一般社団法人 地域創造

青森県八戸市 KAGURA DAY's@hacchi 八戸圏域山伏神楽 再興委員会 「大演舞会」

 9月19日から23日まで、八戸ポータルミュージアムはっち(以下、はっち)で4団体の山伏神楽(道佛神楽組、白銀四頭権現神楽、鮫神楽、市川神楽)が集う「大演舞会」公演が行われた。地域の伝統的なものづくりや芸能を2カ年かけて掘り下げる「はっち伝統文化プロジェクト」の第1弾として企画されたもの。2026・27年度は神楽にスポットを当て、「KAGURA DAY’s@hacchi」と題して八戸圏域山伏神楽再興委員会と共に大演舞会の実演と展示が行われた。
 最終日には4団体の権現様が一堂に会し、解説を交えて「権現舞」を見比べる特別上演に加え、浦島太郎が鯛を釣る様子をユーモラスに表現した狂言舞「浦島」で締め括り。観客への餌(お菓子)撒きや、出演者みんなが手伝って鯛を釣り上げる趣向を楽しんだ。終演後には4団体の権現様が揃って来場者に頭噛みを施すなど、通常の神楽では味わえないプログラムになっていた。

 

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舞台の様子

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出演団体の皆さん

撮影:岩根愛

 

 八戸圏域の神楽は、伊勢神宮がルーツの「大神楽」と、修験道の山伏がルーツの「山伏神楽」の2系統に分けられる。その内、山伏神楽は27団体で、一度途絶えた後に学校の神楽クラブの記録から復活したり、他地域から教わったりするなど、変化しながら継承されてきた。そうしたなかで2023年に結成されたのが「八戸圏域山伏神楽再興委員会」だ。
 中心人物の一人、鮫神楽連中の畑中大河さんは、小学校のクラブ活動をきっかけに神楽を始め、現在28歳。演目の復活やSNSでの発信に取り組み、演劇やコンテンポラリーダンス公演にも参加するなど、多様な表現に挑んできた。後継者不足や、神楽に特化した披露の場がほとんどないことを踏まえ、「神楽のおもしろさを一番理解している自分たち自身が、神楽の魅力を発信していきたい。全団体を束ねようというのではなく、それぞれの団体が大事にしていること尊重している」と話す。
 再興委員会の活動にも携わる市の民俗担当の学芸員・小林力さんは、2018年から3年間、若手の神楽士を特集した公演「山伏神楽U-30」を企画。想定以上の観客が集まり、若者たち自身が神楽の魅力を再認識する機会となった。コロナ禍を経て、今回、その若者たちが動き出した格好だ。

 NPO法人JCDNが発起人となり、東日本大震災後に郷土芸能に光を当ててきた「三陸国際芸術祭」も新しい風をもたらした。芸能団体が外国の芸能や現代ダンス、写真などの表現者と出会い、地元の芸能団体同士も交流を深めていった。畑中さんにも「神楽のことをもっと話してみたい。何か一緒にやってみたい」という思いが芽生えたとか。再興委員会はこうした経験をもつ神楽団が参加して結成され、朝市での公演 (朝市神楽)や自主企画公演などを重ねてきた。

 一方、はっちは、開館以来、八戸三社大祭や 八戸えんぶりの紹介・体験、アーティストのKOSUGE1-16が参加した山車づくりの魅力発信プロジェクトなど、地域の芸能を事業の柱のひとつにしてきた。今回の企画を担当したはっち学芸員の伊多波麻衣子さんは、「コロナ禍を経て、もう一度、地域の資源や文化活動に目を向け直すべきと思った。単発ではなく複数年のプロジェクトにし、彼らの自主性を応援していきたい」と話す。今後は写真家の岩根愛さんともタッグを組み、神楽をテーマにしたリサーチにも取り組むという。

 八戸市には八戸えんぶりをはじめ約90の芸能団体があり、社会教育課が文化財として支援してきたが、芸能団体が新規組織を立ち上げて自ら企画して新たに披露の場をつくろうという動きは、あまり見受けられなかったという。

 明治時代には、県に禁止されたえんぶりを復活させ、三社の祭礼を合同で行う八戸三社大祭へと発展させた大沢多門という人物がいた。いわば芸能のプロモーターともいえる存在だ。そうした土地柄だからか、近年は、山車の共同製作や他分野の表現者との交流、女性の活躍など、新たな動きが見られるようになった。伝統は、変わらないことだけで守られるのではない。動き始めた若い芽が、これからどう伸びるのか、楽しみだ。

(八戸市美術館学芸員・大澤苑美)

はっち伝統文化プロジェクト KAGURA DAY's @ hacchi 八戸圏域山伏神楽再興委員会「大演舞会」

[主催]八戸ポータルミュージアムはっち
[共催]八戸圏域山伏神楽再興委員会
[会期]公演:2026年9月19日~23日/展示:9月11日~23日
[会場]八戸ポータルミュージアムはっち

[出演]市川神楽、鮫神楽連中、白銀四頭権現神楽連中、道佛神楽組

八戸ポータルミュージアム はっち

八戸市中心街に2011年開館した市の直営施設 。「新たな交流と創造の拠点」として 、文化や観光、ものづくり、まちづくりなどの分野でまちの魅力づくりに資する事業を展開。市民活動の場としてスペースを貸し出すほか、地域資源や市民活動に着目したプロジェクト、ワークショップ、伝統文化の体験・発信、レジデンス、公演事業、展覧会など多様な活動を展開。

八戸圏域山伏神楽再興委員会

八戸圏域各地に伝わる山伏神楽の再興と発展を目指し、神楽の伝承者や愛好家、研究者らの有志によって2023年に結成。委員長は鮫神楽連中の畑中大河。神楽の魅力を担い手自身が発信することを掲げ、館鼻岸壁朝市での「朝市神楽」、SNS・動画による情報発信、「八戸圏域山伏神楽再興委員会大演舞会」などを展開。デーリー東北新聞社「頑張るあなたを応援するデリオン賞」受賞。

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