一般社団法人 地域創造

2019年度「地域の公立文化施設実態調査」④ 美術館

写真撮影の許可が進み、展示解説の多言語化も進展

 今回は「地域の公立文化施設実態調査」報告の最後として、「美術館」に関する主な調査結果を紹介する。なお、今回調査の対象となった「美術館」648施設(地方公共団体からの回答により把握した施設数。2014年度調査では638施設)のうち、施設側から有効回答があったのは628施設である。

回答施設の概況

 回答があった628施設を設置主体別に見ると、都道府県83施設(13.2%)、政令市42施設(6.7%)、市区町村503施設(80.1%)だった。また、管理運営形態別では、指定管理が247施設(39.3%)、直営が381施設(60.7%)となっている(専用ホールの指定管理の比率は62.6%)。2014年度調査と比較すると、指定管理の比率が35.0%から39.3%へと増加している[表1]。

施設の運営状況(スタッフ数・専門職員の有無・収入)

 2019年9月時点での美術館全体のスタッフの平均合計人数は8.6人で、内訳は、学芸員3.2人、学芸員以外の事業系スタッフ3.0人、施設管理系スタッフ2.3人、総務系スタッフ2.9人となっている。設置主体別では、施設規模の大きい都道府県(19.6人)、政令市(17.4人)が多く、市区町村(6.0人)との差が顕著だった[表2]。なお、教育普及については、「専門セクションがある」「セクションはないが専門の担当者がいる」を合わせると都道府県33施設(39.7%)、政令市14施設(33.3%)、市区町村50施設(10.0%)だった。

 2018年度決算金額による施設収入金額は、直営施設で平均65,232千円、指定管理施設で平均131,442千円だった。

自主事業の実施

 展覧会や教育普及事業等の自主事業を実施している美術館は全体の92.2%(有効回答数628)だった。また、自主事業実施施設のうち、69.3%が「常設展と企画展の両方」を実施し、「企画展のみ」が21.6%、「常設展のみ」が6.6%だった[図1、2]。

 展覧会以外の自主事業としては、「ギャラリートーク」(72.7%)、「館内でのワークショップ」(64.9%)、「講演会」(54.9%)、「学校向け団体鑑賞」(51.5%)、「他ジャンルのイベント(音楽、演劇、ダンス等)」(42.5%)、「学芸員による出前授業」(39.0%)などの実施割合が高い[図3]。

 また、近年注目されているアートプロジェクトについては、「地域と関わって展開するアートプロジェクト(美術館外を含む)」を実施している美術館が18.7%あった。ちなみに、地方公共団体におけるアートプロジェクト(美術館に限らず)の実施状況については、全体で見ると「現在実施している」は14.6%に止まるが、都道府県(53.2%)、政令市(55.0%)では半数以上の地方公共団体が実施していると回答した[図4]。

美術館運営の動向(写真撮影・多言語化・夜間延長)

 2019年度調査では、近年、美術館運営上のトピックとなっている館内における写真撮影の可否、多言語化対応についても実態を把握した。まず、館内において美術品の写真撮影を許可しているかについては、「全面禁止」している美術館が32.3%であるのに対し、「一部認める」(59.4%)、「全面的に認める」(7.1%)と全体のほぼ3分の2が写真撮影を何らかの形で認めていることが明らかとなった[表3]。

 一方、多言語化対応については、展示物の解説まで踏み込んだ実施状況を調査した。全体で見ると「行っている」(18.7%)、「検討中だが実施していない」(21.2%)だったが、設置主体別では、都道府県施設が46.3%(検討中を含めると73.8%)、政令市施設が31.7%(同51.2%)と解説の多言語化への積極的な対応が明らかとなった[表4]。

 また、「夜間延長をした」施設は全体の26.9%だった。2014年度調査の19.5%と比べると大きく増加している。設置主体別では、都道府県(53.0%)が政令市(31.0%)、市区町村(22.3%)を大きく上回っている。

 

 
  • 表1 設置主体別、管理運営形態別/施設内容内訳(%)
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  • 表2 スタッフ数の平均(設置主体別)
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  • 図1 2018年度 自主事業の実施状況と担い手(%)[N=628]
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  • 図2 2018年度 自主事業の実施状況と担い手(%)[N=579]
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  • 表3 美術品の写真撮影の認可状況(%)(設置主体別)
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  • 表4 多言語での解説表示の実施状況(%)(設置主体別)
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  • 図3 2018年度の展覧会以外の自主事業の種類(MA)(%)[N=579]
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  • 図4 アートプロジェクトの有無(%)(団体種別)
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2019年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要

  • 調査対象
    公立文化施設のうち、「専用ホール」、「その他ホール」、「美術館」、「練習場・創作工房(アーティスト・イン・レジデンス施設を含む)」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置主体にあたる地方公共団体。
  • 調査時期
    2019年9月~11月
  • 調査方法
    全国の地方公共団体の文化振興ご担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。
  • 調査回収数
    •地方公共団体票の有効回収数
     1,645(都道府県47(100%)、政令市20(100%)、市区町村1,576(91.6%)、一部事務組合2)
    •地方公共団体からの回答
     3,442館 延べ3,671施設
     (「専用ホール」1,483、「その他ホール」1,363、「美術館」648、「練習場・創作工房」177)
    •地方公共団体から回答があった3,442館のうち、施設からの施設調査票の有効回収数
     3,343館 延べ3,568施設
     (「専用ホール」1,455、「その他ホール」1,310、「美術館」628、「練習場・創作工房」175)

*2019年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書は、地域創造ホームページに掲載しています。
 ➡2019年度「地域の公立文化施設実態調査」報告書

調査研究に関する問い合わせ

芸術環境部 児島
Tel. 03-5573-4183

 

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