務をきっちり果たしていくことは公共ホールを運営していく者の責務だと感じています。しかし、これはもはや指定管理者だけの問題ではなく、行政とともに考えていくべき問題であり、どのような形で地域に公共ホールを活かしていくかを再考すべき時、議論すべき時だと感じています。

 

福井県福井市

ハーモニーホールふくい
佐々木玲子
[開館準備を含め24年目/事業部事業課長、チーフディレクター]

 相次ぐ公演中止の決断にホールで生演奏をお届けできない無念さを抱くとともに、covid-19に関する正しい情報・知識を得られないことに事務局内が混沌とした3〜5月。県民の皆様に鑑賞の機会も発表の場も提供できない中、5月末には、web講座としてベートーヴェンにまつわる寄稿や映像による講座を制作しファンへの発信を開始。演奏配信を行わなかったのは制作チーム全員の生演奏に対するこだわりと意地でした。並行して、当ホール独自に専門医師の指導監修を仰ぎ、6月には医学的根拠に基づき感染拡大防止対策指針を発表し、公演再開に向け大きな一歩を踏み出しました。
 7月末の公演再開後は、フロントスタッフが対策指針に基づく来場者への協力依頼に苦慮する場面もありましたが、公演回数を重ねるごとに改善されました。毎公演、来場者からは「これだけ対策されているなら安心」との声をいただいています。再開後の公演がすべて売り切れ、追加公演も行うという状況から、ホールのファンの中に生演奏に対する渇望感と期待感の強さをうかがい知ることができました。
 今後、県民の皆さんが、安心に鑑賞・利用できるよう、正しい知識とこだわりをもって工夫を重ねていきたいと考えています。

 

長野県上田市

上田市交流文化芸術センター
小金沢詩穂
[2年目/総務・貸館]

 2月末頃から、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自主事業はもちろん、貸館の公演もすべてが中止や延期となりました。それに伴い、自主事業では中止のお知らせやチケットの払い戻し、貸館では使用料の還付などの処理に追われました。
 その後も、ソーシャルディスタンスを保つために座席へ設置する「着席不可」と書かれた札を手作りしたり、カウンターに設置する飛沫防止シートを舞台技術スタッフに作成してもらうなど、安全に公演を開催するための地道な作業が続きましたが、その甲斐もあり、7月から自主事業と貸館を再開することができました。
 今までに経験したことがない状況の中で対応に悩むこともありますが、スタッフ一丸となって乗り越えていきたいと思います。

 

静岡市

SPAC-静岡県舞台芸術センター
仲村悠希
[13年目/アウトリーチ(地域活性化・学校訪問)]

 SPACでは、毎年ゴールデンウィークに開催している「ふじのくに⇄せかい演劇祭」が中止に。自分一人ではここで絶望し、思考停止してしまうところですが、俳優・スタッフ一人ひとりが「今こそやるべきことは何か」という意見を持ち寄り、オンラインで開催する「くものうえ⇅せかい演劇祭」が立ち上がりました。オンラインでの演劇祭(かつ在宅ワーク)という初めての試みは手探りで進められ、ストレスも多かったですが、短期間でここまでの方針転換を成し遂げられたことはSPACの組織としての強みでもあると思います。
 6月以降、学校訪問のアウトリーチでは、休校や感染症対策で当初の計画通りに実施できるか不安でしたが、「子どもたちが窮屈な思いをしている、こんな時期だからこそ来てほしい」という声も多く、その声に応えるため感染症対策を万全にした作品創りが始まりました。最小限の人数での稽古、フェイスシールドを組み込んだ衣裳、俳優は発声を制限するなど、不自由な制約の中で、いかに自由な発想で新しいものを創造するかという挑戦。子どもたちの前で生の反応を見ながらやっと上演できたときは、例えようのない喜びに溢れました。
 今、公演を続けるために、演劇を必要としている人に届けるために、考えることや歩みを止めてはならないと思うと同時に、発声を制限された舞台上の俳優や間隔の空いた客席を見ながら、これが当たり前にならないでほしいと強く願っています。

 

愛知県豊橋市

穂の国とよはし芸術劇場PLAT
上栗陽子
[財団9年目(内PLAT所属7年目)/演劇・ダンス事業担当等(事業制作部)]

【3月~】主催事業が少ない時期だったこともあり謝金や契約関係のトラブルがなかったのが幸いでした。9月までに販売済みで払い戻し対象となった公演は主催10事業、貸館11事業(主に地元文化団体)。貸館の主催者から不安の声や実施可否の問い合わせが続き、実は主催事業よりもその対応に神経を使うことが多々発生。PLATでは貸館のチケット委託販売も行っていますが要綱に払い戻しに関する細かな記載が当時無いため各所との協議が必要でした。中止もしくは延期か、振替か払い戻しか。購入や払い戻しに係る手数料の負担先についても主催者へ細やかな説明を求められます。
4月13日に5月6日まで休館にすると発表。5月以降は市が1週間おきに休館延長を決定するため先の見通しに苦労します。未曾有の事態なので、主催者、市民とも話を重ねたことでこちらが示した方針に理解していただけることは多く助かりましたが、普段から顔が見える関係性を構築していたことがその後の流れをスムーズにできたのだと感じます。
【現在】野外イベントや生活の場で密状態なものを時折見受けられますが「劇場は満席だと行きたくない」という市民の声は根強いです。客足が戻るまで時間はかかるでしょう。その声を無視できないですが、手探りでもいいので劇場の発信力を高めて存在を表すことが今必要なことだと強く感じています。

 

三重県津市

三重県文化会館
鈴木智之
[9年目/音楽事業係長]

 2月23日以降、主催公演(音楽・演劇合わせ)延べ40公演を中止・延期しました。3月以降は払い戻しの対応に追われながら、先々の公演を実施するかどうかを判断する毎日が続きました。その中でも緊急事態宣言解除後にいち早く劇場での鑑賞事業を再開するべく、ピアニスト田村緑さんに企画提供・監修をいただき、「マイベストシートコンサート」を実施。3組の地元アーティストと公演を行ったことは、劇場で生の芸術を味わう大切さを改めて実感しました。
 コロナ禍での施設運営は先ず職員間・部門間での感染リスクに対する温度差の違いを埋めるところからスタートしました。再開にあたり「劇場で一人も感染者を出さない」を合言葉にさまざまな部門から人が集まり意見を交換し、施設独自のガイドラインを作成。現在でも状況に合わせ柔軟に見直しを行っています。正解のない中、手探りで自分たちの答えを導き出すことは大変でしたが、全国各地の劇場職員と状況を共有し、一つの壁に立ち向かえたことは大きな力となりました。

 

滋賀県長浜市

木之本スティックホール
加藤哲
[2年目/企画・運営]

 コロナ禍における事業に関しては、感染拡大の状況の変化に呼応するように、行政の指導、出演者の感情、お客様の反応などが刻々と変化し、その対応には迷うことが多かったです。行政から中止せよとは言ってきませんが、示された感染防止対応策は解釈によって実行不能ととれる内容が多かったからです。「直近海外から帰国したかどうかを確認できているか」という内容は、本人に聞く程度で良いのか、調査せよというのか。何とか開催したいという方向か、もう無理だとお手上げしてしまうかで対応は異なっていくのです。
 4〜5月の閉館時期を終え、6〜7月以降、徐々に活動を再開していく中で、アーティスト側の意識が変わります。演奏活動をしたいという欲求が抑えられなくなります。また、同時期に聴き手側も生演奏を求める欲求が湧いてきます。8月末の事業再開後は盛り上がりを見せましたが、今は少し落ち着いています。感染防止策は一定の安定感を保って実施できていますが、座席数の設定、出演者のマスク利用の有無、面会の対応などは個別に意見を聞き話し合って決めなければなりません。そして何よりお客様の反応を機敏にとらえて判断していく必要があります。また、この先予定をどう組んでいくのかなど、悩みは尽きないところです。

 

兵庫県伊丹市

東リ いたみホール(伊丹市立文化会館)
權田康行
[開館準備を含む12年目/館長、財団広報紙の編集、施設連携企画など]

 毎年実施している市民100人がピアノをリレー形式で演奏する企画が感染拡大に伴い中止となったため、市民から演奏動画を募り「伊丹発♪ アットホームリレーコンサート」として映像をライブ配信しました。配信は初めての経験でしたが、自粛期間中に発表の場を失った市民に機会を提供することができ、参加された方から「気分が下降気味の時に動画企画を知り嬉しかった」など感謝の声をいただくことができました。他にも、市内の文化・芸術活動を動画で紹介する特設サイトを開設するなど、コロナ禍でできることに取り組みました。
 刻々と状況が変化するなか、どう対応することがベストか、正解のない対応を求められましたが、県や地域を越えた劇場と情報共有を積極的に図りました。各自治体によって求められる内容が若干異なりましたが、現場レベルでの対応については、かなりメンバー間で参考にすることができました。このネットワークは、今後もさまざまな情報共有の場として、継続していきたいと考えています。

 

兵庫県豊岡市

豊岡市民プラザ
岩﨑孔二
[16年目/館長・制作・舞台監督]

 豊岡市民プラザがプロデュースする市民劇団、劇団「演劇FACTORY」の2019年度本公演「WarEve戦争前夜」を3月27日、28日に予定していました。直前まで稽古を進めていましたが、劇団員の中から稽古に参加すること自体にも不安を感じる人が出始めたことや、3月19日の政府専門家会議内で兵庫県が新型コロナウイルスの拡大地域に言及されたことを受け、やむなく公演の延期を3月21日に決定しました(2021年5月22日、23日に公演予定)。実はこの時点では当地域(但馬地域・兵庫県の北部地方)での発症者は0人でした。コロナ禍の最中でも周囲のさまざまな状況を撥ね退け、本公演を目指し直前まで稽古を続けてきた気持ちが、延期決定となりその後不参加となる劇団員も出るなど傷跡は深かったです。
 当方は豊岡市民プラザの指定管理者のNPO法人であり、利用料金制のため貸館収入が激減しています。政府および兵庫県の持続化給付金を受けましたが、現在でも利用は低迷しており、最終的にどの程度の赤字になるのか非常に不安なところです。

 

島根県益田市

島根県芸術文化センター「グラントワ」いわみ芸術劇場
仲西透
[2年目(※島根県民会館にて11年、その後いわみ芸術劇場へ異動)/文化事業課長]

 当初は未知のウイルスに対して錯綜する情報を見極めながら日々対応を更新する必要があり、多数発生した中止公演の払い戻し対応などにより、多忙を極めました。人が集ってこその場である劇場に人が集まることができない状況や、長期間準備をしてきた事業を本番の目前に中止にしなければならないケースなどもあり、劇場スタッフは大きなストレスを抱えながら日々の業務にあたっていたと思います。
 反面、設置者(県)とのやり取りが増えたことや、周辺地域の安全や風評、来場者のリスク回避について議論する機会が増えたことや、「グラントワの催しが無いからさびしい」「いつから再開するの?」といった事業再開を待ち望む声や励ましの声を直接聞くことで、地域における劇場や公立施設の役割、公共性の意味を改めて意識し、見つめ直す機会になったと考えます。

 

広島市

JMSアステールプラザ
高宮敏浩
[15年目/副館長]

 クルーズ船の新型コロナウイルスを気にしつつ稽古を進めていた新演出の能舞台オペラを2月16日に、創作戯曲の演劇を2月24日に無事終え緊張から解放されました。直後の26日に主催事業の中止を定めた広島市主催のイベント等の開催に関する基本方針が出され、ここからすべてが始まりました。
 施設内の感染予防対策をはじめ主催事業中止の対応、施設利用者への自粛要請と作業を進めました。3月末には夏以降のキャンセルも出始め、感染拡大による影響の大きさが表出してきました。
 今年度事業は様子見していましたが、4月7日の緊急事態宣言を受け、参加するすべての方々の健康・安全が最優先と判断し、オペラ公演に向けた4月末の全国オーディションをはじめ、当面6月末までの主催事業中止を決め、影響の出そうな事業も含め延期や代替公演の見直しを行いました。
 9月末に計画していたオペラ公演は、歌手がフェイスシールド装着などの感染予防対策を講じたガラ・コンサートに変更しました。お客様を迎えての本格的な主催公演は7カ月ぶりでありとても緊張しましたが、オペラ公演さながらの華やかな舞台を喜んでいただくことができました。文化は贅沢品と言われますが、劇場で文化芸術に携わる私たちには生活必需品であり、その魅力と力を再認識しました。

 

愛媛県新居浜市

あかがねミュージアム
山本清文
[6年目/ホール運営等(運営グループ)]

 職員の体調管理と感染拡大防止のための対策。まずこの2つが最も重要なこととして対応しました。しかし、現実的に頭を過ぎるのは「私たちの劇場で感染が確認されたらどうしよう」ということです。クラスターが出るたびに「○○はやめておいたほうがいい」ということになっていきました。確かにその通りで、この劇場に今後行き辛くなる。そのジャンルの芸術から足が遠のくということになります。
 もうひとつは、「責任が取れるのか?」ということです。具体的に責任の取り方とは何なのか、今もまだわかりません。当館も3月28日〜4月5日と4月18日〜5月11日は臨時休館を余儀なくされました。そんな中、2018年から当館に設置されたコミュニティFM・Hello! NEW 新居浜78.0がひとつの光でした。開館から5年。ご縁をいただいた国内外のアーティストや劇場関係者に電話を繋ぎ、“今”の気持ちを伺いました。
 皆、同じ思いを持っていました。「この状況で何ができるのか?」
 これがすべてではないかと思います。今後も劇場運営には厳しい状況は続きます。が、考え工夫し続けることもまた、施設を運営していく責任であると私は感じています。今回の掲載を機に同じようなことを考えている方と出会えたら嬉しいです。

 

福岡県久留米市

久留米シティプラザ 
森永南海子
[6年目/事業の企画・運営(事業制作課)]

 全力で準備を進めてきた担当事業が「中止および延期」と決定した瞬間、頭が真っ白になってしまいました。何よりも出演者や公演を心待ちにしていたお客様の顔を思い浮かべると、言葉にはできないような「悔しい」という感情が湧き上がりました。公演の中止が決定してからは、契約書類やチケット払い戻しの事務作業に追われる日々で、現場に関わることができないもどかしさがストレスとなりました。開館以来、初めての払い戻し作業は、個人情報を取り扱うことへの緊張の中、直営館ということが相まって、役所の担当部署との密な連携に加え、その業務プロセスの多さから、効率的な意味合いでの課題を感じました。また、市の予算が直接的に関わってくるため、決裁に時間を要しました。
 しかし、この辛い経験があったからこそ、無事に公演が再開できた際の喜びもひとしおで、改めて劇場から芸術を発信できる嬉しさをかみ締めることができました。

 

大分県大分市

iichiko総合文化センター(大分県立総合文化センター)
工藤茂
[12年目/公演企画制作(企画普及課)]

 コロナ禍での仕事は大量の払い戻しから始まりました。これほどの処理量は経験がなく、方法や条件の設定、各団体との取り決めなど、苦労しました。そのような中で、7月に「新しい生活様式」に対応した対策を講じた無料の室内楽コンサートを友の会会員様限定で2日にわたり、合計4公演実施。お客様に安心してご来場いただけるよう、職員全員で知恵を出し合い、入場方法を説明するための動画(出演・撮影・編集まですべて職員による)を制作したり、接客時に声を出さずに案内できるプラカードを作成するなど、新たな取り組みを行い、同僚の意外な特技などを知る機会となりました。
 県と市で対応が異なり、公民館などは早い段階で閉鎖が決まっていましたが、県立の当館は利用者が全くいない日も22:30まで開館していました。県内の多くの音楽団体が、地域の公民館で練習を行い、当館で本番を迎えるという流れであったため、日々の練習ができないとの理由で延期・中止となりました。このあたり、県と市の連携の難しさを感じたところです。
 新型コロナウイルスによりホールを取り巻く環境が大きく変わりました。チケット収入が減少する中、県民ニーズの把握と安全を確保しつつ、持続性のある事業を計画していく必要があると感じました。

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